今日紹介するのは Víctor Küppers (ビクトル・クッパース) 氏の『姿勢』というタイトルの講演会のダイジェスト動画。
V=(C+H)×A
この公式の意味とは?
【Víctor Küppers】
ビクトル・クッパース氏 (オランダ生まれ) は、スペインのカタルーニャ州在住の経営学者/人類学者/作家/講師で、バルセロナ大学とバルセロナ自治大学で授業をしている。元々は、スペイン発祥の世界トップランクの有名ビジネススクールIESEのリサーチアシスタントとして働いていた。テニスとバルサの大ファン。ユーモア溢れる人柄と上手い喋りで、40-60分の為になる講演会があっという間に感じられる。彼の一番の専門分野は経営やビジネスであるが、大学院では人類学を専攻し、博士号を取得しているため、哲学的なテーマの授業も多い。
【講演会】
2014年に行われた TED×AndorralaVella の動画は、790万回再生を超えている。⬇︎ はフルバージョン (20分)。本題に入る前の『ホテルのくだり (1分半-5分)』が面白い(笑) これは記事の最後におまけとして和訳を載せる。
⬇︎ 2分16秒のダイジェスト版。
【動画の内容を要約】
全訳はかなりの長文になってしまうので今回は日本語で簡潔に要約する。(以下、ビクトル氏の言葉をそのまま和訳。)
人としての価値を求める公式
(C+H)×A
Cは、Conocimientos (知識)
Hは、Habilidad (能力や才能)
Aは、Actitud (姿勢や在り方)
この式の最も重要な点は、
「CとHが加算なのに対し、Aが乗算」という部分だ。
素晴らしい人は、素晴らしい在り方をしている。
最悪な人は、クソみたいな在り方をしている。
尊敬出来る上司は、尊敬に値する在り方をしている。
私は「知識」と「能力」が重要ではない、と言っているのではない。どちらもとても大切な要素である。生きて行く上で「知識」が重要であることは、当たり前だ。
「あなたは偉大な人だ」と、誰かに言われる理由は、あなたがこれまで一生懸命学んできたからだろう。努力して多くの知識を身につけてきたからだろう。しかしその評価は、偉大な人の「在り方」に対するものなのです。学位や英語力や経験の年数であなたを「偉大」と判断していないはずです。
つまり、誰もあなたを「知識」の多さで見ていないし、選んでいない。では、私たちはどうやって友人を選んでいるだろう?
C (知識) か、H (才能) か、A (姿勢) か。
履歴書で友達を選んだりしませんよね。
その人の、在り方で選んでいるはずです。
子供達に「パパとママはどんな人?」って聞いたらどう答えるだろう?
『僕のママ?最高だよ!』
「もうちょっと教えてくれるかな?」
『14年も今の部署で活躍してるんだ!』
なんて会話はありえませんよね(笑)
私たちの子供は、親をCやHで見ていない。
彼らもやはり人としての在り方で我々を判断しているのです。
『だってパパは僕と一緒に遊んでくれるんだ!ママはいつも着替えさせてくれるし、美味しいご飯を作ってくれるんだ。』
私たちは、初めて誰かに会った時、いつも2-3秒でその人の第一印象を受けます。「うわ、この人すごいな」「なんだこの人」「明るい人だな」「フィーリングが合うな」など。
人の価値=(知識+才能)×在り方
なぜ、同じ時代に、同じ日に、同じ場所で、同じ職種で、同じ温度で生きているのに『楽しそうに生きている人』『ユーモアセンスがある人』『嬉しそうに働く人』『いつも笑っている人』『今日を満足出来ていない人』がいるのだろう?
違いはどこ?
…
…
いくら知識や才能に秀でていても、
ひどい在り方をしていると、
人の価値=(知識+才能)×0
人としての価値はゼロに等しいのです。
人の価値=(知識+才能)×∞
結局『価値』は他人の評価なのです。
結局『価値』はその人の在り方なのです。
【気分の重要性について】
最高な自分と最悪な自分
違いはたった1つ。
『気分』
生まれ持った運のおかげで一生幸せでいられる人間なんていない。悲しみを感じない人間なんていない。楽観主義者は生まれた瞬間から楽観的な考え方を身につけているわけではない。
いつも笑顔でいる人も、表に出さないだけで実は内面で自分との小さな葛藤を繰り返しているのです。
上手くいかない ➡︎ 今度こそ!➡︎ また上手くいかない ➡︎ 次こそ必ず!
これが出来るか出来ないかで全てが変わる。
人生は気分。
経済危機の時代に生まれた運命、治らない病気にかかってしまう運命、交通事故に遭ってしまう運命、このような状況は変えられない。
しかし、毎日の気分は自分次第。選べる。唯一、人間が自由に変えられるものなのかもしれない。
何から始めて良いか分からないなら、まずは、他人に小さな親切をプレゼントする習慣から始めよう。
カフェテリアのドアを開けてあげても良い。誰からも挨拶をされないバスの運転手さんに元気よく挨拶してみても良い。エレベーターの扉が開いた時、先に他の人をおろしてあげても良い。
私たちは毎日1500回「他人に親切が出来るチャンス」を持っている。誰かを幸せにすることで自分も幸せになれる。あなたのその在り方が、あなた自身の価値を高めていく。
【おまけ: ホテルのくだり】
いつも分かりやすい日常的な例を上手く用いて説明している。この講義で人の「態度」の重要性を表す時に出した例は、バケーションのホテル。
彼には奥さんと数人の子供がいる。
ビクトル氏は、寒いのが好きなタイプで、暑い夏と海は大嫌い。しかし、自分以外の家族は全員ビーチが大好きだから夏の旅行の目的地はいつも決まって綺麗な海。
「ホテルの予約しないと。」
例年通り、ツイッターで「誰か〇〇の良いホテルを知りませんか?綺麗で安くて、家族とビーチへ行くのに最適なホテルを探しているんです。」と呟いた。
フォロワーたちから多くの情報が寄せられた。
『すごくお気に入りで毎年必ず利用しているホテルがあります!』というコメントに惹かれ、そのホテルのホームページを見た。
…
…
写真が1枚も掲載されていない。
まずい。
「世間の人たちがどうなのかは分からないが、うちの奥さんは写真を見なければ100%納得しない。彼女は写真が見たいのだ。ホテルの写真、庭の写真、部屋の写真、バスルームの写真…。特にバスルームね。かなり鋭い目でトイレを見るんだ。まるで週末をバスルームのみで過ごすかのごとく。清潔感のチェックが厳しい…。」
とりあえずホテルとコンタクトを取ることに。
一通のメールを書いた。
「〇〇ホテル御中、初めまして。ビクトルと申します。予約をしたかったのですが、ホームページに写真が無く、この状態では妻を納得させるのが難しいのですが…。」
返事が来た。
(携帯にある実際のメールを音読する。)
『親愛なるビクトル様、必ず奥様を納得させてみせます!ご指摘の通り、現在ホームページには写真がないんです。ページをリニューアル中でして…すみません。うちはとても小さなホテルです。それなのになぜ上司がリニューアルを依頼したのか…不明です(笑) お子様連れにぴったりだと思われるお部屋のお写真をこのメールに添付させていただきますので奥様とご覧ください。もし写真がウェブにあれば、予約が多く入り、お部屋の準備が出来なかった可能性がございます。だから無くてある意味ラッキーだと言えるでしょう(笑) お送りしたお部屋がお気に召さない場合はお申し出ください。「気に入らない」の一言で十分です。シンプルでしょう?別のお部屋をご用意出来るか上司に確認いたします。そして別の写真もお送りします。私は写真を載せるだけ、あなたはそれを保存するだけ、簡単でしょう?皆様をお出迎えする日を楽しみにしております。受付担当、アナより。』
…
…
普通の、…普通の人がこのメールを受け取ると、どんな印象を抱くだろう?多くの人は「いやいやいやいや、え?なに?これはどこの惑星から来た人の対応?これがホテルのメールの書き方?誰に教わったらこうなったの?」と、感じるだろう。
…
…
そう。正しい、プロフェッショナルな、真面目な文面であれば次のような返事をするべきだ。
『親愛なるビクトル様、ただいまウェブページを新しくしている最中でして、誠に申し訳ないのですが写真の記載が出来ておりません。しかし、2週間後にはご覧いただける状態になると思うので改めてご確認お願いいたします。敬具、アナ。』
問題点は、
我々の周りにはプロフェッショナルな対応が出来る真面目な人がたくさんいるが、別のジャンルの、何かを掻き立てられるような対応をしてくる人もいるという点だ。このアナのように「おお、こうくるか!(笑)」と面白がれるタイプもいれば、あまりにもやる気のない対応をしてくる人もいる。後者の方が多いのが現代社会における問題点であると私は考える。この『人の在り方、姿勢』ついて今日は話して行こう。
…
…
と、彼の授業や講義は始まる。
非常に入りが上手い。
スペインの大学での学びはこんな感じで、毎日楽しい。
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