スペイン人とは、初対面でも下の名前で抵抗なく呼び合えるのに対し、日本人同士は大体の場合「苗字+さん/くん」からスタートする。
私の名前を例に挙げると、
⬇︎ 谷吉さん
谷吉
楓さん
楓ちゃん
楓
たまに、出会った当初から『呼び捨て』あるいは『〇〇ちゃん』『〇〇くん』と下の名前で呼ぶこともある。その方がお互い距離を縮めやすいし、どのタイミングで下の名前呼びに変えようか考えなくて良いから楽だ、と言う人もいる。
Googleで「下の名前」と検索すると予測に出るのは…
・下の名前で呼ぶ 女性心理
・下の名前 さん付け
・下の名前で呼ばれたい
・下の名前で呼ぶ
私たちにとって「名前呼び」=「少し特別」であることが伺える。この『心理』と『言葉』の関係性を面白いと思う。
下の名前で呼ぶのはいつがベストなのか
好きな女性への名前の呼び方を変える方法
下の名前で呼ぶ男性・女性心理とは?
トップに上がるブログの記事のタイトルはどれも日本人らしく、微笑ましい。(この類の相談やページは、スペイン語でもイタリア語でもヒットしないはず。)
実は、
この「下の名前で呼ぶか、苗字で呼ぶか」の何とも言えない気持ちに似た感情を、スペインでも感じることがある。それは、初対面の相手を前に『TUTEARするかどうか』を頭の中でパッと考える時である。
【Tutearとは】
スペイン語には、"Tutear (トゥーテアール: túで話す)" という動詞が存在する。分かりやすく言えば、敬語ではなく、タメ口で話すこと。
Tú (君)
Usted (あなた)
基本的にスペイン人は、初対面の人、上司、年配の方、に対しては丁寧に『Usted』で話す。いきなり『Tú』でも「失礼・無礼」と思われることはあまりないが、それでも相手への敬意を示すべく、敢えて『あなた』を使う。
年配の方から「Túで話してくれて良いんだよ」と言ってもらえたら「いえいえ…」と言わず、素直に「え、本当?ありがとうございます!」と受け取り、"Tú" に切り替えて話を続けるべきだ、とスペイン人は言う。"usted" は『距離』を感じるから、スペイン人の多くは好まないよ、と。
"Me puedes tutear, eh!"
この一言で、一気にバリアが解け、
一歩、近くに寄れたような、
日本人の「苗字呼び」から「名前呼び」に変わった時のような感覚になる。
【USTEDを止める時】
"tú" で話して良いよ!と言われ、切り替える時の会話例。
A: "Me puedes tutear, no hay problema."
(「君」で話してくれて大丈夫だよ。)
B: "Pues muchas gracias!"
(えー、ありがとうございます!)
【USTEDを続けたい時】
"usted" を続けたい時の会話例。
A: "No me digas usted."
(「あなた」って言わないで。)
B: "Usted es la manera de llamarlo de forma respetuosa!"
(「あなた」は、尊重を込めた呼び方ですから!)
A: "Sí lo sé pero me puedes tutear!"
(それは知ってる、でも「君」で良いよ!)
B: "Gracias pero prefierso el usted, me siento más cómoda."
(ありがとうございます、でも「あなた」の方がしっくりくるので。)
B: "Pues como quieras."
(じゃあ、お好きなように。)
【最近の話】
つい先日、とあるレストランの経営者の女性と初めて話す機会があった。その時、頭の中で一瞬「tú」で行くか「usted」で行くか、を考えた。相手は50代半ば。私は24歳。
…
…
いつもなら敬語で行くところだが「この人とは "tú" の方が良い」と思った。そう判断したメインの理由は、
今後、関係が続きそうだから。
その日だけ話す相手であれば「usted」を使っただろう。でも、これから親しくなり、上下関係を持たない状態で連絡を取り合って行くのなら「tú」の方が、円滑な関係を築いて行き易いと思った。…それで正しかったのか、20分後には "cielo" や "cariño" と呼ばれるようになった。ありがたい。
呼び方はどうであれ『親しき仲にも礼儀あり』の精神は、今後も大切にしていきたい。誰に対しても。
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