BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活10年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。

【現地の大学に通いながら】通訳者にふさわしい教養を身につけるには。

『通訳者』になるために必須な資格は存在しない。DELEやスペイン語検定を受けたことがなくても、実力さえあれば誰でもなれる。

日本人でスペイン語の通訳をしている人の数は、英語通訳に比べると少ないが、それでも結構いるし、今後、需要は増え続ける。通訳者たちの専門分野 (スポーツ、医、法、ビジネスなど) は一旦横へ置いておき『実力を得た経緯』にフォーカスを当て、分類すると、以下の3グループに分けられる。

・日本で外国語/通訳学部 (コース) を出た

・国際結婚をし、現地で長く住んでいる

・単身で渡西をし、数年〜数十年経った

日本で通訳になるための勉強をした人たちは、現地で長年生活している人に比べ「スペイン語」の細かなニュアンスをよく出来ていないことが多い上、直訳になりやすい。しかし、綺麗な日本語を操れる力を持っている。

国際結婚がきっかけとなり、スペインへ渡ってきた人の強みはなんと言っても「日常」における語彙の豊かさだろう。現地の小中学校、小児科、民法などに関する知識も持っている。だが、特定のスペイン人としか話さないため、その人たちの言い回しや訛りに慣れてしまうケースがある。

3番目の私が当てはまるグループの特徴は「知識」と「流暢なスペイン語」である。日本語から離れた生活を送っているだけに、意識を怠って通訳を行うと語順がおかしくなってしまうが、そこさえカバーすればかなりのもの。スペイン人はもちろん、南米の人たちとも言葉を交わす機会が多く、学術的なテーマにも対応可能。

語弊があってはいけないので、最初に断っておくが、私は誰一人に「ライバル心」を抱いていない。どのグループが最も優れているか、それは私たち通訳者が判断することではないから。

 

【現地の大学に通いながら】
これからスペインの大学進学を目指す上、「通訳」という仕事に興味がある人に向けて。

私は「ライバル心」を抱いていないと言いつつも、別の2グループの方々に負けない「自信」は相当持っている。

・知識
・若さ
・経験

この自信は、ライバル心のはるか上。それくらいこの6年間、真面目に何事にも取り組んできた。今の自分にとって最大の武器であるスペイン語力は、最初の2年半、超ストイックに日本語から離れていた時に身についた。そこから様々な分野の語彙が、その時々の興味に導かれ、枝分かれしていった。

この自信の根本を辿ると、これまでに何度も書いてきた『大学受験』がある。今はもう形式が変わってしまっているが、それでも努力しなければ合格出来ないという点は同じだ。将来、言語と知識で勝負したいなら、絶対にこれを乗り越えて欲しい。最低限の知識と語力を身につけた状態で大学へ。

受験をして入学した人と、そうでない人の開きは、徐々に広がる。クラスメイトの学力の高さは、授業の質を左右する。理解度は楽しさに繋がり、テストは単位取得に直結する。コミュニケーションが上手く取れれば、仲間も信頼も増えて行く。

文系のテストは筆記で、真っ白のA4用紙を数枚配られるだけ。そこにひたすら答えを自分で展開していく。選択形式のテストを作り、機械的に丸付けをし、生徒の理解度をはかる教授はいない。言わずもがな、この国の国公立大学の教授は本物。

【大学1年目の勉強量】
一昨日、過去の自分のツイッターを遡った。2015年の9月にバルセロナ大学哲学部に入学し、半年が過ぎたあたりのつぶやき ⬇︎ とても苦労してレポートを書いているスクリーンショットが複数あった。受験で良い点数を出せたとしても、入学後は毎日想像を超える「努力」が求められたことを思い出した。

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【大学2年生】
2年目になると少し余裕が出てくる。授業やテストのスタイルを知り、どう勉強すれば良いのかを見つけ、やっと『趣味』に時間を使い始められる時期。私はテニスをしていた。朝9時から16時半まで連続で授業を取り、17時半から夜22時半まで、ひたすらスペイン人男子と真剣勝負。利き手である右手がマメだらけになり、シャーペンが握れず、左手でノートを取っていた時もあったほど、楽しかった。この期間で、テニスの専門用語やスペイン人のスポーツに対する姿勢を学んだ。友達の輪が「現地」になったのもこの頃。30代〜70代の知り合いの数が一気に増えた。

通訳は、人と人とが直接関わる、非常に人間味のある仕事だから「今」を楽しんでいれば、全ての経験が将来に生きてくる。スペイン人と一緒にする筋トレも、笑い話も、昨日見た試合の感想も、美味しいレストランの話も、共に語った夢も、全て。

大学2年次までは、脳を完全に『スペイン語』にしておくべきである。ノートもメモも日本語では取らない。授業中は全てスペイン語で理解する。ネットで用語を調べる時もそう。分からない単語は類語辞典で意味を想像するか、友達や教授に聞く。そうすれば自ずと語彙が増える。各ニュアンスの違いも学べる。日本語とスペイン語は、構造も語源も全く違う二言語であるから、最初の大事な時期の『徹底』がポイント。

大学4年生までは「通訳」を意識せず、がむしゃらに目の前の勉強をすれば良い。「4年生」というのは「4年目」ではない。3年次までの全単位 (180 ECTS) を取得するその日まで。

【大学4年生】
ラッキーなことに、私たちは自分のタイミングで「いつもの授業」を「特訓の場」に変えられる。パソコンを開いて、教授の話を全て日本語で打っていけば同時通訳の練習になる。カタルーニャ語で行われる授業ならそれをスペイン語に訳しても楽しい。全文でなく、大事な箇所だけ訳せば『要約』の練習になる。スペイン語をそのままスペイン語で打っても良い。そうすれば速くタイピングする練習に。➡︎「翻訳・通訳学部で学ぶこと」は、必要条件ではない。

好きな分野の講演動画を聴きながら訳してみるのも良し。サッカー選手のインタビューや解説を訳してみるのも良し。

【徹底】
私は自分に甘い性格だが、スペイン語に対してだけは常に厳しかった。それくらい本気で学びたかったのだと思う。C1レベルあたりに「線」があると考え、そこを目指していた。越えてしまえば日本語を日常で話すようになってもスペイン語力が落ちない線。

本当にあった。

母語シャットアウトして、スペイン語だけの生活を送っていると、そこへ早く到達出来る。「早い」のが必ずしも良い訳ではないが、早いのに越したことはない。時間には限りがあるのだから。

現地の学生たちに負けないように勉強していれば、自然とC1-2レベルのスペイン語を習得出来る。文法書を買う必要もなければ、ノートに単語をひたすら綴って覚える必要もない。

負けず嫌いな性格の人ほど、この学生生活を通して大きく成長する。どこまで行っても「満足」出来ない環境が楽しい。

 

【大切にしていること】 
2019年の8月、全国通訳案内士の試験 (5科目) の中にある「スペイン語」に合格した。このスペイン語試験は『DELEのC2と西語検定1級』と並ぶレベルと言われている。が、勉強してみて一番に感じたのは、

+α の必要性

『スペイン語能力だけでは不十分』ということ。

・綺麗且つ正しい日本語の運用能力
・幅広い教養
・コミュニケーション能力
・異文化理解
・異国の地で生活した経験
・世界の時事問題への理解
・自分の専門性
・言語を好きであること
・日本まつわる全般知識
・話し手の性格に合った言葉選び

これらを持っていれば「通訳を担当させてもらう相手」からも「通訳の依頼をくださる方」からも認められるようになる。

上の太字にしてある4項目は、独学でいける。あとの6つは、大学で。重要なのは、確実にステップを踏むこと。まずは、あの「線」へ。

私が大切にしていることは、2つ。

① 綺麗な日本語と生きたスペイン語

② 自らの専門分野を広く

どの言語においても言えることだが、勉強すればするほど、どんな分野の人とも対等に話を楽しめるようになる。それがまた自分の教養になる。この循環がとても好き。

【まとめ】
通訳者にふさわしい教養は、努力しなければ身につかない。知識は勉強した時間に比例する。だから好奇心を持って学び続けよう。

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