スペイン語とカタルーニャ語の…
【似ているところ】
・85%の単語は似ている
・語順
【違うところ】
・母音の数と中性母音の有無
・LとLの間に点をつけることも
・名詞語尾の "-n" が消える
・動詞語尾の "-o" が消える
・Xがつく単語
・アポストロフィー
・点過去の表現方法
・スペイン語にはない代名詞
・二重母音 "ie" が単母音になる
【最後に】
・カタルーニャ語が話せるメリット
・小話
位置付け ⬇︎
【母音の数】
スペイン語: 5つ (a, e, i, o, u)
カタルーニャ語: 8つ (á, à, é, è, i, ó, ò, u, + aとeの中性母音)
カタルーニャ語には、エとアの中性母音 (間の音) が存在する。そして、ア・エ・オには、それぞれ開母音と閉母音がある。そのため、スペイン語よりも発音がやや複雑。
閉母音の「エ」は、スペイン語の「エ」と同じだが、開母音は文字通りもっと口を大きく開ける。上についているアクセントの向きがポイント。
é ← この向きは 閉母音 (普通のエ)
è ← この向きは開母音のエ
e ← アクセント無しは中性母音
(例: お父さんを意味する pare: パレ は「パレ」と「パラ」の間の発音)
「眠る」の一人称単数 (私) は、スペイン語で duermo (ドゥエルモ)、カタルーニャ語では dormo と書くが、発音は「ドルモ」ではなく「ドルム」。1つ目の "o" は普通の「オ」だが、2つ目の "o" は「ウ」と発音する。(アクセントがない位置にある o は u の音になるというルールがあったりもする。)
カタルーニャ語の発音を、日本語 (カタカナ) で表記するのはとても難しい。日本語の「紙 (カミ)」と「神 (カミ)」のように、アクセントの位置によって意味が変わる単語が多い。
【LとLの間に点】
アクセント繋がりで、"L" が連続する時の珍しい表記について。カタルーニャ語は、スペイン語に比べて二重子音が多く、"LL"は「や行」の発音をする。lugar (場所) は lloc (ヨック) という風に。しかし、強勢が単語の中間部分に来る時は、例外。
paral・lel (パラレル)
pel・lícula (ペリクラ)
アクセント記号として「・」を用いる。この小さなポツはスペイン語に存在しない。
【名詞の語尾 "n" が…】
スペイン語には "-ción" で終わる名詞が2400以上ある。カタルーニャ語では、それらの語尾の "n" が消える。やや異なる表記をする単語があるが、ほぼ同じ。
estación ➡︎ estació
formación ➡︎ formació
acción ➡︎ acció
pasión ➡︎ passió
caución ➡︎ caució
grabación ➡︎ gravació
"catalán: カタラン" も、カタルーニャ語では最後の "n" が消えて "català: カタラァ" になる。
【語尾 "o" が…】
スペイン語の動詞から派生している形容詞は、
ocupar ➡︎ ocupado
escribir ➡︎ escrito
cansarse ➡︎ cansado
いずれも "-o" で終わる。
カタルーニャ語ではそれが "-t" に変わる。
ocupado ➡︎ ocupat
escrito ➡︎ escrit
cansado ➡︎ cansat
【Xがつく単語】
スペイン語には、Xがつかない。だからXがあれば「カタルーニャ語だ!」とすぐに識別可能。
チュロス
スペイン語 ➡︎ Churros
カタルーニャ語 ➡︎ Xurros
ピンチョス
スペイン語 ➡︎ Pinchos
カタルーニャ語 ➡︎ Pinxos
オルチャタ
スペイン語 ➡︎ Horchata
カタルーニャ語 ➡︎ Orxata
ハビエル (男性の名前)
スペイン語 ➡︎ Javier
カタルーニャ語 ➡︎ Xavier
【名詞の語尾】
日本人にとってスペイン語は発音しやすい。
12 ➡︎ doce (ドセ)
車 ➡︎ coche (コチェ)
チーズ ➡︎ queso (ケソ)
お医者さん ➡︎ médico (メディコ)
一方で、カタルーニャ語には、スペイン語にはない語尾がある。ローマ字読みが得意な私たちが、ぱっと見で発音出来ないもの。
ts, dz, ts, dz, tge
12 ➡︎ dotze (ドッヅィア)
車 ➡︎ cotxe (コチャ)
チーズ ➡︎ formatge (フォルマッジャ)
お医者さん ➡︎ metge (メッジャ)
【点過去の表現方法】
カタルーニャ語の文法の中で、最も興味深いと思うのが「点過去」。スペイン語ともイタリア語とも英語とも違う、特殊な表現方法をする。スペイン語の現在完了形は、He comido や He ido というように、2つの動詞 (haber+動詞) を組み合わせる。イタリア語は、スペイン語の tener や ser のあとに動詞の活用形 (過去分詞) を持ってくる。ho mangiato (スペイン語: tengo comido) や sono andata (スペイン語: soy ida) と。しかし、カタルーニャ語の点過去は、なぜか「ir (anar) + 動詞のそのままの形」になる。補助動詞に ir (anar) を使う上、メインの動詞は活用させない原形!
カタルーニャ語の「行く (Anar)」の活用は以下の通り。
「ピザを食べた」は、
スペイン語: Comí una pizza.
カタラン語: Vaig menjar una pizza.
「日本に行った」は、
スペイン語: Fui a Japón.
カタラン語: Vaig anar al Japó.
ここまで読んで「じゃあ、スペイン語の Voy a はカタルーニャ語で?」と思った人は、鋭い。
「ピザを食べるつもり」は、
スペイン語: Voy a comer una pizza.
カタラン語: Vaig a menjar una pizza.
「日本に行くつもり」は、
スペイン語: Voy a ir a Japón.
カタラン語: Vaig a anar al Japó.
となる。
Vaig a anar al Japó. はスペイン語に直訳すると、Voy a ir a Japón. (近未来) なのにも関わらず、実は点過去という…。この感覚、慣れるまではややこしい。
【スペイン語にはない代名詞】
カタルーニャ語の代名詞 "en" は、スペイン語にすると "de eso" で、既に述べた「それ」を意味する。フランス語 ("en") にもイタリア語 ("ne") にも存在するこの代名詞、なぜかスペイン語にはない。
「私は5つのりんごを持っている。そのうち2つを食べるつもり。」という例文を両方の言語で見てみよう。
スペイン語
Tengo cinco manzanas. Me comeré dos de ellas.
カタルーニャ語
Tinc cinc pomes. En menjaré dos.
2文目の頭に来ている "En" は "de ellas"。
【二重母音 ie が e に】
カタルーニャ語では単母音に。
también ➡︎ també
viento ➡︎ vent
ayuntamiento ➡︎ ajuntament
【小話】
先月14日、バルセロナの空港の外は大大大混乱で何が起こっているのか分からない状態になっていた。空港のシャトルバスを待つ列は見たことがないほど長く、優に100人を超えていた。デモの日だと知らなかった私は「なんでこんな状態になっているか知っていますか?」と前に並んでいた夫婦に聞いた。しかし、その60代と見られるフランス人の夫婦は、英語もスペイン語も分からず Do you speak English? すらも困った様子だった。だからカタルーニャ語を話してみた。すると、普通にフランス語と会話が出来た。こういう時、便利。
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