BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活10年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。

【好みと幅広い教養】選ぶ本のジャンルが偏りがちな話

本屋さんに行くと、自然と足が向かうコーナーがある。それは、

『文庫』『人文』

きっと多くの人も、自分のお気に入りの売り場まで行き、何気なく本を手に取っている。

・話題の新書や売れ筋ランキングが好きな人
・法律に興味がある人
・海外のレシピ本をよく購入している人
・自己啓発本でやる気を出している人
・ガイドブックで旅気分を高めるのが好きな人

…だから、未開拓の本のジャンルがいくつも存在するはずだ。

f:id:kaedetaniyoshi:20201019030100j:plain

売り場の中でも、さらに関心が向くジャンルは絞られる。私は…

【人文のコーナー】
・哲学
・思想

(スペインの本屋さんだったら、上の2つに加えて心理学。)

f:id:kaedetaniyoshi:20201019033554j:plain

【文庫のコーナー】
東野圭吾シリーズ…だけ。

それでも、本屋さんに行くと毎回2時間は滞在してしまう。1年ぶりに自国へ帰ると、目移りするほど面白そうな知らない本がズラーっと並んでいるから。

今年の夏も、時間があれば車を走らせた。宮脇書店、啓文社、紀伊国屋…。

そんなある日、『個人が選ぶ好みの本のジャンルには偏りがある』と感じる出来事があった。それを経て、違うジャンルにも手を出してみようと思った。

f:id:kaedetaniyoshi:20201019024821j:plain

【惹かれる本たち】
2020年8月。たくさんある哲学本の中で、目に止まった+中をパラパラ見て購入したいと思った本は…

f:id:kaedetaniyoshi:20201019033747j:plain

下の11冊 ⬇︎

f:id:kaedetaniyoshi:20201019033206j:plain

「その悩み、エピクトテトスなら、こう言うね。」は、哲学を学んだことがない人でも、読みやすい入門書。自分でコントロールできることと、できないことの見極めることがストレスフリーな人生を歩むための手段で、この見極めには幅広い知識が必要だと言う。著者2人による対話形式になっているため、『小難しい本』の印象を全く受けない。身近な構成。あとは、言語哲学、分析哲学、日本独特の思想を再確認できそうな本。

f:id:kaedetaniyoshi:20201019033302j:plain

「ジャンルが『哲学』ばかりじゃん」と感じた人も、きっとこれくらいの偏りを知らぬ間に持っているはず。

購入した本の表紙を見返すと、共通点が見つかることもある。字体や、デザインや、タイトルの付け方など。やはり個々に何か惹かれるポイントを持っているのだろう。例えば、

・〇〇の法則シリーズ
➡︎ 最強の法則、仕事術、成功の法則

・タイトルに数字が入っているシリーズ
➡︎ 64の方法、1分、50の法則、20代、9割、7つの教え

・原題+直訳タイトルシリーズ
➡︎ insight (インサイト)、transitions (トランジションズ)

・スペインにまつわるシリーズ 

・知られざる〇〇シリーズ

・1日1ページシリーズ

・人生を変えるシリーズ

・ミステリーシリーズ

『偏り』は、決してマイナスなことではないが、『潜在的な興味を引き出すチャンス』をもしかすると逃しているかもしれない。

 

【幅広い教養のために】
今まで素通りしてた売り場の前で足を止めてみる。しかし、『興味が薄い場所』で、関心を抱くのは難しい。なかなか「読んでみよう!」とならない。

そんな時は、好きな友達や先生におすすめの本を聞いてみる。好きなアーティストや著名人の方のおすすめでも良い。

「〇〇くんの好きな本」

「〇〇ちゃんのおすすめな本」

「〇〇先生のお気に入りの本」

という意識があるだけで、目にしても手に取らなかった本たちの見方が変わる。ただ文字を読み進めるだけでなく、あの人はこの本のどこを好んでいるのか、どのフレーズに心が揺れていそうか、これをなぜ自分に勧めてくれたのか、など考えながらページをめくっても楽しい。

先生と言えば、私が初めて哲学を習った先生 (エステル) が卒業の日に教えてくれた本は、『モリー先生との火曜日 (原題: Tuesdays with Morrie)』だった。アメリカのジャーナリストによって書かれたノンフィクションで、恩師が命をかけて残してくれた言葉がつまっている。病室で行われた最後の授業「人生の意味について」…。

モリー先生との火曜日普及版 [ ミッチ・アルボム ]

価格:1,045円
(2020/10/19 05:30時点)
感想(27件)

幅広い教養を得るために、自分で苦手に向き合う環境を作ってしまうのも効果的だ。例えば、あえて苦手科目を入試で選択するとか。…実はスペインの大学受験でそれをしてみて、見事に克服できた経験がある。真正面から向き合った結果、他の科目よりも好きになった。

第一印象が最悪だった人と大親友や、恋人になることがある、アレと似ている。

パッと優劣や好き嫌いを判断するのではなく、何事もまずは本質に近づこうと、理解してみようとする気持ちが大切なのだろう。

スペイン語のビデオ和訳 記事一覧

スペイン留学 記事一覧

バルセロナ生活 記事一覧

つぶやき 記事一覧

おすすめ記事:

【感謝の対象】縁という言葉がないこの国で。

2020年9月。日本からバルセロナに戻ってくるタイミングで、私はピソのお引っ越しをする予定だった。帰国前の7月に物件の見学も支払いも済み、やっと家探しから解放された。オーナーとは2回も会って話をし、良い印象を抱いていた。

あっという間に時間が流れ…

そろそろ荷造りを本格的にしないとな、とカレンダーの日付に目をやったその日は日本を出発する2週間前。新しいピソのオーナーからメッセージが届いた。

「久しぶり、元気?話さなければならないことがあるから、都合が良い時間を教えて」

8月は、寝ずに仕事と勉強をする日が続いたほど忙しかった。しかも時差が7時間もあるため、電話をするには時間がかなり限られた。

結局、お互いの都合が合ったのは、出発1週間前。(もうデータを消したから正確な日数は覚えていない…。)

日本の早朝4時、電話がかかってきた。

「…あの家、住めなくなったんだ」

またしてもトラブルが発生した。

f:id:kaedetaniyoshi:20201012212652j:plain

【トラブル発生】
この記事のテーマはピソのトラブルではないため、何が起こったのか、詳しい内容はカットするが、支払いも契約も完了していたのに、私は住めなくなってしまった。予想もしていなかった『出発1週間前に家がない状態』に陥り、こんなギリギリにどうしよう、と焦った。最後の1週間は、祖父母とゆっくり過ごしたかったのに…。

残された時間はあと6日。

結局、出発直前まで私は家を探し続けた。

仕事の一貫で、バルセロナの中心部の物件は全てと言っても過言ではないほど、調べ上げていた時期だったため、幸いにもゼロからのスタートではなかった。

しかし、やりとりをするのに時間が足りない。時差がある上、返事が数時間以内にもらえる物件は、15分の1。

…家探しをしたことがある人はなんとなく分かるだろうが、気に入る物件なんて、そう上手くは出会えない。

出発4日前、消去法で残った物件の数は、

一人暮らし用: 3ヶ所
シェアハウス: 3ヶ所

…いずれも100点の条件を満たしているわけではいなかった。12月までしか住めなかったり、シェアだったり、部屋についているバスの空間が狭かったり、通りの雰囲気があまり好きじゃなかったり。

でも、とりあえずどこか決めなければ…。全てにメッセージを送ろうか…。いや、でもこれで「いいよ」と言われても…数ヶ月も住めるかな…。やっぱりもう少し他を見よう。

を繰り返し、…出発2日前。疲れを感じながらもいつも通り「最新の物件を表示」のボタンを押して検索を始めようとした時だった。

f:id:kaedetaniyoshi:20201012203514j:plain

「あれ!?」 

 

私が前に2年間住んでいた好きな物件がちょうど14分前にアップされていた。家探しサイトからではなく、直接メッセンジャーの履歴をさかのぼり、チャットを送った。

すぐに良い長文返事がもらえ、10月から住めることが決まった!既にお金の信頼もあるし、お互いの性格、生活スタイル、綺麗度合いも知っている相手。信じられないくらい嬉しいと、喜んでくれた。

f:id:kaedetaniyoshi:20201012204321j:plain

9月19日から10月1日まではホテル生活をした。

f:id:kaedetaniyoshi:20201012214857j:plain

【2020年10月1日】
待ちに待ったお引っ越しの日。3年ぶりにメルセーと再会した。生活リズムが真逆なため、家で会うことは1日1-2回、シェアする場所はキッチンのみ。引き続き「ほぼ一人暮らし」が始まった。

荷物運びを終えて、コーヒーを淹れて、言葉を交わした。

一応、来年の春までという契約にし、再びコンタクトを取るに至った経緯を全て話した。そして会話の最後に「縁だなって思ったよ」と、言おうとした。

でも、スペイン語には『ご縁』という言葉がないことを思い出した。最も近い類語は「運命」または「神様のおかげ」…それと言いたいことは違う。

2秒ほど間が空いた。

そこでメルセーは、こう言った。

「これは絶対、お父さんが助けてくれたの。絶対そう。私を守ってくれたの。…KAEDEがこの家を離れてからも一緒に住んでいた日々が最高だったっていつもお父さんに話してたし、KAEDEの人柄を彼もすごく気に入っていたからね…。ずっと泣いてばかりで凹んでた私を救ってくれたんだわ…。チャットをくれたあと嬉しくてすぐに何人もの友達に報告したのよ〜!本当に信じられない!」

メルセーのお父さんが2020年の4月に亡くなってしまったことを聞いた。…5-6年前を思い返した。会うと必ず笑顔になるような、すごく温かくてユーモアに溢れた人だった。また会いたかった。

そんな風に言ってくれるなんて…連絡して良かった、と心から思った。 

 

縁という言葉がないこの国では、今回のメルセーのような感じ方をする人、自らの守護神 (聖人) が「守ってくれた」「お恵みをくださった」と捉える人がいる。もちろん、「神様のおかげ」とか「2人の運命」と考える人もいる。

私は幸いにも、まだ大切な人を亡くした経験がない。

その日が来てしまった直後に『良いこと』や『運命的な出会い』があったとしたら…離れて生きるようになってしまったその人が感謝の対象になるのだろうか、と疑問を抱いた。

まだ知り得ない感覚なのだと思う。

きっと、縁の概念と繋がるような新しい感謝の気持ちが芽生えるのだろう。悲しみと引き換えに。

つぶやき 記事一覧

言語学や言語比較 記事一覧

私の好きな〇〇 記事一覧

おすすめ記事:

【レトリック】専門用語を使わずにどう面白さを伝えるか。

難しい言葉を使うことなく、自らの専門の魅力を誰かに伝えることは可能なのだろうか?会話が膨らんだ勢いで、タクシーの運転手さんや庭師さんに「哲学」の面白さを伝えようとしてみた時の話を。

【相手の関心】
見ず知らずの年上の方と二言三言交わすと、たいてい「海外在住」であることがバレる。大学、仕事、普段の生活の話になると、『スペイン』や『イタリア』というワードが自然と口から出るからだ。…すると、お決まりの質問が飛び交う。

なんでスペイン? 

スペインはスペイン語?

なんでスペイン語に興味を?

ひとりで行ったの?

不安はなかった?

ご両親は心配されなかった?

もうスペイン語はペラペラ?

スペインの食べ物はどう?

お米はある?日本食は恋しい?

家では日本食を作る?

あちらでは何のお勉強を?

どんなお仕事を?

名前を言うのと同じくらい答え慣れた質問たち。本当に自分の話に興味を持っているのか、お愛想で「すごい」と言っているのかは、容易に判断がつくようになった。

後者の場合、「スペインどうですか〜?」と言われても、私は自分のことを一切話さない。表面的なやりとりは、気が進まない。

前者の場合は、楽しさを感じるため、丁寧に答える。そしてこちらからも相手の興味を探る。どのジャンルに関心を持たれているか。

・習慣の違い
・言語
・思想
・宗教
・海外生活
・異文化

同じ時間と空間をシェアする上で、その方にとってプラスの時間になればいいなと思う。

あの日の運転手さんは素晴らしかった。「その質問は、素晴らしいです」「良いところに気づいてくださいましたね」と、言葉にしてしまったほど、知的な返しをたくさんしてくれた。

スペイン語…「今日は晴れていて気持ちの良い天気だから、これから私たちは温泉に行きます」は、どう言うんですか?どんな感じなのか聞いてみたいです。外国語は全部同じように聞こえるかもしれんが(笑) ちなみにイタリア語でも同文で聞きたいです!

失礼ですが正直なところ、「哲学を学んでいる人=変人」だと思ってしまいます。(笑) 宗教とは違うんですよね〜?どんなことを習うのですか?

哲学部に入学してそこで数年、勉強しようと考える集団、クラスメイトたちはやっぱりどこか特殊だと感じますか?どういう時に?

面白い会話になりそうだったから、目に見えない『考える魅力』をシェアした。専門用語を一単語も使わずに。

f:id:kaedetaniyoshi:20201011023625j:plain

【3種のレトリック】
私が哲学の魅力を伝える時によく使う3種類のレトリックは、

① 相手に身近な例を数多く挙げる。

② 相手に答えを言わせる。

③ 様々な角度から本質へ迫りつつ、メインの展開を少し先延ばしにする。

 

【小話1: 異文化と言語と概念】
 「言語哲学」と言っても、さらに何十と種類があるのですが…。さっき、スペインとイタリアの文化の違いをお話したので、それ関連でいきますね。

『ドア』を思い浮かべてください。玄関やお店の。

もし私がこの『ドア』という言葉の前に形容詞をつけてくださいと言うと、何を挙げられますか?3つ。

例えば、「緑のドア」…何でも良いですよ。

「木のドア」「頑丈なドア」「自動ドア」

同じ質問を色々な国の人に行うと、ある特徴が見えてくるんです。「石のドア」「重いドア」「分厚いドア」と答える人の割合が高い国もあれば、 「カラフルなドア」「郵便受けがついたドア」「ステンドグラスが埋め込まれたドア」と答える人が集中している国もある。「重い」や「さびた」という形容詞とドアのイメージがリンクしない国もある。「両開き」「鎖がついた」…多国籍のメンバーが集まる場で聞くと、案外かぶることなく次々と挙がるものなのです。何となくその土地の風土が想像できますよね。

f:id:kaedetaniyoshi:20201011031713j:plainf:id:kaedetaniyoshi:20201011031719j:plain

ちなみに、スペインの玄関のドアは、開く時にちょっとしたテクニックがいる場合が多いんですよ。私の家は、鍵をひねりながらドアを持ち上げるようにして押すタイプで…。鍵も、日本と形が違うんです。イタリアの家の中にある鍵 (洗面所や部屋) は、一度閉めると開けるのが大変で…。しょっちゅう閉じ込められます。

f:id:kaedetaniyoshi:20201011041032j:plain

文化や、風土によってこんなにも「言葉から浮かぶイメージ」や「ものそのもの」が違うのに…。本当に会話は成り立つものなのでしょうか?

外国語は、ただ話せるだけではダメなんです。その国、文化、社会にある意味のルールを自らの経験を通して理解していないと。

哲学の主なテーマは、ドアの例のような身の回りにある『当たり前』です。

そもそもモノって何だろう?

目に見えない「痛み」「気持ち」「味」は…本当に分かり合えているの?

神様のような絶対的な存在を信じる宗教より、範囲が広いんです。祈りや儀式ではなく、考える筋道や根拠をベースに物事の「正しさ」を追求していくのが哲学という学問です。

(…目的地に到着。)

 

【小話2: 知識とは】
2020年の夏の終わり、庭師さんと立ち話をした。話に花が咲いて2時間弱。大学の話になった時、「哲学」に良い反応をしてくれた。しかし、具体的なイメージを持っていないようだった。

私はその日、母からプレゼントしてもらいたての時計を左手首につけていた。それを使って、知識について考える問題を出してみた。

では1分で、哲学の深さを伝えますね。

〇〇さんは今、何時なのか全く検討がつかないとします。携帯も時計もない。辺りを見渡しても何もない。その時、私が腕時計をつけていることにふと気づきました。針が18時15分をさしているのを見た〇〇さんは、何を思われたか…そうです。「18時15分」ということを『知り』ました。でも、実はこの時計、おとといから止まっていたんです。でも、たまたま、本当にその瞬間は「18時15分」だったんです。偶然にも。

この場合、時計を見て「18時15分」を『知った』と言えるでしょうか?

つぶやき 記事一覧

バルセロナ生活 記事一覧

海外生活 記事一覧

おすすめ記事:

【人間性と言語】文章や会話から人格を推定できるのか。

社交的な人とそうでない人は、同じ話し方をしない。

電車に乗っている時、自分の真後ろに座るふたりの会話を聞き、使っている単語や話し方、取り上げているテーマなどから、それぞれの人間性を描写することは出来るだろうか?一冊の本を読むだけでその著者の性格を予想することは出来るだろうか?

談話、チャット、メール、ツイート、ブログ。言葉は、その人が言おうとしていること以上のものを明らかにする。

f:id:kaedetaniyoshi:20200829084929j:plain

【外向的/内向的】
数年前、オランダの社会言語学者 Camiel Beukeboom 氏 (Vrije Universiteit AMSTERDAM: アムステルダム自由大学) は、40名のボランティアを集めてある実験を行った。様々な社会状況の写真の中から1枚を見せ、被験者たちに次のような説明をした。

声に出して「(写真の中で) 何が起こっているか」を描写してください。 

この実験から分かったことは、

・外向的な人の言葉は平然かつ抽象的
・内向的な人の言葉は明確かつ具体的

であるということ。セリフを例に比較すると次のようになる。

外向的な人『この記事は素晴らしい』
内向的な人『この記事は非常に有益だ』

【内向的な人の言葉】
内向的な人が発する言葉の特徴の一つに、『冠詞の多用』が挙げられる。スペイン語で言うと "el, la, los, las, un, una, unos, unas"。そして、慎重な性格であるがゆえ、推量表現『たぶん』『おそらく』『きっと』をよく口にする。

外向的な人『一緒にご飯へ行こう』
内向的な人『たぶんそろそろ一緒に外食しても良い頃』

【外向的な人の言葉】
外向的な人の多くは「変化に富んだ」人生を好む傾向にあり、リスクを冒す可能性も、アルコール消費率も、外出率も、内向的な人より高く、言葉には自発性が見られる。カナダのトロント大学の臨床心理学教授、Jacob Hirsh 氏と、Jordan Peterson 氏は生徒たちに「過去の経験とこれからの目標」を書かせ、点数をつけた。

点が良かったのは、外向的な性格の生徒たちで、彼らは『関係』に関連した単語を多く使っていた。

・交友関係
・家族関係
・ライバル関係
・恋愛関係
・仕事関係

研究者たちは、「社交性が高い人は社会活動におけるエクスプローラーであるから非常に論理的な結果だ」とコメントを残した。

【人間性の特性】
ただし、外向的か内向的なだけで人間性をはかることは出来ない。2010年にあるドイツの心理学チームが100人の生徒を集め、次のような実験を行った。

これから君たちには短編小説を書いてもらいたい。しかし、いきなり書けと言うのは難しいだろうから、ストーリーの起点となりうる5単語を与えよう。

・飛行機事故
・乙女
・花火
・中世
・スーパーマーケット

f:id:kaedetaniyoshi:20200830204434j:plain

のびのびとした寛大な性格の生徒は、より創造的なストーリーを。饒舌な生徒は、大げさな表現を用いながら面白いストーリーを。穏やかで優しい性格の生徒は、社会的な要素を多く含む展開を繰り広げた。

「社会的な要素を多く含んでいる」と判断したのは別のグループの生徒である。別のグループの生徒たちには「この短編小説を読み、著者の性格を描写してみてほしい」という別のお題を出していた。

【グループ別テーマ】
内向的な人たちを一部屋に集めて自由に話をさせると、話題は『問題解決』になりやすい。

・シェアメイトと喧嘩したから新しい家を探さないと…。
・最近、仕事の人間関係が上手く行っていなくて…。
・彼女と意見が合わなくなってきていて…。

話す量に焦点を当てると、こちらのグループは、自分が話す量と、相手が話す量がほぼ同じであった。

一方で、外向的な人たちのグループのテーマは対照的で、多様なトピックが取り上げられた。特に『楽しい話』が多く、話題の切り替えスピード (テンポ) も速かった。

・ジョギングが好き。
・スタインベック (アメリカの小説家) は素晴らしい。
・ハリーポッターは面白い。

話し手は相手にカジュアルな関係を求めている様子で、聞き手の表情も明るいという特徴が見られた。

【日本語の語尾】
日本語は、語尾から人格を推定しやすい言語である。

・疑問や感動を口にする時以外は、語尾を下げて話す方が、相手に冷静な印象を与えやすい。落ち着いた口調で話す人の言葉には重みを感じやすい。

・さっぱりした印象を与える。
「〇〇だと思うわぁ〜」➡︎「〇〇だと思う」
「それでさぁ〜」➡︎「それで」

・若者言葉や、くだけた言葉の語尾に何回も置くと、誠実な印象を与えにくくなる。

【知性と品性】
言葉には、その人の人間性、知性、品性が表れる。友達に頼みごとをする際に「もし良ければ」「迷惑じゃなかったら」を頭につける人と、つけない人。

「寿司が食べたい」or「お寿司が食べたい」

「やばい」or「驚いた」「美味しい」

「暇な時」or「時間がある時」

このあたりから品性や控えめな性格かどうかは分かるだろう。

知性は、知識と国語力だと思う。個人的には「正しい敬語」と「高い語彙力」を兼ね備えた人を知的だと感じる。心や気持ちの機微までもを上手く言葉に乗せられている人には、尊敬の眼差しを向けてしまう。

 

【700のブログを分析】
テキサス大学の研究チームは、700のブログのコンテンツを分析し、使用されている言葉を調べた。

著者の人格を分析した時の結果と一致することを発見した。

例えば、「愛想の良い人」「気さくな人」は、冒涜的な無礼な表現を使わない。「楽観主義者」は、心配・悲しみ・怒り・嫌悪に関する単語を使わない。

研究者たちは、特定の言葉から人間性を識別することを目標に実験を繰り返した。すると、次のような特徴があらわになってきた。

活発的な人
頻繁にポジティブな感情や社会情勢を参照する傾向

神経質な人
感情的に不安定な人、落ち込んでいる人は、「私」「僕に」「私の」というような一人称の代名詞を継続的に使う傾向 (うつ病の人、自殺を考えるほど思いやられている人の文章でも同様)

明るい人『私たちは幸せです』
神経質な人『私は楽しんでいます』

➡︎ 社交的な人は、ベクトルが己より世界へ向きやすく、主語が一人称単数「私は…」「僕は…」「私の…」ではなく、自然と「私たちって」「僕らは」「僕たちが」と、一人称複数で会話が進む。(私の頭の中では、話者と聞き手が『1-1』ではなく『1』であるイメージ。)

➡︎ 社会活動に積極的な人、社会に貢献したいと思っている人は、生活の中の注意が他者に向いているため、三人称の代名詞 (彼、彼女、彼ら) を使うパーセンテージが高い。

ツイートやブログから書き手の人間性を分析する研究はこれまでにいくつも行われており、現代では『書き言葉からその人を知ることは可能』と考えられている。有名なのは、アメリカのテキサス大学の心理学者 James W. Pennebaker (ジェームズ・W.・ペネベーカ) 氏。「統計は嘘をつかない」と、20年かけて意味論を考慮しながら構文を分析し、文章や会話から書き手/話し手の性格を知ることのできるテキスト分析ソフト (Linguistic Inquiry and Word Count: LIWC) を開発した。このソフトは、心理学界における「感情辞書」のようなもの。

「人間から生まれる全ての表現はその人自身の人間性と考え方に影響されている」

文章を分析すると言っても、名詞や動詞を見ていくのではない。文の中であまり重要性を持たない無意識的に書き手が用いる単語 (機能語: 代名詞、前置詞、助動詞、接続詞、冠詞、動詞の活用) に着目する。よく使用される単語を、予め分類された125種類のカテゴリーと、心的プロセスに関するカテゴリーに当てはめていく。

このテキスト分析プログラムは、James (ジェームズ) 氏の『表現力が豊かな文章の重要性』に対する関心から生まれたもので、自分の元へ来る患者さんたちがトラウマ体験を詳しく説明できるように、治療テクニックとして作られたのだが、今では、性格推定だけでなく、翻訳、認知症の検出、選挙運動の分析やマーケティング分野でも活用されている。インスタグラムやフェイスブックなどのSNSでは、アカウント保持者の年齢や性別、職業、興味といった特徴を推測している。

【おすすめ動画】
日本語の字幕付き ⬇︎

(もしこのジェームズ・ペネベーカの『感情辞書』と他学者の説を関連付けて比較するなら、私は、フロイトの『無意識』と、プルチックの『感情の輪』と、ウィトゲンシュタインの『感覚日記』を持ってくる。)

f:id:kaedetaniyoshi:20200830202628j:plain

【まとめ】
使用している語彙、主語、話すスピード、話す量、語尾の上がり下がり、表現、取り上げているテーマなどから、人格を推定することは可能。

f:id:kaedetaniyoshi:20200829175217j:plain

【つぶやき】敬語について。
表面上だけの薄っぺらい敬語と、心から敬意を持った敬語。何が違うのか。なぜ文法的には百点の敬語であっても「薄い」とか「偽りの敬語」と感じることがあるのか。

これは『謙虚な行動が伴う敬語』と『謙虚な行動が伴わない敬語』の違いである。言葉と行動はいつも繋がっている。もはや自分の一部である。

ここで言う『謙虚な行動』の要素は二つ。

① 気遣いと気配り
➡︎ 状況に応じた相手に対する気遣い。場の雰囲気を読む力。

② 実際に自らの労力を使って相手に奉仕する行い
➡︎ 気持ちだけでなく、実際に自分の労力を使うところがポイント。

この二つが伴わない敬語を私は「薄っぺらい」と感じる。

最近は、あらゆるサービスがオンライン化してきている。携帯会社、銀行、本屋さん、スーパーマーケット。ビジネスシーンに限らず、日常においても問い合わせメールをする場面が以前に比べ、増えてきている。

チャットを用いて、人間とリアルタイムでやりとりが出来る時代。相手とは、数通メッセージを交わすだけかもしれない。二度と会うことも、コンタクトを取ることもないかもしれない。

無論、相手にとって自分も同じ存在である。

目に見えない相手と敬語でやりとりをする。

この場合、どこに『謙虚な行動』が現れるのか。

・返信スピード
・理解するスピード
・気遣う一言
・明瞭な文章
・相手にとって有益な情報
・改行による読みやすさ

気遣いも気配りも、外に出さなければそれはただの「思い」である。

 

毎年、日本に一時帰国するたびに『日本語』に対する興味が高まっている。今年は、敬語がすごく気になっている。上に書いた「薄っぺらい敬語」と、これから少し触れる「ベール」のお話。

f:id:kaedetaniyoshi:20200830102352j:plain

敬語は時にベールのように、その人の本質を包み込む。口から出る言葉に、指先から生まれる言葉にお化粧をしているように。

日本人ならではの「慎み」や「礼儀」を表現する場面では、このベールがプラスに働いているなーと感じるが、相手の『人間性』を深く知りたい時、敬語を邪魔に感じることがある。同時に、綺麗な日本語が好きだから敬語を好んでもっと使いたいとも思う。ちょっと矛盾。

つぶやき 記事一覧

バルセロナ生活 記事一覧

言語学や言語比較 記事一覧

おすすめ記事:

【音と言葉】スペイン語の音楽を聞く頻度が年々下がっている話

私は色んなアーティストの曲をシャッフルするのではなく、ハマっている数曲だけを繰り返し聞き続けるタイプである。1曲を数日間リピートすることも稀ではない。

ラテン音楽を知ったのは16歳の頃。短期留学で訪れたロンドンの大学の中にあるディスコテカみたいな場所で流れていて、気に入った。

f:id:kaedetaniyoshi:20200608050644j:plain

そこで南スペインのセビリアから来た多くの留学生とも仲良くなり、改めてスペイン語に興味を持った。歌詞の意味はさっぱり分からなかったが陽気なリズムが好きで、

・ピットブル
・プリンスロイス
・シャキーラ
・マルマ
・マークアンソニー

のプレイリストを作っていた。

あとは英語圏の、

・ブルーノマーズ
・テイラースウィフト
・ジャスティンビーバー
・ワンダイレクション
・アヴィーチー
・マルーン5
・ノーティボーイ

バルセロナに渡ってきた2014年3月末、街に出ると必ず聞こえてくる曲があった。家のラジオからも同じメロディーが…数ヶ月に渡り流れ続けていた。それは、エンリケイグレシアスの『バイランド』という曲。リリース直後から、大ヒットを記録していたあの時代に、スペイン生活が始まった。

そこから彼の音楽もiPodに数曲追加した。今でも耳にするたび、プエルタデルアンヘル通りに住んでいた日々の記憶が鮮明に蘇る…。

f:id:kaedetaniyoshi:20200608043655j:plain

スペイン語が中上級レベルになり始めた頃から徐々にジャンルが変わった。2015年から2018年にかけて落ち着いた曲調を好むようになった。(2017年はデスパシートの年だったけど。)

例えばブログでたまに和訳をシェアしているアーティスト:

・アルバロソレール
・モラット
・デビシオ

や、英語圏のチャーリープース、ブルーノマーズ、エドシーラン、ジョンレノン。イタリアの、フランコバッティアート、ルーチョダッラ、ベンジ&フェーデ。

ピットブルを全く聞かなくなった原因 (要因) は、歌詞の意味を理解できるようになったから。(リズムよりメッセージ性が先行する感じ。) 今まで音楽として、音として好んでいただけだったんだ、と気づいた。母語と同様に、言葉 (外国語) を丸ごと理解できるようになると自然な変化が訪れる。もちろん、その時々の人間関係や心情も関係しているだろうけど。…とりあえず私の中で音楽のノリを楽しむ期は終わった。

 

数年間大好きだった3アーティストを聞く頻度が2019年半ば以降、下がり続けている。(最近あまり聞かなくなっただけで、今後また自分の中で再ブームがやってきてずっとリピートする可能性も大いにある。)

・アルバロソレール
・モラット
・デビシオ

飽きたわけではない。いずれも7割が失恋ソングだから、常日頃「聞きたいな」と思うことが前ほどなくなった。前向きな歌を聞くと軽快な気分になるように、しみじみとした歌を聞くと、少しそんな気分になる。いくらテンポが明るくても。

f:id:kaedetaniyoshi:20200608052857j:plain

きっと将来、20代前半を懐かしみたくなった時にたくさん聞き返すと思う。

邦楽を聞いて『素敵な歌詞だな』と思うことがあるのと同じで、スペイン語が外国語でなくなると、以前に比べ、歌詞 (言葉) に敏感になる。私の言う『外国語が外国語でなくなる瞬間』は、自分の口から出る言葉に感情が乗った時。

今までの「音とリズム」が「音楽と言葉」に変わる。

たまたま好きなアーティスト (アルバロソレール、モラット、デビシオ) が失恋ソングばかりを歌っているのだろうか?それともこれがスペイン語圏の音楽の傾向というか特徴なのだろうか?

スペイン人と日本人

コロンビア人と日本人

〇〇人と日本人

これだけ「お国柄」や「文化によって表れる内面の違い」があるのだから、身近な『音楽』にも何らかの違いが存在しているはず。曲調や楽器だけでなく、歌詞の違いが。

つぶやき 記事一覧

Morat (モラット) の曲を和訳 記事一覧

アルバロソレールの曲を和訳 記事一覧

おすすめ記事:

【ブログで情報発信】信頼はどこから生まれるのか。

「膨大な情報の中から正しい情報を得るためにしていることはありますか?」「どうすれば信頼性の高いブログを見極めれますか?」

初めてこのようなタイプの質問を受けた。ブロガー目線から、ネットユーザー目線から答えてみた。

f:id:kaedetaniyoshi:20200602022917j:plain

【正しい情報を得るために】
私がしている3つのこと。

①「1」を知るために「30」のデータを集める。
➡︎ 何十本も記事を読む。自分の専門外のテーマだったとしても、数読めば自然と情報の「平均」が見えてくる。これが後に比較する上での「基準」となる。知っている内容であっても、知らない内容と同じくらい読む。(だからパソコンの上に出るタブの数がいつも多い。今は…29個開いている。) これは、プライベートや大学の勉強をする時。

スペインの大学進学を斡旋する仕事の時は、もっと。『自分の情報でその人の人生が変わる』と思いながら「1」を与えるために「100」のデータ分析を行なっている。

② 1ページ目 (10ページ) ×3
➡︎ 例えば、日本語で「信頼はどこから生まれるのか」と検索する場合、私は習慣的に1ページ目に出てきた10本のブログやサイトを読む。前のページに戻る時間をカットするため、一気に『新しいタブで開く』を選択し、10タブ開く。読後は × を押してページを閉じてゆく。

f:id:kaedetaniyoshi:20200602030152j:plain

いまいち学べた感じがしない時は、少し言葉を変えて更にもう2回ほど、同じことをする。「信頼とは」「信頼関係を築くには」というように。

留学、大学、学説、理論、文化、事件

何を調べるにせよこの方法を用いる。日本語以外の言語が話せると、こういう時に便利である。スペイン語、イタリア語、英語、カタルーニャ語でも検索ができる。

③ 既存の結論に頼らず勉強し続ける。
➡︎ 多くの知識が身につくと、容易に情報の真偽を見分けられるようになる。なぜならもう既に自分の中には、外から入ってくる新しい情報を『比較』するベースがあるから。

・調べなくても何でも分かるようになる
・新しい情報を取り入れる時に無駄を省ける

最初の数行だけで「説得力や信憑性に欠けている」と気付ければ、その先を読む時間を他サイト (より価値が高いページ) に当てることができる。

 

【信用性の高いブログ】
私が信用性の高さを感じるブログに共通してあるものは、

- 書き手の写真と本名

- 情報の深さ

- 自身の経験談

大きく分けてこの3つ。

《写真と名前》
➡︎ コンテンツにもよるが、ブロガーの顔写真が載っている海外生活や旅行系のブログは信頼しやすい。「記載内容に自信があるから顔や名前が出せる」と思っている。

ニックネームなのか、フルネームなのかもチェックする。もし、ブロガー名は違うのに、全く同じ内容のブログが2つ存在したら、次のどちらに相談しようと思うだろう?

ブロガー名: enjoy_lovely_spain1

ブロガー名: Kaede

《深さ》
➡︎ 浅い情報ブログの特徴は…
・1本に「1」しか書かれてない
= 知りたかった何かの上をいく要素が含まれていない
・最後に「信憑性」や「事実」を濁す一言がある
・どこかで見たような内容

《引用ばかりではなく自身の経験談》
➡︎ ブロガー歴や海外在住歴もひとつの判断材料ではあるが、私はその数字よりもその人のステータスを重視する。スペイン生活に関する知識が欲しい時、あなたならどのブロガーの肩書きに魅力を感じるだろう?

(a) スペイン5年目
高校を卒業後、単身でバルセロナにきました。
今は現地でサッカーのコーチをしています。

(b) スペイン7年目
国際結婚を機にアンダルシアへ。
日本人が1人の小さな村で家事と育児に奮闘中!

(c) スペイン18年目
勤めていた大企業を辞め、憧れの街へ。
数年前からビルバオで日本語を教えています。

(d) スペイン2年目
ベルリンで1年のインターンシップを経験し、去年マドリッドでアパレルブランドを立ち上げました。

(e) スペイン6年目
バルセロナ大学医学部4年の28歳。
現地の学校生活の様子を毎日発信!

多くの人は自分の目標や理想に近い人を選ぶ。《スポーツ、国際結婚、転職、起業、大学》言ってみれば興味が近い相手。私は「日本人が1人しかいない」というワードに魅かれやすいこともあり…。(b) を読んでみたいと思う。

直接的な人間関係と同じように、ブログの書き手と読み手の間に生まれる一種の信頼も、共通点の多さがポイントなのかもしれない。

【信頼はどこから生まれるのか】
人間らしさから共感が、共感から信頼が生まれると思う。活字からその人のシルエットが形作られ、性格や口調や考え方の要素が加わり、

〇〇歳くらいなんだろうな
〇〇な性格なんだろうな
こういう見方をするんだな
〇〇が好きで〇〇が嫌いなんだな
こんな顔をしているんだな

ブログを読むことがルーティーン化すると、徐々に知り合いのSNSを見ているような感覚になり始める。面白いと思わないテーマ、共感できない考え方などを自ら好んで度々読むことはないだろう。共感できる何かがあるから読んでいる。

ブロガーは身近な友達と同じで、素人である。辞書でもなければ絶対的な知識をシェアしているわけでもない。100%正しい情報、100%肯定される意見ばかりを書いているわけではない。

正しいか正しくないか、

賛成か反対かは、

周りの友達が口にする事柄の真偽の割合と同じである。

つまりは、捉える人次第。相手やブログを批判するのではなく、自分にとって有益で心地よい情報 (人) を自ら選べば良い。

共感+安心感+尊敬+信実+受容 

 

つぶやき 記事一覧

スペイン語 記事一覧

バルセロナ生活 記事一覧

おすすめ記事:

【600記事目】価値観が分かる15の質問

500記事目の終わりに触れたように、600本目『価値観』について。いくつかのサイトから質問を15個ピックアップ ⬇︎

f:id:kaedetaniyoshi:20200413033511j:plain

Q1. どういう風にお金を使った時に満足度が高いと思う?
最も高い満足度が得られるのは、誰かへのプレゼントやお土産にお金を使う時。「自分に対して」に限定すると、何年も何十年も愛用できる物を買えた時。

Q2. 5年後の自分はどこで何をしていると思う?
スペインか日本で「子育てと家事をしながら空き時間に仕事」が理想的。イタリアやその他の国にいる可能性は極めて低くなった。5,6年前は、イタリアに永住したいと思っていたが、もう満足。やはりスペイン語とスペインが自分に合っていると、一度離れて再確認した。

常日頃、心の底から住みたいと思っているのは日本。でも自分を高められる要素も、自分にしか出来ないことの数も、スペインの方が多い。だからもう少し、拠点は海外。

将来的に住む場所は変われど、仕事は今と同じ。主にこの2ヶ国で展開していく。

この6年間、「縁」と「直観」で人生の方向を180度変えてきた。これからも「損得」や「お金」を第一に決めることはない。それゆえ、自分でも読めない。

「経験が増えるにつれ、未来の選択肢も増える」とは思わない。逆に狭まる。自己の「好き」にフォーカスを絞っていけるようになるから。

人生の経験値は、360度に広がる世界から自分に合った道を探すのに役立つ。経験値を上げると、視野が360度以上になるのではなく、-360度まで見えるようになる。 

Q3. あなたにとって男/女らしさって何?
男らしさ: スポーツマン。何かが壊れた時に直せるところ。(直せなくても良いからとりあえずどうにかしようとしてくれる姿。) 潔さ、寛大さ、素直さ、真面目さ、自信、堂々とした言動。

女らしさ: 礼儀、字の綺麗さ、奥ゆかしさ、柔和さ、凛とした態度、温かさ、素朴さ、落ち着き。1番は、気遣い。

最近は、この「らしさ」に対して、賛否両論あるみたいだけれど、私は「らしさ」が好きだし、大切にされるべきだと思う。ジェンダーレスの人を認める/受け入れる世の中なのであれば、「らしさ」だって平等に共存し続ける。当たり前。これを強制だと言うのであれば、その発言も一種の強制。男女差別ではなく、男女の区別。違うものは違う。優劣を言っているのではない。

結局は、みんな密かに自分の好きな在り方をすれば良い。

私は日本の古風な考え方『男性が前を歩いてリードする』『女性は家庭を守り、夫を支える』を素敵だと感じる。

Q4. 苦手な科目は?なぜ?
数学。答えが1つなわけがない。確率が式で求められるわけがない。数字なんて全てXみたいなものなのに、何が分かるんだろう。…と思ってしまうから。でも数理論理学や化学は得意。だから数字というよりは「論理」の好みかな。

Q5. 視覚・聴覚・触覚・味覚・臭覚、1つだけで生きるならどれを選ぶ?
聴覚。

Q6. 永遠に生きられるなら何をして過ごす?
終わりがある今の命と同様に、最初の60年は変わらず過ごす。それから徐々に「命を終える方法」を考え始める。大切な人たちの命の儚さを目の当たりにする度、なぜ自分だけ永遠に生きれるのか、そこに悔しさや悲しみが生まれてきそう。全員が「永遠の命」であるなら…。そこは天国。永遠に生きているのではなく、実はみんな既に死んでしまっているのだろう。

Q7. 100万円あったら何に使う?
全額貯金。

Q8. あなたは夢のためにどれくらい価値のあるものを捨てられますか?あなたはその夢を達成するためにいくら払うことが出来ますか?
一途にひとつの大きな夢を追うタイプではないため、何かを失う時点でそれは私の「夢」ではない。背負えるだけのチャレンジを、両手を広げた範囲内でしていくタイプ。

そもそも何かを捨ててでも叶えたい「夢」ってあるのだろうか。思い浮かばない。家族、恋人、友達、家、信頼、地位、宝物…?

いくら払うか…。資格や学位系の夢なのであれば、年間100万円まで。起業、事業、その他の夢であれば、1つの銀行口座に入っている額まで。その分、娯楽費や食費は上手くやりくりして削る。

Q9. あなたにとって家族って何?
100%素でいれる場所。

Q10. 人生最大の失敗は?どうやって克服した?
「嫌な思い出」や「ベストとは言い難い選択をした」と思うことは3,4つあるが、それらが「成長」や「今」に繋がっていると感じるから「失敗」とは思っていない。でもどうなるか分かった状態で『もう一度、同じ選択をするか』と聞かれたら、…しない(笑)

克服方法は、どんな時も、それを選んだのは自分なんだから責任を持ってやり遂げる&楽しむ。とことん自分のせいにする。やり遂げられない&楽しめないのものなのであれば、最初から適当に無責任な選択をするな、という話。常に未来の自分が誇れる生き方をしていたら、失敗はしない。したとしても未来の自分が「失敗じゃないよ」と言ってくれる。

 

日常的な失敗談はたくさんある。

1. 着物の着付けをしてもらった帰りに先生の家の玄関で知らない人の靴 (明らかにうちの家のではない色の男性用クロックス) を間違えて履いて帰り、出先で母から言われて気づくという失態を…。急いで戻り、謝り、自分の可愛い草履に戻った(笑)

2. スペインからイタリアへ大荷物を運ぶ時に、複数預けていたスーツケースのうち1つが、購入したてのファスナータイプで…。まさかの壊れて中身全開の状態で流れてきた。大人数の前でベルトコンベアと共に回りながら回収したことがある人はそうそういないだろう。(笑) 

こういう系なら次から次へと出てくる。

Q11.「愛」と「お金」どちらが大切?理由は?
「愛」が大事。容易に得られないから。

・愛に使うお金はあれど、その逆はない。

・今、誰かを幸せに出来ていない人は、お金があっても無理。

・お金は失っても取り返せる。どんな仕事でもとりあえず働けばお金は生み出せる。

人は無い物ねだりをする。

無い物が欲しくなる。

人間の欲は不思議なほどに、逆をいく。

「何でも買ってもらえる」幼少期を過ごすと、次第に物欲が無くなる ➡︎ お小遣いをもらっても「貯める」ようになる ➡︎「買う」より「貯蓄」に満足感を得るようになる

だからこの質問の『答え (価値観)』は、自分の育ってきた環境にかなり左右されるはず。ここで言う「環境」とは、裕福な家庭だったとか、両親から愛情をいっぱい受けたとかではなく『感謝のベクトル』がどこを向いていたか。現在、何に最も感謝をしているか。

Q12. あなたにとって「完璧な1日」とは?
平日: 早寝早起き、天気は快晴。掃除と洗濯。スポーツ少々。勉強と仕事は半々。朝ごはんはひとりが良いけど、お昼と夜ごはんは、家族や好きな友達とゆっくり話をしながら楽しむ。

休日のおでかけ: 朝早くから行動を始めて、24時間を出来るだけ長く満喫したい。その日の終わりに、撮った写真を見ながら「これ今日!?…3日前みたいな気分だよね」と一緒に過ごした人と笑い合えたら、それは私にとって完璧な1日。

Q13. マルチに働きたい?1つの仕事をつき詰めたい?
マルチ!全才能とスキルを生かさないと勿体無い。

Q14.あなたが重視する価値を5つリストアップしてください。
時間、家族、健康、生きがい、自分らしさ

Q15. もし10年前のあなたが目の前に現れたら、10年前のあたなは今のあなたがやっていることに感銘を受けると思いますか?なぜ受ける/受けないと思いますか?
10年前は…もうすぐ15歳になる14歳。中3に進級したての頃。だったら、英語もスペイン語も話せるよ+海外の大学に通ってるよ+通訳や翻訳を通して誰かの役に立てているよ、の三言で、感心して喜んでくれると思う。夢が叶っているから。

 

【譲れない価値観】
ここ2,3年で『お金の価値観が合う人かどうか』が、自分の中ですごく大事になってきた。

・どこに使うか
・どこをケチれるか
・きちんと貯められるか
・お金にきっちりしているか

性格が合う相手でも、一緒に旅行へ行くと、顕著に金銭感覚の違いが現れることがある。まずは、交通手段。

・電車
・バス
・飛行機

近場なら電車が良いが、バルセロナ〜マドリッドの距離以上は…。私の中で飛行機以外の選択肢はない。時間と快適さを買う。あとは、全てに当てはまるが「安い朝イチの便」に乗るために、早起きをするかどうか。

続いて、

博物館、美術館、庭園、宮殿、コンサート、試合観戦、映画館など、入場料を払う場所で何に価値を感じるか。科学博物館にだったら10ユーロ出せる人、スポーツ観戦になら払える人、とてもじゃないが絵に10ユーロは払えないと言う人、映画や音楽はネットで楽しめば無料だと言う人。

それから「食」

家族や友人への「プレゼント」

最後に「ホテル」

たかが一泊、されど一泊。ここに大きな開きが出るとは…。

4つ星以上を基本としている人、寝れたらどこでも良い人、ごく普通の中の中レベルを好む人、大切な人との旅行であっても安さ重視で複数人との相部屋を選ぶ人、特別な思い出にしたくて既に良いホテルをおさえてくれている人、何が何でも無料で泊まろうとする人、なぜかB&Bにこだわる人。 

どんなに気が合う2人でも、

どんなに見た目がタイプな相手でも、

どんなに真面目な相手でも、

この価値観が重なっていなければ…難しい。

『お金の使い方』からは、その人が大切にしているもの、育ち、思い、考え方、趣味、性格、はたまた自身の価値が見えてくる。

f:id:kaedetaniyoshi:20200415002100j:plain

次回、700本目のテーマは「哲学」。

つぶやき 記事一覧

イタリア生活 記事一覧

バルセロナ生活 記事一覧

おすすめ記事:

【お金と愛と時間】ひとつの条件が加わると人間の答えは真逆になる

誕生日、クリスマス、記念日。

誰しも一度は大切な人に『プレゼント』を贈ったことがあるだろう。もちろんこれから先だって何度も『贈り合い』を経験していくだろう。

f:id:kaedetaniyoshi:20200411000131j:plain

贈る相手は、

・両親
・祖父母
・兄弟
・恋人
・友達
・妻や夫

・子供
・孫

ポピュラーな品物は、

・花束
・アクセサリー
・前から欲しがっていた物
・ゲーム
・食べ物
・旅行
・衣服
・香水
・本
・コンサートのチケット

街でプレゼントを選んでいる人にインタビューをすると、ほぼ全員が上記のいずれかの「相手」と「物」を挙げる。

f:id:kaedetaniyoshi:20200410235459j:plain

そこで、答えてくれた人たちに、

「もし今、宝くじが当たったらその人に何を買ってあげたいですか?」

と、聞いてみる。

すると...

予算が増え、選択肢が広がり、どの人もお金の価値がより高いものを口々に挙げ始めた。

世界旅行に連れて行ってあげたい』
をプレゼントします』
宝石を贈る』
高級なスーツを作ってあげたい』
『毎日豪華な食事を一緒に食べに行く』
『ハワイで結婚式を挙げたい』
高級なお寿司屋さんで好きなだけ食べる』
高級ホテル連泊が良いかな』

答えはバラバラだ。

では、これに、あるひとつの条件を加えるとどうなるか?

「もし今年が一緒に過ごせる最後のクリスマスだとしても、同じ物を贈りますか?」

一瞬、時が止まる。

なかなか即答出来る人はいない。

考える。

涙を浮かべる人だっている。

5秒。

10秒。

15秒。

それから出る答えは、

全員同じ。

『NO.』

f:id:kaedetaniyoshi:20200410235553j:plain

『全ての愛を捧げます。』

毎日隣にいる。少しでも長く、そばにいたい。近くで。特別じゃなくたって良い、ただ一緒にいられたらそれで良い。

➡︎ お金では買えない「時間」と「愛」を相手にプレゼントするという結果になった。

なぜ?

 

【時間】
私たちが生きているこの「時間」には2種類ある。

① 買える時間

② 買えない時間

前者の例えは、公共交通機関。「鈍行で行くと安いが、到着に時間がかかる。だから私は新幹線を使う。」この人は、時間をお金で買っている。

後者の例は、余命。最近は、医療の発達のおかげである程度の「命の時間」を買えるようになっている。しかし、限界がある。100億円払っても、救えない命がある。

「全財産を失っても良い」

いくら泣いても、買えない1秒がある。

「最後の1日」

目の前の大切な人が100%、
明日、自分の前からいなくなる。

その時、見えてくるのは、

人間の愛に対する絶対的な価値

・10年越しで挑む大事な試験
・億万長者も夢じゃない大事なプレゼン
・子供の頃から夢だったスタジアムでの試合
・どうしても外せない仕事
・何日も前から楽しみにしていた約束
・1000万円の宝くじの換金締切日
・大好きな歌手と会って話せる夢のような機会

大切な人の「最後の1日」と被っていたら?

そんなの大したことじゃない。

誰も自分の「夢」を選ばない。

何よりも、その人との「時間」が欲しい。1秒でも良いから、長く。一緒に時を刻みたい。

f:id:kaedetaniyoshi:20200411001556j:plain

【アイデアの想起】
イタリアの fanpage.it というメディアは、これまでに何本も考えさせられる素敵なビデオを制作している。先日、たまたま目にした「最高のクリスマスプレゼント」というタイトルがついた下のビデオは、私が挙げた『最後のクリスマスに何を贈るか』をメインのテーマとしているもの。

【終わりに】
この記事を書きながら3つのことを思った。

1. 日頃からお金じゃ買えない何かで、大切な人には感謝や気持ちを伝えよう ➡︎ 1本の電話、1通のメッセージ、1言のお礼。離れていても繋がれる時代。

2. 自分も誰かにとってそういう存在である ➡︎ 毎日元気に、意義のある時間を過ごそう。

3. 会える時間を大切にしよう ➡︎ 大きな規模の話をすると、宇宙が出来て138億年。地球が生まれて46億年。その中で私たちは長くて100年。平均的には83年、生きる。83年なんて。宇宙の中で、ほぼ存在しないほど僅かな時間。それくらい「生」はレアで、特殊なこと。

【携帯電話】
私は日本を出た2014年3月24日から、イタリアの大学を始めた2017年11月3日まで、携帯電話を持っていなかった。

当時も今と同じくらい、携帯はみんなの生活の一部。必需品だった。

だから番号を聞かれ、持っていないと言うと、決まって「ありえない!どうやって生きてるの!」と驚かれた。半信半疑で信じてもらえなかった。 

(2017年11月に再購入したのは、イタリアの大学があるカラブリア州が田舎過ぎたから。Wi-Fiは、唯一大学にあるだけで、家にもない。)

 

高校3年間は肌身離さず持っていた。

f:id:kaedetaniyoshi:20200410233138j:plain

友達と1日に30通以上のメール楽しんでいた。件名に数え切れない RE:RE:RE:RE がついていたのが懐かしい。電話もアメブロもツイッターもたくさんした。

でも、バルセロナでは携帯を買わなかった。ノートパソコン1台のみで良い、と心から思った。

その理由は2つ。

本気でスペイン語を学びたい。➡︎ 身につくまでは日本語をシャットアウトする。それくらい確固とした強い意志を持っていたから。

もう後悔をしたくなかったから。➡︎ 高校生活を振り返れば、家族との時間が全くと言って良いほど取れなかった。私が常に外にいたから。平日は毎日始発で家を出て、帰宅は夜。土日や休暇は全て試合と遠征。家族とゆっくりと過ごせたのは、テニスと勉強三昧の3年間を終えた後。卒業式の翌日からビザ発給を待つまでの「数週間」のみ。バルセロナに渡って来て、最初の数ヶ月はカタルーニャ人のおばあちゃんが1人で住む家にホームステイをしていたのだが、1週間目に、早すぎるホームシックがやってきた。14歳の頃、カナダのプリンスエドワード島に初めて短期留学をした時以来の何とも言えない『孤独感』。しかも今回は、終わりが未定の留学。...私は人生最大レベルの後悔をした。「もっと家族と会話をしておけば良かった」と。家にいる時も携帯をずっと触っていた自分がありえなかった。

それから「今」を生きることに決めた。

今、目の前にいる人と。

慣れるまでに2ヶ月ほどかかったが、次第に携帯なし生活が快適で自由だと気づき、それを好むようになった。

携帯電話。

近くにいる人と遠くなって、
遠くにいる人と近くなる。

不思議な箱。

つぶやき 記事一覧

スペイン語のビデオ和訳 記事一覧

バルセロナ生活 記事一覧

おすすめ記事:

【あなたの1時間の価値】何円で自分の時間を売れるか。

「時間の価値」について学ぶ時、スペイン語圏には1つ、有名な小話がある。Youtubeに複数の再現ビデオ (3-5分) がアップされているほど、感動的な良い話。タイトルは、

Papá ¿Cuánto vale una hora de tu tiempo?
(ねえ、パパの1時間っていくら?)

【要約】
主人公は、7歳くらいの小さな男の子。お父さんは夕食の時間になっても仕事から帰って来ない。お母さんは食事の用意はしてくれるが、忙しいため、一緒にゆっくりご飯を食べることはない。ある日、お母さんに「パパは何時にかえる?」と聞くと『遅いわよ、もう寝なくちゃダメよ』と言われる。しかし、その日はどうしても言いたいことがあっため、リビングのソファーで眠い目をこすりながらお父さんの帰りを待った。夜中、帰宅したお父さんに「パパ、ひとつきいてもいい?」と問う。『なんだい?』「パパは1時間にどれくらいかせいでいるの?」『なんでそんなことを聞くんだ』「ただ…知りたいだけ」『…10ドルだが…それがどうしたんだ』「…ねえ、5ドル。ボクにくれない?」『何を言ってるんだ!また新しいおもちゃを買うつもりか!馬鹿げている!早く自分の部屋へ行って寝なさい!』男の子は悲しそうな顔をして自分の部屋のベッドへ向かい、眠りにつく。腹が立っていたお父さんだが…、ふと我にかえり、先ほどの質問を振り返る。…5ドル…5ドルか…。財布から5ドル札を抜き、寝ている息子の部屋へ。「ほら」と1枚手渡した。すると、男の子は満面の笑みでお礼を言い、受け取り、ベッドの下に隠してあった貯金箱を嬉しそうに取り出す。中には既にたくさん貯めてあったお小遣いが入っていた。それを見たお父さんは驚いた様子で『すごい持ってるじゃないか。…なのになんで…もっと欲しかったんだい?』と聞く。「たりなかったからだよ、でもこれでぴったりだ!」『一体、何が買いたいんだ』「ねえパパ、パパはさっき、1時間に10ドルかせいでいるっていったよね?だからその1時間をボクに買わせて。おねがい。明日の夜ごはんいっしょに食べたい」と、貯めてあったお金を全てお父さんに差し出した。思いもよらぬ答えに涙ぐみそうになりながらも、言葉が出ず、息子を抱きしめる父。

【お金の額】
登場するお金の額と通貨は、国によって異なる。下のビデオは、10ドルだが、別のビデオでは100ペソだったり50ドルだったりする。日本だと「1000円」くらいがちょうど良いのかな。

【ビデオのポイント】
このストーリーには、2つのメッセージが含まれている。

① 子供との時間を大切に。子供が本当に欲しいモノのはおもちゃではなく、家族と過ごす時間と愛情である。

② 自分の1時間の価値はいくらだろう。

 

【時間の価値について】
この先「自分の1時間」に価値をつける場面がある。いわゆる、値段設定。イベント、事業、依頼、お手伝い…。

自分の時間を「お金」という「価値」に当てはめるのは案外、難しい。

だから多くの場合、一般的な例 (相場) や、現在の仕事の時給を参考にする。

・語学教室
・サッカー教室
・ピアノ教室
・セミナーやワークショップ
・翻訳 (1単語あたり)
・通訳

いずれも「知識」を売る。

しかし、

おりがみ教室<スペイン語の同時通訳

パソコン教室<お医者さん

というように、同じ「仕事」でも、その知識を習得するのにかかった時間と努力、そして難易度によって変わる。勉強をすればするほど、自分の価値は高まる。オリジナルな経験をすればするほど、自らがその基準となる。

【価値の変動】
もし「このビデオの内容をベースに、1つ問題提起をしなさい」と言われたら?

私は「価値の変動」を選ぶ。

同じ人間でありながら、

同じ1時間でありながら、

なぜ「惜しみなく1時間を捧げられる相手」と「価値を感じない相手」がいるのか。を掘り下げる。そうすると『価値』の神髄にたどり着く。

「何円で1時間を売ってくれる?」

と、自分の子供から言われたら?

もちろん、本気で売る人はいない。でも、真剣に値段をつけなければならないとして、その額が、恩師から言われるのと、恋人から言われるのと、偶然カフェテリアで隣に座っていた人から言われるのとで、変わるのはなぜか。

自らの価値を高めてくれる相手、環境、勉強、仕事、時間とは。

こういうテーマが好きな人は「自分ならどんな問題提起をするかな?」と考えてみると面白いだろう。

 

【自分の時間を買ってくれる人】
サービスでも知識でも何でもそうだが、やはりお金を出して買ってくれた人には、それ以上の価値を返すようにするのが基本。

私の仕事における価値観のひとつには、母と祖父から幾度となく教わってきた、この「基本」がある。最近も、その大切さを念頭に濃く置くようなやりとりがあった。

ここに実例を挙げれば非常に分かりやすく、2人の人間性や価値観を表現出来て良いのだが、あまりにも「具体例」過ぎるので、ブログでは割愛。

一文にまとめるなら、

自らに価値を感じ、技術や知識 (=時間) を買ってくれた人、信頼してくれた人には、必ずプラスで返す。+αを返す。

価値を例えるのに「お金」を用いると、イメージしやすいから何度も書いてきたが、無論、お金が全てではない。

むしろ、お金で買えない価値と価値の交換の方が、毎日世界中で多く行われていると思う。

「愛」「思いやり」「信頼」

古代ギリシアにあった4種類の「愛」の概念 (エロス、フィリア、アガペー、ストルゲー) について、「思いやり」と「信頼」の語源について触れるのも哲学的で楽しいから、またいつかの記事で。

閑話休題、

あなたは何円で自分の1時間を売れるだろう?

つぶやき 記事一覧

スペインの大学情報 記事一覧

スペイン語のビデオ和訳 記事一覧

おすすめ記事:

【分かりやすく例えたい】バイリンガルやトリリンガルの脳の動き

自分と異なる国籍であると思われる相手に話しかける時、ほとんどの人は英語を使う。

バイリンガルやトリリンガルであれば、サッと「相手が話しやすい言語」に切り替え、より会話を楽しむことが出来る。お互いが伸ばしたい共通の外国語で話すことだって出来る。

…日本を一歩出ると、世界は多言語話者で溢れているのだ。

相手がスペイン語圏出身ならスペイン語に、イタリア人ならイタリア語に、バルセロナ出身ならカタルーニャ語に切り替える生活。

その姿を見た家族や友人は決まって「頭の中、どうなっとん?」と不思議そうな顔をする。

この脳の動きを、万人に通ずる何かで例えたい。どうやって分かりやすく説明しよう?

f:id:kaedetaniyoshi:20200304012008j:plain

【日常生活における4つの例】
① 料理中
コンロ、レンジ、オーブンをフルで使っている感覚。パスタを茹でながら、フライパンでソースを作りながら、オーブンを温めながら、レンジでお肉を解凍しているような。

② 運転中
前の車が車線変更で自分の前に入ってきそうな感じがしながらも…、歩道と自分の車体の間でスピードを合わせてくるバイクが気になっているような。トリリンガルはそれに加えて、目的地までの最短ルートを同時に考えている感じ。

③ パソコン作業中
タブを複数開いて、同時にいくつもの書類やブログの記事を書き上げているような感覚。音楽を聴きながら勉強に集中する、という例は少し違う。音楽を聴きつつも、集中のほとんどが勉強にいっているから。

④ ピアノ
両手で異なるメロディーを弾きながら、ペダルも使いながら、頭ではどんな転調が合うかイメージしている感じ。

➡︎ つまり、バイリンガルやトリリンガルの脳の動きは「同時作業」に似ている。

どの例においても言えるが、それぞれの作業は独立しているため、数が増えても混ざることはない。言語も同じ。

【あるテスト】
下の「文字」じゃなくて「色」を声に出してスラスラ言う時の、脳の動きも似ている。

   紫 黄 

   赤 緑 

f:id:kaedetaniyoshi:20100628131342j:plain

余計な情報や刺激を無視しながら与えられた課題を遂行していくテスト。多言語話者は、これをこなすスピード&点数がモノリンガルに比べ、圧倒的に高い。素早く、確実。

【多言語話者になって生じた変化】
一つの作業だけに集中することが無くなった。(出来にくくなってしまったのかもしれない。)

・仕事の書類は常に複数同時に作成 (進行)
・開いているPCのタブの数は平均15
・ブログの記事を3,4本同時に書く
・電話カウンセリングで助言や提案をしながらパソコンでその人に合った書類を作成 (この作業と同時通訳は使う脳の二部分が全く同じ気がする)

など。

『〜をしながら〇〇』が明らかに増えた。しかし、集中が散漫になっているわけではないため、プラスの変化と言えるだろう。

 

【この分野が好きな人】
脳科学/認知心理学/言語学に興味がある人は、

・Paradigma de Eriksen
 (フランカー課題)

・Efecto Stroop
 (ストループ効果)

・Efecto Simon
 (サイモン効果)

あたりが面白いと思う。

【誰でもなれる】
語学は生まれ持った才能ではないため、誰でも習得可能。大事なのは、かける時間や年数ではなく、気持ち。日本人の義務教育期間で習う英語が良い例だ。

そして、独学の言語習得にはどうしても限界がある。コミュニケーションがあってこそ。

数ヶ国語の文法を完璧に理解している人が発する『HOLA!』より、語学学校やスーパーで勇気を出して発した『HOLA!』の方に意義を感じる。語力証明書よりも、誰かから言われるひとつの『GRACIAS』を大切にしたい。

異国の地でゼロから築いた人との繋がりは一生の宝となる。

【言語とコミュニケーション】
外国語が話せないと、外国の人とコミュニケーションが取れないのか。

先日「かえでさんは、最初の頃、言葉が話せない状態でどのようにコミュニケーションを取っていましたか?」と質問をもらった。

『分からなくても笑顔でいることが一番大切。私はさっぱり理解出来ず、困ったとしても、決してそれを顔に出さなかった。とりあえず相手の言った最後の言葉をリピートして、きちんと聞いているアピールをすること。どうにかして言葉のキャッチボールを続けること。…英語もスペイン語も、ある日突然話せるようになるのではなく、一単語一単語、学んで行くのだから、心配しなくて良いよ。』と返した。

つぶやき 記事一覧

言語学や言語比較 記事一覧

バルセロナ生活 記事一覧

おすすめ記事:

【就職活動】この四文字が頭の中から完全に消えた日。

どうやら日本の大学生は、かなり早い段階から『就職活動』を行うらしい。

f:id:kaedetaniyoshi:20200228035907j:plain

私は今、24歳。2ヶ月後には25歳になる。

3年前、

日本の同年代の友達がSNSに『就活』のことばかり載せている時期があった。リクルートスーツというものを身につけ、髪の色を黒に戻し、何十社にも面接へ行く日々。

その様子を見て、色々なことを思った。

企業はどこで個性を判断するのだろう。

日本の大学で自らの『売り』を養うのは難しそう。

みんな腰が低いな。 

私は当時も、今も、これからも『自分を見つけて雇える企業はラッキーだ。』くらいのスタンスでいたい。数あるオファーの中から自分で選ぶくらいの自信を常に持っていたい。

じゃないとやっていけないだろう。

数社へ面接へ行き、それぞれに『貴社が一番』と言い、第一希望の場所に選ばれなかったら、とりあえず雇ってもらえる会社に身を置く。何年も不満を漏らしつつ。

違和感でしかない。

しかし、大半の人は「周りのみんながしていること」だから深く考えない。

スペインの大学に通いながらも、SNSを開くたび見えるあまりの就活色に、私もしなければならないのかな?した方が良いのかな?と思ったくらいなのだから、あの雰囲気は相当だ。

 

【もし働くなら?】
就活生気分で日本の魅力的な企業を探した。

唯一、惹かれたのは二社。

・電通

・リクルート

(ちょうど電通に問題が発覚し、悪いイメージが社会に広がった時期だった。)

もちろん、海外に支店がある大手企業も見た。しかし、どこも研修を受けたのちに配属先を発表だとか、数年は東京にいないとダメだとかで、私が思い描いていたイメージと異なった。だから選択肢から消えた。せっかくスペインの大学で学んだ知識と言語の強みがあるのに、活かせないのでは何の意味もない。

それから好きな二分野「言語」と「写真やビデオの撮影&編集」が合わさった仕事も楽しそうだと思い、

・CM制作会社

・出版会社 (旅行雑誌やガイドブック)

も、候補になった。

大の文具好きでもあるため、

・KOKUYO

・パイロット

も、候補に入れ、計6社に。

ここまでは家族に相談することなく、一人で「良い会社あるかな〜」くらいの気持ちで探していた。案外、楽しかった。クラブ活動をどれにしようかウキウキしながら迷っていた小学校高学年の頃のようだった。

ただ、やたら『新卒』という言葉が目についた。

採用のHPを読んでいると、まるで卒業してすぐの子以外は中古として扱われるような印象を受けた。中途採用にキャリア採用。第二新卒というワードもよく見た。

スペインと違って、余程のことがない限り、共に入学したメンバーと4年後、卒業式の日を迎えれるというのに。その『安定』がありながらも、ここにこだわるのは変だ。と、思ったが、そんな意見を持って行く場所はなく『新卒』枠に入るためには今年応募すれば良いのか、来年になるのか、考えを張り巡らせた。

【完全に就活が消えた日】
私は昔から新しいことを始める前、決まって母と祖父に相談をする。…相談というよりプレゼン。メリットとデメリットを書き出したり、見込みと問題点を挙げたり、したいことを明確に伝えた上で、二人の意見を聞く。まずは母にチャットで、次の二点を伝えた。

・日本の友達が就活していること

・面白そうな企業があったこと

すると、こう言われた。

『自分で何かすれば別に就活なんてしなくて良いんよ。楓は誰かの元で働くより、自分の力で立ち上げる方が楽しいと思う。そもそも日本の大学を出たメンバーと働ける?スペインでの経験をそこで活かせる?活かせんやろ。』

「あ、そっか!経験とスキルを積めば雇われなくて良いんか!」と自分の中で何かが動き…今に至る。

「日本に留まっていられない。」

その日、『就職活動』という四文字が頭の中から完全に消えた。

愚痴を漏らすのは、やりたいことをやれていないから。なぜ出来ていないか。それは、社名や給料で働く場所を選ぶから。

大学へ行くのであれば、もっと真面目に学問に励み、学びの面白さに気付くべきである。そうすれば「自己」をよりハッキリさせられる上、国内外で通用するスキルが身につく。

その過程を経て、

自分にしか出来ない仕事が持つ魅力: 想像を遥かに上回る『やりがい』と『楽しさ』を感じれるようになる。

つぶやき 記事一覧

バルセロナ生活 記事一覧

おすすめ記事:

【価値観とは】スペイン語と日本語の概念の狭間で。

私の脳はきっと、

・日本語

・スペイン語

・その他の言語 (英語、イタリア語、カタルーニャ語)

で、分かれている。

哲学という分野は、唯一100%スペイン語の脳で学び、極めた分野である。だからふとした時に日本語脳内の「概念」との矛盾に気づくことがある。

その良い例が『心』という言葉だ。(これについては別記事:【言葉選びのセンス②】日本語の美しさは曖昧さにある。を。) 『心』はスペイン語に翻訳出来ないため、よく日本文化にまつわる本には "kokoro” とそのまま表記されている。

近い単語を挙げるなら、

"mente" (頭にある心/精神)

"sentimientos" (感情/気持ち)

"alma" (魂)

"corazón" (心臓/心)

"psique" (生命に宿る息/魂)

"espíritu" (精神/心の働き)

だが、どれもしっくりこない。

最近。

数日前から「あれ?」と、調べている言葉がある。タブの数が増えすぎて、2画面に突入してしまったほど「?」のスパイラルの中にいる。

f:id:kaedetaniyoshi:20200211210436j:plain

それは『価値観』

今日はこの概念を整理する。

f:id:kaedetaniyoshi:20200211050144j:plain

【価値観とは】
私たちはよく会話の中で『価値観』という言葉を使う。

「彼は価値観がとても似ている人」

「あの人とは価値観がどうも合わない」

日本語では『考え方』と似た意味で用いられる。自己・仕事・恋愛・結婚の話をする時に度々登場するワードだろう。

「彼女とは価値観の違いで別れた。」

と聞くと、

金銭感覚、結婚観、趣味、優先順位、ライフスタイル、人生のゴール のいずれかが違ったのだと推測する。

…これは私の中にある日本語の『価値観』の概念である。

 

スペイン語で『価値観』は "valores"。直訳すると「価値」であるが、道徳的なというニュアンスを含む。哲学の世界には "valores humanos" (人間的価値観) という言葉が存在する。しかし、これは「倫理観」に近い意味で使われている。多くの国や文化が「正しい」と判断する価値のことで、賢明、尊重、感謝、謙虚、責任感などが、その例だ。

もし「スペイン語で価値観を説明して」と言われたら私は、日本語の脳にある概念 (金銭感覚・結婚観・考え方) とは違う、下のような説明する。

価値観は大きく二種類に分けられる:

① 相対的価値観 

② 絶対的価値観

①は主観的で「個人的/文化的価値観」と言い換えられる。これは、個人のこれまでの生き方、育ち、教育環境、経験によって異なる。②は客観的で「本質的な価値観」とも言え、誰にも何にも依存していない域にある価値を指す。詳しく説明しようとすると形而上学や神学の方へ話が進むので今日は割愛。

閑話休題。

より日常的な話へ。

スペイン語で、

「彼女とは価値観の違いで別れた。」

は、どう言うか。

私なら "Nos separamos porque su manera de pensar era muy diferente a la mía." とか "...era muy diferente a mi manera de ser." と、"valores" を使わずに表現する。

意味は「彼女の考え方 (在り方) は僕のとすごく違っていたから別れた。」となる。

 …しっくりこない。

「心」という言葉の翻訳の難しさと似ている。

確かに『価値観』は『考え方』の類語かもしれないが、私たちは多くの場合「何を大切と考えているか (優先度)」もしくは「価値を見据えた物事の捉え方」と解釈する。だから "manera de pensar (考え方)" や "manera de ser (在り方)" は、日本語で理解している『価値観』とリンクしない。ほとんど意味は同じであるが『考え方』=『どこに/何に価値を置くか』ではないから。

f:id:kaedetaniyoshi:20200213224108j:plain

ウィトゲンシュタインの言語ゲームのよう。考えれば考えるほど深くなる。

「あ、この人の価値観は私のに似てる」と思うあの何気ない瞬間、実はすごく経験的な偶然が重なっているのだろう、と思う。 

価値観、とは...。

 

【あとがき】
日本語で価値観について調べると「恋愛」のページにしかたどり着かない。なぜだろう。(ここ数日の検索履歴を誰かに見られたら絶対に悩んでいる人だと思われるほど。) その中で一つ目にとまったフレーズがある。

『価値観がズレ始めた』

タイトルを見て「なぜ?ズレるってなに?」と思い、いくつかのサイトを読んだ。

ズレる…?

もちろん、一人一人違うのだから「差」はある。ぴったり全ての価値観が同じ人はいない (と思う)。しかし、早い段階からお互いの過去、考え方、大切にしたいもの、お金の使い道、将来の夢、理想の家族像などを、ゆっくり話す機会を持てていれば「ズレ」は生じない (生じにくくなる)。ズレたとしても、互いを尊重し合えていれば大丈夫。

➡︎ これは私の意見/考え方。

「好き」という感情と同じくらい「尊敬」出来る相手が良い。

➡︎ これは自分が重要だ (価値がある) と思っている要素だから価値観。

= 考え方と価値観は別。

以上を結論とし、全タブ閉じる。

つぶやき 記事一覧

スペイン語 記事一覧

言語学や言語比較 記事一覧

おすすめ記事:

【進路に悩む人へ】一度も「無理だ」と言ったことがない3つの理由。

【前書き】
私がこれまでに進路カウンセリングをした方々は、誰一人として同じ悩みを持っていなかった。人の数だけ迷いの種類がある。

最も興味深いのは、現役高校生は「進路に対する不安」を口にしないということ。みんな期待を胸にキラキラしていて、私まで楽しくなる。

17-18歳と20代前半。

数字で見ると然程、年齢の開きを感じることはない。が、この「3-4歳 (3-4年)」で一気に迷いが増えるようだ。

スペインとイタリアの大学の友達は、4年で卒業しなければならないという焦りも、将来に対する不安も抱いていない。そういうテーマを振っても「将来を今悩んだって無駄だよ」「今が楽しかったらそれで良い」「焦らなくてもじきに就きたい仕事は見つかる」と、余裕な答えが返ってくる。

なぜ、日本人20代前半は進路に悩みやすいのか。お国柄を除いて、浮かぶ要因は2つ。

① 心理的要因
➡︎ 日本は、大学を卒業する年齢・就職する年齢が揃っている上、スペインよりも「結婚」が早い。あらゆる基準のせいか、自分と周りをやたら比べたり、家族からの期待が焦りに変わったりしやすい。

これは仕方がない。

19歳〜22歳を日本で過ごしていたら、この「みんなと同じ〇〇歳で△△をしなければならない」風潮に染まってしまう。そのため、将来を具体化する時に、自分のしたいことを諦め、無難だと思われる道を選ぶ人が非常に多い。

一方で、スペイン社会は、自分のペースで新しいことを始めるのに寛容である。それゆえ、大学を始める年齢が28歳であろうが65歳であろうが周囲の人から「え?」という反応をされることはない。普通だから。

・みんなと同じ安心感
・自由かつ自立的な余裕

果たしてどちらが「良い」のか。その答えは、国ごとに人ごとに変化する。

② 社会的要因
➡︎「周りと同じことをすると安心」は、一種の文化心理である。20歳〜24歳。このあたりから知らぬ間に日本社会のエスカレーターに乗ってしまい、年齢が26歳、30歳…と増すごとに、降りづらくなる。衆目を意識し、リスクを恐れ、出せたはずの勇気も消えてしまう。そして目の前の現実に不満を漏らす。自らが選んだ道であるのに。

『未知だから』という理由で踏み出せない一歩は、違う。この世界、未知で溢れている。私は「前例があるから安心」と、選ぶ道の方がリスキーだと思う。

日本人の協調性は、どこの国へ行っても誇れる。しかし、小さな島国にある共通のものさしだけで全てを測っていけない。

日本の大学かスペインの大学か

〇〇学と△△学どちらを専攻するか

スペインの大学進学か就職か

日本の大学 (専門) を中退するか

今から始めて年齢的に大丈夫か

お金か時間か卒業資格か

【本題】
進路に悩む方へ対し、一度も「無理だ」と言ったことがない3つの理由。

その① 不可能を可能に変えたから
スペインで進路カウンセリングをしている日本人は、私だけではない。お会いしたことはないが、どの方も私よりはるかに在住歴が長いだろうとイメージしている。もしかすると「24歳に何のアドバイスが出来るんだ」と思われているかもしれない。 

読者の方からいただく感想や相談のメールの中には、ある一言がきっかけで「スペイン進学を諦めていた」という声もある。もちろん、協会名や都市名は伏せるが、

某留学エージェントに在籍する〇〇在住の日本人の方に相談すると「スペインの大学は無理だから日本の大学にまず進学する方が良いですよ。」というアドバイスをいただき、一度はスペイン大学進学を断念。しかし、楓さんのブログを読み、希望が持て、メールを…

これは、2014年に、私が18歳の時に、バルセロナの日本大使館で言われた言葉と全く同じである。夢と希望で満ちた高校生にまだこんな適当なことを言っている大人がいるのかと、非常に情けなく、残念な気持ちになった。

これは、アドバイスじゃない。

自分の知らないこと、経験がないこと、面倒なことは全て「無理」とか「リスクが高い」と判断して、無難な回答をしたつもりになっているだけである。誰かの夢を夢じゃなくしてしまうくらいなら、はっきり「分からない」と言えば良い。

いくらスペインに何十年住んでいても、入試を受けた経験がない人は、対策が出来る専門の学校があるということさえ知らない。しかし、これは私たちが、日本に外国人用のセンター入試があるのか、対策コースがあるのか、を知らないのと同じである。

結果的に、

その冷たい一言にショックを受けた1年後、私はバルセロナ大学合格を手にしていた。「不可能」ではなかった。スペイン語がゼロの状態の人でも十分実現可能な目標であった。

そこで感じたのは、年齢=経験値の高さではないということ。マイナスな意見を言われても気にしなくて良い。

人選びが重要である。

カウンセラー、先生、先輩、在住者、友達

誰かの元へ話を聞きに行く時、会う前と後の自分の気持ちに注目してみてほしい。会う前よりもモチベーションが1mmでも下がっていたら、その人に今後相談する価値はない。何のために行ったのか分からない。

自分を良い方向へ引っ張ってくれる人、プラスになると思う人の話だけ聞き入れよう。だがそこで、全てを丸呑みにしてはいけない。最後は、自分自身。

その② 人生は長いから
自分の専門性を見定める期間、大学進学に迷う期間というのは「ほんの一瞬」である。22歳から26歳まで (5年間も!) 悩み続けたとしても、人生全体で見ると下の黄色い部分にしか過ぎない。だから数ヶ月の迷いなんて「点」の域。

f:id:kaedetaniyoshi:20200209040033j:plain
「時間」を経ると自分のやりたいことや興味は当然変化する。新しい景色が、世界が、角度が見えてくる。

もし、新しい分野に挑戦しようか悩んでいる人がいるならば、次のような話をする。

《悩み》これまで言語を専門としてきた。けれども最近、写真/映像メディアに興味を持ち始めている…。学部どうしよう。

➡︎ これから大学で写真映像を専攻し、仕事に繋げれば、言語を学んだ期間を優に超えるのだから、過去の専門に左右されることはない。これまでの学びも必ず活かせるから、今の「興味」を優先すれば良いと思う。私なら自分の好きな二分野の両スキルを身につけ、そこから何が見えるか。あとは未来の自分に任せる。

例:
18歳〜22歳: 言語 (5年)
25歳〜30歳: 写真 (4年) + 31歳〜写真映像の職

文系理系の枠を超えた進路変更をしたとしても、大したリスクはない。どんな二分野であっても、リンクさせられる。異なるジャンルであればあるほどオリジナリティが増し、面白い人生になると思う。

ポイントは、自分の「好き」をよく見極めて、努力を怠らないこと。まさに、好きこそ物の上手なれ。自らが興味を持ってやりたいと思ったこと、好きなこと、というのは驚くほど伸びる。そして、楽しい。

長くなってしまったが『今まで一度も〇〇を専門に学んだことがない』としても、これから始めれば、一生の強みにもなりうる。と、言いたかった。自由自在に選択が出来る『若さ』は、20代の特権。

 

その③ そんなに高い壁ではないから
スペインの大学進学を「未知な域」と捉えている人が非常に多い。が、これは何においても同じ。試してみたことがないことは全て未知。当たり前。しかし「未知=難しい」ではない。

アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスの大学に比べ、スペインの大学正規入学はあまり聞かない。

この理由は経験者が少ないだけ。

同調現象。

バンドワゴン効果。

マイナーとも言えるこの道を考えている人たちは、そのイレギュラーさに自信を持つべき。スペイン語に目をつけたあたりも素晴らしい。

入試を「難しい」と判断するには、まだ早い。まずはスペイン語を中上級レベルまでUPさせる。対策コースを始め、一生懸命学んでみて、受験をしてみて、それから密かに振り返れば良い。今、想像しているほど高い壁ではないはずだ。

迷ったら、やる。

つぶやき 記事一覧

スペインの大学情報 記事一覧

スペイン留学 記事一覧

おすすめ記事: