BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活8年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。2019年6月より、バルセロナにある大学入試専門のアカデミアGUIUのアンバサダーに就任。スペインへの留学・大学進学に興味がある方は、お気軽にご相談ください 😊🇪🇸 barcelonandoo@gmail.com

【名前と文化】スペイン人は会話中に相手の名前を呼ばない。

基本的にスペイン人は会話中に相手の名前を呼ばない。

だから名前を忘れてしまった時、咄嗟の対処法を考える必要はない。呼ばなくても自然に近況や体調を尋ねることが出来る。相手の名前を呼ばないことが「失礼」にあたることはない。相手に悪い印象を与えることもない。

スペインに住み始め、すっかり『呼ばない会話』に慣れてしまった。

稀に個々の名前を「TÚ (英語: YOU)」という共通人称代名詞に当てはめるが、ほとんどの場合、代名詞さえも登場しない。日本人同士の会話の中にはいつも『名前』があるのに。

「KAEDEは?」

「KAEDEは見たことあるんだっけ?」

「KAEDEと今度行きたいレストランがあってさ、」

「最近、KAEDEは何してるの?」

『名前』はひとつの立派なアイデンティティなのだろう。他者から呼ばれると温かさ親しみを感じる。

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スペインの『名前と文化』について少し。

【どんな感覚?】
スペイン人から最後に名前を呼ばれたのはいつだろう?…記憶を辿らなければ思い出せないほど、普段呼ばれていない。友達と出かける時、仕事の話をする時、久しぶりにばったり道で会った時、そうそう名前を呼ばれない。

日本人も時と場合によって、関係性 (親近感) によって、心理状況によって名前を呼ばずに話しかけ、言葉のキャッチボールを続けることがある。

「あのさ、カフェ行かない?」「なあ、コップ取って」「充電器どこに持って行った?」「ちょっと、これ見て」

単純に相手の名前を呼ぶ習慣がない人、どう呼べば良いのか分からない人、呼ばなくても分かるだろうと言う人もいるが、…何となく悲しい。それと同じ気持ちになる。

しかし、スペイン人にとって『名前を呼ばれないこと』はごく普通である。

 

この文化の根本には、あえて相手の名前を呼ばなくても主語が明確になる動詞の活用間接目的格人称代名詞の働きがあると考える。(動詞の活用とは、動詞が文の主語によって形を変えること。)

例文1:
"¿Cómo te ha ido el examen?"
(試験どうだった?): 君

"¿Cómo le ha ido el examen?"
(試験どうでしたか?): あなた

例文2:
"¿Por qué te gusta viajar?"
(なんで旅行が好きなの?): 君

"¿Por qué le gusta viajar?"
(なぜ旅行がお好きなのですか?): あなた

例文3:
"¿Ya has comido?"
(もう食べた?): 君

"¿Ya ha comido?"
(もうご飯は召し上がりましたか?): あなた

【メリットだと感じる場面】
「呼ばれないこと」に対してプラスの感情を抱くことはないが、自分が話しかける側だったら、以下の2点をメリットとして挙げる。いずれも日本語にはない。

① 相手の名前を忘れてしまった時に支障なし。
→ 最後まで相手の名前が思い出せなかったとしても動詞の活用でカバー可能。名前が分からなくても、名前が入るべきところに「Amigo/Amiga (友達)」「Cariño (可愛い人)」「Guapo/Guapa (美しい人)」などの名詞を代入することで、名前を呼ぶよりも大きな『愛情』を伝えられる。

¡Hola Kaede! = ¡Hola guapa!

Gracias Kaede. = Gracias amiga.

② 少し速く話すことが出来る。
→ 名前を呼ばない分、より少ない単語数で速く話を展開させられる。(名前を呼ばない代わりに動詞は2人称の「君」を意味する形に姿を変えるため、主語が曖昧になることはない。相手から振られた話の主語が自分であることは100%ハッキリ分かる。)

【デメリットだと感じる場面】
日常生活において『名前を呼ばれない寂しさ』以外にこの文化をマイナスだと感じることはない。だがスペインに来て間もない頃は、

"¿Y tú?" (君は?)

"Si tú vas a..." (もし君がさ…)

というように「KAEDE」ではなく、人称代名詞「Tú (トゥ: 君)」で呼ばれることに対しての違和感が少なからずあったのを覚えている。まるで番号で呼ばれているかのようだった。

【どんな時に名前を呼ぶ?】
スペイン人は全く名前を呼ばない、というわけではない。

① 呼びかける時
例えば、広場で待ち合わせをしている時。反対方向を向いて待っている友達に対しては『KAEDE!!』と名前を呼び、気付かせる。しかし、それ以降は動詞の活用で会話が進む。

② 親しみを高めたい時
ビジネス会話においてはかなり頻繁に名前が呼ばれる。(友達との会話と比較して。)

③ ボイスメッセージの始め
少し長めのボイスメッセージには決まって名前付きの挨拶から始まる。(例: ."Hola Kaede, ¿qué tal? Mira...")

④ チャットの文中や挨拶
日本人同士のやり取りに比べると少ないが、チャットやメールでは不思議なことに、口語よりも名前を呼ぶ (書く)。なぜだろう。(例: "¡Feliz Año Nuevo Kaede!", "Gracias Kaede por contestar.")

⑤ 講義や講演会の中で
語り手と参加者の距離を近づけるために。参加者の脳の回転スピードをより速めるために。もっと積極的に会話へ入ってもらうために。コミュニケーションスキルのひとつとして名前を使う。(例: 質問がある人はいますか?はい、そこのあなた。お名前は?…KAEDEさんですね。では、KAEDEさんならどのような行動をすると思いますか?)

このようにスペイン人から名前を呼ばれる場面は、かなり限られている。上記5パターンのいずれかに該当するのではないだろうか。

 

【最後に】
この『名前と文化』の気づきは、海外生活ならではのものに違いない。以前、下の記事の中でスペイン人やイタリア人の名前と日本人の名前の違いについて触れたことがある。

スペイン生活開始からもうすぐ丸8年。日本人の名前を呼ぶ機会が減った今、日本人の『名前』は心惹かれる存在となった。呼ばれるのも好きだし、呼ぶのも見るのも好きになった。それぞれの漢字には家族の願いが込められているところが特に素敵だ。スペイン人の名前の多くは、聖人の名が由来となっている。おじいちゃんもしくはおばあちゃんの名前と孫の名前が同じなんてこともしばしば。

それゆえ、名前の被りが激しい。

蛇足だが、スペイン版【男女別: 人気名前ランキング2021】をシェアしておく。

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長くなったが、まとめると『名前を欠くコミュニケーション』で溢れるこの国の言葉にはどこか寂しさを感じる、日本の『名前を呼ぶ文化』は温かい、という今日のこの記事。

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