自分と異なる国籍であると思われる相手に話しかける時、ほとんどの人は英語を使う。
バイリンガルやトリリンガルであれば、サッと「相手が話しやすい言語」に切り替え、より会話を楽しむことが出来る。お互いが伸ばしたい共通の外国語で話すことだって出来る。
…日本を一歩出ると、世界は多言語話者で溢れているのだ。
相手がスペイン語圏出身ならスペイン語に、イタリア人ならイタリア語に、バルセロナ出身ならカタルーニャ語に切り替える生活。
その姿を見た家族や友人は決まって「頭の中、どうなっとん?」と不思議そうな顔をする。
この脳の動きを、万人に通ずる何かで例えたい。どうやって分かりやすく説明しよう?
【日常生活における4つの例】
① 料理中
コンロ、レンジ、オーブンをフルで使っている感覚。パスタを茹でながら、フライパンでソースを作りながら、オーブンを温めながら、レンジでお肉を解凍しているような。
② 運転中
前の車が車線変更で自分の前に入ってきそうな感じがしながらも…、歩道と自分の車体の間でスピードを合わせてくるバイクが気になっているような。トリリンガルはそれに加えて、目的地までの最短ルートを同時に考えている感じ。
③ パソコン作業中
タブを複数開いて、同時にいくつもの書類やブログの記事を書き上げているような感覚。音楽を聴きながら勉強に集中する、という例は少し違う。音楽を聴きつつも、集中のほとんどが勉強にいっているから。
④ ピアノ
両手で異なるメロディーを弾きながら、ペダルも使いながら、頭ではどんな転調が合うかイメージしている感じ。
➡︎ つまり、バイリンガルやトリリンガルの脳の動きは「同時作業」に似ている。
どの例においても言えるが、それぞれの作業は独立しているため、数が増えても混ざることはない。言語も同じ。
【あるテスト】
下の「文字」じゃなくて「色」を声に出してスラスラ言う時の、脳の動きも似ている。
赤 緑 白 紫 黄 緑
青 黄 黒 赤 緑 青
余計な情報や刺激を無視しながら与えられた課題を遂行していくテスト。多言語話者は、これをこなすスピード&点数がモノリンガルに比べ、圧倒的に高い。素早く、確実。
【多言語話者になって生じた変化】
一つの作業だけに集中することが無くなった。(出来にくくなってしまったのかもしれない。)
・仕事の書類は常に複数同時に作成 (進行)
・開いているPCのタブの数は平均15
・ブログの記事を3,4本同時に書く
・電話カウンセリングで助言や提案をしながらパソコンでその人に合った書類を作成 (この作業と同時通訳は使う脳の二部分が全く同じ気がする)
など。
『〜をしながら〇〇』が明らかに増えた。しかし、集中が散漫になっているわけではないため、プラスの変化と言えるだろう。
【この分野が好きな人】
脳科学/認知心理学/言語学に興味がある人は、
・Paradigma de Eriksen
(フランカー課題)
・Efecto Stroop
(ストループ効果)
・Efecto Simon
(サイモン効果)
あたりが面白いと思う。
【誰でもなれる】
語学は生まれ持った才能ではないため、誰でも習得可能。大事なのは、かける時間や年数ではなく、気持ち。日本人の義務教育期間で習う英語が良い例だ。
そして、独学の言語習得にはどうしても限界がある。コミュニケーションがあってこそ。
数ヶ国語の文法を完璧に理解している人が発する『HOLA!』より、語学学校やスーパーで勇気を出して発した『HOLA!』の方に意義を感じる。語力証明書よりも、誰かから言われるひとつの『GRACIAS』を大切にしたい。
異国の地でゼロから築いた人との繋がりは一生の宝となる。
【言語とコミュニケーション】
外国語が話せないと、外国の人とコミュニケーションが取れないのか。
先日「かえでさんは、最初の頃、言葉が話せない状態でどのようにコミュニケーションを取っていましたか?」と質問をもらった。
『分からなくても笑顔でいることが一番大切。私はさっぱり理解出来ず、困ったとしても、決してそれを顔に出さなかった。とりあえず相手の言った最後の言葉をリピートして、きちんと聞いているアピールをすること。どうにかして言葉のキャッチボールを続けること。…英語もスペイン語も、ある日突然話せるようになるのではなく、一単語一単語、学んで行くのだから、心配しなくて良いよ。』と返した。
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