スペインの大学 (バルセロナ大学哲学部) の定期試験結果発表で常に公開される情報は、
・試験を受けた人数
・全員の点数
・合格者の数
・不合格者の数
・優等賞を得た生徒が取った点数
たまに、点数と身分証明書の番号と名前が載った『成績リスト』が教授の部屋のドアに張り出されることがある。
一方で、イタリアの大学 (カラブリア大学言語学部) の定期試験は、『ウェブサイトに名前と成績が大公開される』または『全員の前で口頭試験を受けて試験の一部始終を見られる』…だ。
【5つのQ&A】
Q1. 試験の順位は出る?
A1. スペインもイタリアも数えれば自分の順位を知ることが出来るが、生徒は「順位」を全くと言って良いほど気にしない。私も自分が何番目にいるのかを一度も数えたことがない。いつも自分の点数だけを見る。『誰かと勝負』という雰囲気がゼロ。
Q2. 成績も公開される?
A2. スペインは、成績も公開されるが、名前が伏せられていることが多く、誰がどの成績なのかを他の生徒は把握していない。イタリアは、大公開だが、スペインと心持ちが違う。前にも記事を書いたことがあるが、
スペインの大学: 個人戦
イタリアの大学: 完全なる団体戦
後者の国では、自分だけが合格しても意味がない。合格出来るように一緒に頑張ろうよ!と手を差し伸べるのが普通。
Q3. 試験の点数が全て?
A3. イタリアの大学は、授業出席率と点数が全て。授業中の発言や教科書の購入チェックなどは一切カウントされない。スペインの大学は、定期試験の点数だけで単位取得の合否を決める教授が半分。それに加えて、プレゼン、小論文 (小論文と言えど3000単語〜5000単語)、レポートの点数も総合的に見て判断する教授がもう半分ほど。こちらも授業中の発言や、授業に対する積極性が、評価基準になることはない。
Q4. 試験の点数は交渉可能?
A4. どちらの国も、点に納得がいかない場合、教授に言いに行くことが出来る。必ず、Revisión (訂正/復習) の日が設けられている。スペインは筆記試験であるため、その場で採点ミスが見つかれば、点数が変わる。イタリアは、口頭試験。パッと点数が発表される。その際、不服であれば、そう伝える。一応、教授は、点数を告げたあとに「納得しますか?(この点数で良いですか?)」と尋ねる。ごく稀に交渉を試みている人がいるが、残念ながら「言い訳」に変わるパターンばかり。教授が『それなら…』と折れている姿を見たことがない。
Q5. テスト週間の雰囲気は?
A5. バルセロナ大学は、テスト週間であってもなくても何も変わらない。毎日フルで勉強している。試験がない月でも、毎月課題提出がある。(1-2年次はあまりない。3年次からハードさUP。)
イタリアのテスト週間は、面白い。一気に友達が増える。友情が深まる。
「ねえ、〇〇教授の試験に合格したって本当?どんな内容を聞かれた?」「何日くらい集中的に勉強した?15日あれば行けるかな?」「なあ、本貸して!」「ちょっと、10月4日のノート見せて!」「範囲の写真持ってる?」「ワッツアップのグループに招待して!」「俺、合格したから試験攻略 (自作) ノートを作った!5ユーロ!誰かいる?」「試験に合格した人知ってるよ!電話番号あげようか?」
イタリア人は、素直。自分のやり方に取り入れるか取り入れないかは別として、他人の意見を多く聞く。変なプライドを持つことなく、知りたいことがあれば「教えて」と言えるのが好きなところ。合格したから終わり!ではなく、後ろを振り返って、まだ合格出来ていないクラスメイトの力になろうとする。自分の試験勉強があったとしても。
だからイタリアの卒論は、まず、名指しで『自分を支えてくれた友人』へ向けた感謝のメッセージから始まる。
【スペインの国公立大学】
0点から10点。小数点付き。先日のイースター連休前に行われた定期テスト前半の結果が出た。学生番号と点数を見れば何人が受験し、何人が合格点 (5点) に達しているかが分かる。「個人特定」には興味がわかない。
【イタリアの国公立大学】
筆記試験と口頭試験から成る科目の場合、筆記の合否や点数はリストがネット上 (一般の人も閲覧可能な場所) に載る。合格点は、30点満点中の18点。もし、イタリアのテスト発表に「受験者名」が書かれていなかったら…。詮索する生徒が続出しそう。私もイタリアの大学では「個人特定」に興味が湧きそう気がする。個々の距離が近いだけに。
お国柄が垣間見える。
【おまけ】
私のスペインとイタリアの比較記事は、トータルで見ると主観的な偏りが生まれていないはずである。スペインを拠点としている時は、イタリア(人)の魅力に気づき、イタリアを拠点としている時は、スペイン(人)の良い部分に気づくから。…ないものねだり。
今日、2021年4月7日(水)は、バルセロナにいる。だからこの記事は、ややイタリアをプラスに見た書き方になっているだろう。
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