2020年3月10日(火) 現在、大学を含むイタリアの全ての学校は閉鎖されている。そして、北だけでなく全土に「移動制限」がかかり、今日から私は身動きが取れなくなってしまった。予め発表があれば、バルセロナに戻っていたのに。
…まあ、今更そんなことを言っても仕方がないので、今ここで出来ることを最大限にしながら、解除される日を待つ。
今日はつい最近、大学で「ああ、これがコロナが広がった理由ね…」と思った出来事について書こうと思う。これまでなら「やっぱりイタリア人だな」と笑えていたお国柄なのに。完全に裏目に出てしまっている、という話。
挨拶のキスやハグが第一の理由ではない。
2020年2月23日(日)
コロナウイルスの影響で、急遽、2月最後の週に予定されていた期末試験と卒業式が1週間延期に。
2020年3月4日(水)
試験があった。私はイタリアの大学の3年前期の単位を全て取り終えたため、後期が始まる日まで学校へ行く用は無くなった。待ち時間に、カラブリア州の1人目の感染者は、カタンザーロ (州都) の大学の教授だと聞いた。そこから通っている友達がたくさんいるのだが、うち1人が「その教授の授業、この前まで弟が受けてたのよ!」と。…急に他人事ではないように思えてきた。
この日の夜…。
「イタリア全土の学校を休校にする。」
という政府の政策がニュースで流れた。Yahoo! JAPANのトップにもなっていた。しかし、当初、この「学校」に「大学」は含まれていなかった。だからその報道を見た大学生たちはすぐさまSNSで盛り上がった。
「アリエナイ」
「受け入れられない」
「最高じゃん」
普通に翌日も試験は行われた。いつも通りにぎやかな食堂でお昼を食べた。後期の授業は、3月9日(月)から始まると言いながら。
2020年3月5日(木)
夜「感染拡大防止のため、食堂は3月15日(日)まで閉鎖。後期の授業開始および登校再開は3月16日(月)から。」と、大学から連絡が入った。
食堂は、週末も、お正月も、クリスマスも、どんな祝日でも、365日開いている。それなのに「閉鎖」は驚いた。これを受けて初めて生徒は「事の深刻さ」を実感し始めた。
イタリアの大学には卒業式が年に10回以上あるのだが、2月末に予定されていた式は延期で、3月6日(金)に行われることになった。いくつかの条件付きで。
① 式の間、生徒と生徒の間隔を広く取る。
② 会場に立ち入ることが出来るのは生徒のみ。
③ 保護者および親族は入場不可。感染拡大を防止するため、来場も控えるように。
しかし、この国の卒業式は、理解し難いレベルに盛り上がる。…とにかく超特別な、一大イベントで、両親だけでなく、親族が全員大集合する。近所の人が来ることもある。
両親、兄弟、祖父母、従兄弟、叔父と叔母、彼氏彼女、彼氏彼女の家族、幼馴染、友達、先輩、後輩、小さい頃からお世話になっている人など…
毎度かなりの大人数。
➡︎ 特別措置として、リアルタイムでライブ中継が行われることになった。フェイスブック、インスタグラム、学校のHPで、式の一部始終が流れた。
「こんな時期だから…残念だけど式に (直接的な) 参加は出来ない」と理解し、惜しくも、その様子を携帯やパソコンからあたたかく見守った。
それなのにこの街で初となる陽性反応が出てしまった。しかも3人。…一体どこに問題点があったのか?
2日後には、6人に。
なぜ?
…
…
…
…
…
会場のドアの外で、ぎゅうぎゅうの団子状態で、手元の中継を見ていたから。下の写真は、ほんの一部。全学部でこの状態だった。『コロナがあろうが関係ない。卒業式の方が大事だ!行くぞ!』そう思った親族が、押し寄せた。もちろんマスクは無しで。
ニュースになった。
【感染が拡大した理由】
確かに、イタリアの挨拶はキスとハグ。みんなでワイワイ盛り上がるのが大好きな上、基本的に人と話す時の距離が近く、アジアに比べて「濃厚接触」の場面が多い。だが、限りなく似た文化を持っているスペインではここまでひどい『拡大』になっていない。だから私はその習慣が第一の理由ではないと考える。
この例からも分かるように、イタリア人は、卒業式や誕生日など、一生に一度しかないイベントをかなり大切にする。
「卒業式は、大学院へ行けばまたあるし、誕生日は、来年も再来年も祝える。だから今は、コロナ予防のために外部との接触や行動を自粛しようよ。」
そう言っても、
「いや、学位の卒業式はもう二度とない。」「22歳の誕生日はもう二度とない。」と思う人が多い。この場面、スペイン人なら大半が家で中継を見ると思う。親戚が家に来ることはあっても、ここまで大人数が学校へ押し寄せることはしないだろう。それが危険だと分かっているから。
【2月14日】
私のイタリア人の女友達は、バレンタインデーに彼氏と一緒に過ごせなくなったらふてる傾向にある(笑)
「急用で家に帰らないといけなくなった。」
「仕事が入った。」
こう言われた時、スペイン人の女の子なら「えー…辛いけど…どうってことないよ。明日お祝いすれば良いね!」と受け入れられる印象。イタリア人の女の子は「え?2月14日に一緒に居なければ意味がないんだけど?」と、日付にこだわりがち。
【卒業式は一晩中続く】
卒論を認めてもらい、卒業証書を受け取る式。日本もスペインも「卒業式」は、これで終わる。が、イタリアは、その日の夜、親族+大人数の友達を集めて、レストランを貸し切って、盛大なパーティーを開く。2月末〜3月初めにかけて、他の州の大学に通う子たちのSNSも、この『パーティー』の楽しそうな様子で溢れていた。コロナを忘れるくらいの人数と盛り上がりだった(笑)
【その他の濃厚接触】
イタリアの大学は、1月末から2月末まで「試験期間」である。筆記ではなく、口頭。 一問一答ならぬ、一問十分くらい、ひたすら喋り続けなければ点数が取れない。ブラボー!ブラバー!と言われるレベルに、点が出せたら教授と握手をする(笑) そして、席に戻って友達とハイタッチやハグをする(笑) 100名くらいのクラスメイトを前に、行われる公開試験やプレゼンもある。
【教授と生徒の家】
毎日、別の州から電車で大学まで来ている教授が多い。生徒は、週末になると遠方にある実家へ戻る。カタンザーロ、ナポリ、シチリア、クロトーネ、レッジョカラーブリアなど。だから大学は特に感染しやすい場所と言われている。
【北イタリアの友達は?】
厳しく隔離されているヴェネト州の友達は、州の外には出ていないものの、相変わらずワイワイ楽しそうな写真を送ってきてくれる(笑) 出歩くことは減ったとしても、友達や同僚との交流は「大切に」続けている様子。
…
…
報道と日常にやや違いを感じながらも、…さすがに今日からはみんな『自宅待機』。隣町にも行けなくなってしまったから。ZONA ROSSA…。本当に全土、完全隔離状態。全員が自宅から出なければ15日で収束するらしい。
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