コロナ予防がすっかり日常化しているイタリア。
・人と話す時は、2mほど離れて話す
・挨拶のハグやキスは無し
・買い物へ行く時は、マスクとゴム手袋を着用
・スーパーは中へ入る時、人数制限が設けられている ➡︎ 連日長蛇の列 (待つ時も前後の人と間隔をしっかりあける)
『人との接触を避ける』という概念がみんなの頭に定着し、街中から溢れ出ていた陽気な話し声と笑い声がピタッと止んだ。
それもあり…
近所の人でさえ一瞬、挨拶をためらう。
挨拶しようかな?どうしようかな?話しちゃだめだもんな…
イタリアの近所付き合いは「こんにちは!」の一言で絶対に終わらない。そこから数分、長い時は数十分、立ち話を楽しむ。毎回。だから…ためらう。
【今日の小話】
2020年4月4日(土)午前10時過ぎ
とても天気の良い小春日和。動きやすい短パンとタンクトップに着替え、朝から家中の掃除をした。
「おーわった!」
雑巾を洗い、外に干しに行こうとした。
…が、少しこましな服装に着替えることにした。変な格好をしている時に限ってバッタリ誰かに会うから。とは言え、ドアを開けて『一歩』外に出るだけ。玄関を出てすぐ左に「ちょっと干す用のイス」を置いているから、そこに雑巾をかけるだけ。
でもまあ、念のために…。
トレーナーをかぶり、
短パンの上からジーパンを履いた。
本当に3秒、外に出るだけ。だからチャックもボタンも閉めずに「履いてる風」で玄関のドアを開けた。完全に「履いてる風」で。
すると、
視界の端っこに人の動きが…。
!!!
タイミングが良いのか悪いのか。
隣に住んでいる50代後半のおじさんがちょうど車に乗り込もうとしている瞬間だった。2人の距離は、5,6m。
挨拶して良いかな、でもこの格好で近づいてこられたらマズいな。…今更急いでチャックとボタンを閉めるのもなー。…まあ、これからどこかへ行くっぽいし、この時期だから挨拶だけで終わるだろう。
私は顔をあげ、
『Buongiorno (ブオンジョルノ)』
と朝の挨拶をした。
おじさんは笑顔で「Buongiorno!!! Come va?! (ブオンジョルノ!コメバアー?)」=「おはよう!元気かい?」と、開けたての運転席の扉を閉め、こちらへ向かってきた。既に着用していた大きな立派なマスクを、顎までズラし…
あら!こっちに来るん?!私のチャック…いやズボン全開よ(笑)
と、自分で笑いそうになりつつも、動揺を見せることなく普通に応えた。
近づいてくるおじさん。…何かがおかしい。
あれ?こんな髪型だっけ?(笑)
髪の毛が。
ボサボサでも、
ハゲかけでも、
フサフサでもなく。
半分だった。
(笑)
明らかに散髪の途中。
左右対称の正反対にある言葉がしっくりくる髪型だった。
100歩譲って『寝癖』
いや、ニワトリの『とさか』
だから触れることなく会話をした。二言三言で終わらないと察した私は、普通の顔で、当たり前のように堂々と、ズボンを正しく着用した。これで話に集中出来る。
スペインと同じく、イタリアも新規感染者数が順調に減っていること。イースター休暇後まで移動制限が延長されること。5月半ばまで自由な生活は送れないだろうということ。日本はまだ危機的な状況にはなっていないものの、油断は禁物ということ。
一通り話し終えたあと『で、どこに行こうとしてたの?』と聞いてみた。「ああ、そうそう!さっきバリカンで自分の髪の毛を切ってたらバッテリーが無くなっちゃって!半分しか切れてないんだよ。だからこれから買いに行こうと…。」
(笑)
(笑)
笑いながら言われていたら、一緒に笑い、確実にツッコミを入れた。でも、超真顔だったから、これは笑ってはダメだと思い、堪えた。『相手は相当困っている』と自分に言い聞かせ、会話を続けた。ちなみに、視力があまり良くない私が5,6m離れたおじさんを見て、髪の毛の違和感に気づくほど、明らかな半分状態だった(笑)
『でも、電器屋さん開いてないよね?』
「そうなんだよ。だから大きいスーパーに行って、電気系の売り場にあるかどうか見てみようと思ってて。」
『ああ、それが良いね!』
私の頭の中では言葉とイメージの連想ゲームが始まっていた。
大きなスーパー ➡︎ 人が多い ➡︎ 長蛇の列 ➡︎ しばらく並ぶ ➡︎ 長時間その髪型を多くの人に見られてしまう
『お昼時になると混むだろうから早く行った方が良いよ!』
「水とか食べ物は大丈夫?買い物が必要ならいつでも言ってよ!車あるからね!」
『ありがとう!またね、良い日を!』
「良いお昼ご飯を!」
と、会話は終わった。
...バッテリー、あったのかな(笑)
こんな状況下でも、どんなに困っても、切羽詰まっても、周りをきちんと見れるイタリア人。他者の心配が出来るのは、心に余裕がある証拠。
【おまけ】
載せた写真のようにイタリアのマスクがすごい理由は、2つ。
① 日本と違って着ける習慣がなく、身近なお店に簡易マスクの品揃えがなかったから
② 鼻が高いから
後者は独自の考察。イタリア人の仲の良い友達ともこの前テレビ電話で話した。「小さくて可愛い鼻」と笑ってきたあの日のお返しとして、立派な鼻を褒めておいた(笑)
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