BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活11年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。

【感謝の対象】縁という言葉がないこの国で。

2020年9月。日本からバルセロナに戻ってくるタイミングで、私はピソのお引っ越しをする予定だった。帰国前の7月に物件の見学も支払いも済み、やっと家探しから解放された。オーナーとは2回も会って話をし、良い印象を抱いていた。

あっという間に時間が流れ…

そろそろ荷造りを本格的にしないとな、とカレンダーの日付に目をやったその日は日本を出発する2週間前。新しいピソのオーナーからメッセージが届いた。

「久しぶり、元気?話さなければならないことがあるから、都合が良い時間を教えて」

8月は、寝ずに仕事と勉強をする日が続いたほど忙しかった。しかも時差が7時間もあるため、電話をするには時間がかなり限られた。

結局、お互いの都合が合ったのは、出発1週間前。(もうデータを消したから正確な日数は覚えていない…。)

日本の早朝4時、電話がかかってきた。

「…あの家、住めなくなったんだ」

またしてもトラブルが発生した。

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【トラブル発生】
この記事のテーマはピソのトラブルではないため、何が起こったのか、詳しい内容はカットするが、支払いも契約も完了していたのに、私は住めなくなってしまった。予想もしていなかった『出発1週間前に家がない状態』に陥り、こんなギリギリにどうしよう、と焦った。最後の1週間は、祖父母とゆっくり過ごしたかったのに…。

残された時間はあと6日。

結局、出発直前まで私は家を探し続けた。

仕事の一貫で、バルセロナの中心部の物件は全てと言っても過言ではないほど、調べ上げていた時期だったため、幸いにもゼロからのスタートではなかった。

しかし、やりとりをするのに時間が足りない。時差がある上、返事が数時間以内にもらえる物件は、15分の1。

…家探しをしたことがある人はなんとなく分かるだろうが、気に入る物件なんて、そう上手くは出会えない。

出発4日前、消去法で残った物件の数は、

一人暮らし用: 3ヶ所
シェアハウス: 3ヶ所

…いずれも100点の条件を満たしているわけではいなかった。12月までしか住めなかったり、シェアだったり、部屋についているバスの空間が狭かったり、通りの雰囲気があまり好きじゃなかったり。

でも、とりあえずどこか決めなければ…。全てにメッセージを送ろうか…。いや、でもこれで「いいよ」と言われても…数ヶ月も住めるかな…。やっぱりもう少し他を見よう。

を繰り返し、…出発2日前。疲れを感じながらもいつも通り「最新の物件を表示」のボタンを押して検索を始めようとした時だった。

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「あれ!?」 

 

私が前に2年間住んでいた好きな物件がちょうど14分前にアップされていた。家探しサイトからではなく、直接メッセンジャーの履歴をさかのぼり、チャットを送った。

すぐに良い長文返事がもらえ、10月から住めることが決まった!既にお金の信頼もあるし、お互いの性格、生活スタイル、綺麗度合いも知っている相手。信じられないくらい嬉しいと、喜んでくれた。

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9月19日から10月1日まではホテル生活をした。

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【2020年10月1日】
待ちに待ったお引っ越しの日。3年ぶりにメルセーと再会した。生活リズムが真逆なため、家で会うことは1日1-2回、シェアする場所はキッチンのみ。引き続き「ほぼ一人暮らし」が始まった。

荷物運びを終えて、コーヒーを淹れて、言葉を交わした。

一応、来年の春までという契約にし、再びコンタクトを取るに至った経緯を全て話した。そして会話の最後に「縁だなって思ったよ」と、言おうとした。

でも、スペイン語には『ご縁』という言葉がないことを思い出した。最も近い類語は「運命」または「神様のおかげ」…それと言いたいことは違う。

2秒ほど間が空いた。

そこでメルセーは、こう言った。

「これは絶対、お父さんが助けてくれたの。絶対そう。私を守ってくれたの。…KAEDEがこの家を離れてからも一緒に住んでいた日々が最高だったっていつもお父さんに話してたし、KAEDEの人柄を彼もすごく気に入っていたからね…。ずっと泣いてばかりで凹んでた私を救ってくれたんだわ…。チャットをくれたあと嬉しくてすぐに何人もの友達に報告したのよ〜!本当に信じられない!」

メルセーのお父さんが2020年の4月に亡くなってしまったことを聞いた。…5-6年前を思い返した。会うと必ず笑顔になるような、すごく温かくてユーモアに溢れた人だった。また会いたかった。

そんな風に言ってくれるなんて…連絡して良かった、と心から思った。 

 

縁という言葉がないこの国では、今回のメルセーのような感じ方をする人、自らの守護神 (聖人) が「守ってくれた」「お恵みをくださった」と捉える人がいる。もちろん、「神様のおかげ」とか「2人の運命」と考える人もいる。

私は幸いにも、まだ大切な人を亡くした経験がない。

その日が来てしまった直後に『良いこと』や『運命的な出会い』があったとしたら…離れて生きるようになってしまったその人が感謝の対象になるのだろうか、と疑問を抱いた。

まだ知り得ない感覚なのだと思う。

きっと、縁の概念と繋がるような新しい感謝の気持ちが芽生えるのだろう。悲しみと引き換えに。

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