BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活10年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。

【レトリック】専門用語を使わずにどう面白さを伝えるか。

難しい言葉を使うことなく、自らの専門の魅力を誰かに伝えることは可能なのだろうか?会話が膨らんだ勢いで、タクシーの運転手さんや庭師さんに「哲学」の面白さを伝えようとしてみた時の話を。

【相手の関心】
見ず知らずの年上の方と二言三言交わすと、たいてい「海外在住」であることがバレる。大学、仕事、普段の生活の話になると、『スペイン』や『イタリア』というワードが自然と口から出るからだ。…すると、お決まりの質問が飛び交う。

なんでスペイン? 

スペインはスペイン語?

なんでスペイン語に興味を?

ひとりで行ったの?

不安はなかった?

ご両親は心配されなかった?

もうスペイン語はペラペラ?

スペインの食べ物はどう?

お米はある?日本食は恋しい?

家では日本食を作る?

あちらでは何のお勉強を?

どんなお仕事を?

名前を言うのと同じくらい答え慣れた質問たち。本当に自分の話に興味を持っているのか、お愛想で「すごい」と言っているのかは、容易に判断がつくようになった。

後者の場合、「スペインどうですか〜?」と言われても、私は自分のことを一切話さない。表面的なやりとりは、気が進まない。

前者の場合は、楽しさを感じるため、丁寧に答える。そしてこちらからも相手の興味を探る。どのジャンルに関心を持たれているか。

・習慣の違い
・言語
・思想
・宗教
・海外生活
・異文化

同じ時間と空間をシェアする上で、その方にとってプラスの時間になればいいなと思う。

あの日の運転手さんは素晴らしかった。「その質問は、素晴らしいです」「良いところに気づいてくださいましたね」と、言葉にしてしまったほど、知的な返しをたくさんしてくれた。

スペイン語…「今日は晴れていて気持ちの良い天気だから、これから私たちは温泉に行きます」は、どう言うんですか?どんな感じなのか聞いてみたいです。外国語は全部同じように聞こえるかもしれんが(笑) ちなみにイタリア語でも同文で聞きたいです!

失礼ですが正直なところ、「哲学を学んでいる人=変人」だと思ってしまいます。(笑) 宗教とは違うんですよね〜?どんなことを習うのですか?

哲学部に入学してそこで数年、勉強しようと考える集団、クラスメイトたちはやっぱりどこか特殊だと感じますか?どういう時に?

面白い会話になりそうだったから、目に見えない『考える魅力』をシェアした。専門用語を一単語も使わずに。

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【3種のレトリック】
私が哲学の魅力を伝える時によく使う3種類のレトリックは、

① 相手に身近な例を数多く挙げる。

② 相手に答えを言わせる。

③ 様々な角度から本質へ迫りつつ、メインの展開を少し先延ばしにする。

 

【小話1: 異文化と言語と概念】
 「言語哲学」と言っても、さらに何十と種類があるのですが…。さっき、スペインとイタリアの文化の違いをお話したので、それ関連でいきますね。

『ドア』を思い浮かべてください。玄関やお店の。

もし私がこの『ドア』という言葉の前に形容詞をつけてくださいと言うと、何を挙げられますか?3つ。

例えば、「緑のドア」…何でも良いですよ。

「木のドア」「頑丈なドア」「自動ドア」

同じ質問を色々な国の人に行うと、ある特徴が見えてくるんです。「石のドア」「重いドア」「分厚いドア」と答える人の割合が高い国もあれば、 「カラフルなドア」「郵便受けがついたドア」「ステンドグラスが埋め込まれたドア」と答える人が集中している国もある。「重い」や「さびた」という形容詞とドアのイメージがリンクしない国もある。「両開き」「鎖がついた」…多国籍のメンバーが集まる場で聞くと、案外かぶることなく次々と挙がるものなのです。何となくその土地の風土が想像できますよね。

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ちなみに、スペインの玄関のドアは、開く時にちょっとしたテクニックがいる場合が多いんですよ。私の家は、鍵をひねりながらドアを持ち上げるようにして押すタイプで…。鍵も、日本と形が違うんです。イタリアの家の中にある鍵 (洗面所や部屋) は、一度閉めると開けるのが大変で…。しょっちゅう閉じ込められます。

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文化や、風土によってこんなにも「言葉から浮かぶイメージ」や「ものそのもの」が違うのに…。本当に会話は成り立つものなのでしょうか?

外国語は、ただ話せるだけではダメなんです。その国、文化、社会にある意味のルールを自らの経験を通して理解していないと。

哲学の主なテーマは、ドアの例のような身の回りにある『当たり前』です。

そもそもモノって何だろう?

目に見えない「痛み」「気持ち」「味」は…本当に分かり合えているの?

神様のような絶対的な存在を信じる宗教より、範囲が広いんです。祈りや儀式ではなく、考える筋道や根拠をベースに物事の「正しさ」を追求していくのが哲学という学問です。

(…目的地に到着。)

 

【小話2: 知識とは】
2020年の夏の終わり、庭師さんと立ち話をした。話に花が咲いて2時間弱。大学の話になった時、「哲学」に良い反応をしてくれた。しかし、具体的なイメージを持っていないようだった。

私はその日、母からプレゼントしてもらいたての時計を左手首につけていた。それを使って、知識について考える問題を出してみた。

では1分で、哲学の深さを伝えますね。

〇〇さんは今、何時なのか全く検討がつかないとします。携帯も時計もない。辺りを見渡しても何もない。その時、私が腕時計をつけていることにふと気づきました。針が18時15分をさしているのを見た〇〇さんは、何を思われたか…そうです。「18時15分」ということを『知り』ました。でも、実はこの時計、おとといから止まっていたんです。でも、たまたま、本当にその瞬間は「18時15分」だったんです。偶然にも。

この場合、時計を見て「18時15分」を『知った』と言えるでしょうか?

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