イタリアの大学は、スペインの大学と同じく単位制。しかし、この二つの国は利用している単位の種類が違う。
イタリア: CFU
スペイン: ECTS
イタリアが特殊で、ヨーロッパの大学共通単位制度 (ECTS) を使っていない。だからイタリア国内での転学は「国外」に比べ、割と楽に単位移行手続きが可能。…とは言え、出来るだけ多くの単位を別の大学で認めてもらうには事前に「頭を使う」必要がある。
9月8日、日本からヨーロッパへ戻る飛行機の中で「南イタリアの大学から北イタリアの大学に変えよう」となり…そこから徹底的なサーチが始まった。
・イタリア国内の別の大学へ編入
・単位移行
どちらの知識もゼロだった私が、この1週間で学んだことを今日はまとめる。
【候補大学について】
今回、コンタクトを取って何通もメールのやりとりをした大学は次の五校だった。
ほぼ全ての単位移行が出来るならすぐにでも編入した大学 ⬇︎
・Università Ca'Foscari Venezia
・Università degli Studi di Ferrara
・Università degli Studi di Verona
聞くだけ聞いてみた大学 ⬇︎
・Università di Bologna
・Sapienza Università di Roma
イタリアはスペインよりも大学自体を変える生徒の数が多く、HPには十分過ぎる情報が記載されていた。単位移行については「教育課に要問い合わせ」ということで、メールの件名を Trasferimento da altra Università italiana とし、具体的な内容を書いた。返信に時間がかかることが多いので、質問は一気に。番号をふった。
ほぼ同文のメールを上の五校に送った。…そうすると各大学の返信仕方 (親切度合い) が顕著に分かるわけで。たらい回しにする学校もあれば、そっけない返事の学校、感動するほど優しく情報がつまった返事をくれるところもあった。
実は、ボローニャ大学とヴェローナ大学は、2016年にもコンタクトを取ったことがあった。が、やはりこの2つの大学は…事務室・教育課・学部の3ヶ所、どこにメールを書いても好意が持てる返事が返ってこない。とても冷たい。良く言えば、あっさりした返事。
メール1通で校風が感じ取れる
【候補大学は複数校】
私が在籍しているイタリアの大学の学部 Lingue e culture moderne (現代言語と文化) と全く同じ学部は存在しない。だから全単位を別の大学へ持っていくのは不可能だと言うことを知った。これが「哲学部」や「経済学部」のように、どの大学にでもあるようなポピュラーな学部だったら、より多くの単位を移行出来たのだと思う。 言語学系の学部は、決してマイナーではないが、大学によってカリキュラムが結構違うため、学部名も少しずつ異なる。
(例1) フェラーラ大学
Lingue e letteratura moderne (現代言語と文学)
(例2) ローマ・ラ・サピエンツァ大学
Lingue e culture del mondo moderno (言語と現代世界の文化)
Lingue e letterature moderne (現代言語と文学)
(例3) ボローニャ大学
Lingue e letterature straniere (言語と外国文学)
候補大学を複数決めておいた方が良い理由は、やはり履修科目の比較が出来るから。大学によってこんなにも科目数 (1教科あたりの単位数) に開きがあるなんて思ってもみなかった。カラブリア大学では9単位の科目が、ヴェネツィア大学では3単位ということもあれば逆に、カラブリア大学では6単位だった科目が、フェラーラ大学では12単位ということも。
【単位移行について】
正式な単位認定書を転学 (編入学) 先の大学に発行してもらうために必要な書類は、
・在学中の大学が発行した転学の届出
・単位認定申請書
つまり「今いる大学から籍を外します」と決めきらないと確実な単位認定書はもらえないということ。しかし、仮の認定書 (l'ipotesi riconoscimento crediti) なら、どこの大学も頼めば発行してくれる。これがなかなか役に立つ。
教育課の方とやりとりをして、地図を見て、HPを熟読して、カリキュラムを見て、教授のデータや研究内容を見て、、、五校から二校に絞り、両校に仮の認定書の発行依頼をした。
・Università Ca'Foscari Venezia
・Università degli Studi di Ferrara
フェラーラ大学の単位認定書はものすごかった。依頼からたった3時間で届いた、PDF7枚にも及ぶ単位情報。人類学部の教育マネージメント担当の Mirta Tartarini 氏の対応と、手の込んだ資料を見て、候補大学はココのみになった。電卓片手に、いただいた資料を熟読し、編入後の学習プランを立て、履修科目をある程度選択し、初めて見る科目のカリキュラムを調べ、単位計算…、気づけば日が変わっていた。
【どれくらい移行出来るのか】
結果的に、イタリアの大学を転学するのはやめた。理由は、失う単位が想像より多かったから。
120CFU (単位) ➡︎ 81-96CFU
= 持っている120単位が96単位以下になる
・100%移行できないであろう単位は24CFU
・授業出席は免除だが試験を新たに受けなければならない可能性がある単位は15CFU
4〜5科目の単位が認定不可 = 半期分の単位を失う
必死に勉強をして、試験を受けて得た単位。1CFUとして無駄にはしたくない中で、この数字なので…、色んなことを天秤にかけると今後の選択肢から「転学」は無くなった。
今いる学部に最も「近い学部」を選んでこれ。
現大学 (カラブリア大学)
Lingue e culture moderne (現代言語と文化)
120単位
フェラーラ大学
Lingue e letteratura moderne (現代言語と文学)
81〜96単位
ヴェネツィア大学
Lingue, civiltà e scienze del linguaggio, Linguistico-filologico-glottodidattico (言語学的-文献学的-教育法的: 言語-文明-言語学)
66単位
ヴェネツィア大学は学部名を見た時からあまり認定に期待はしていなかったものの…、たったの66単位とは!
【転学時期】
大学によって、転学生徒受け入れ時期は異なる。年度末 (7月下旬) に締め切るところが多い中、年間を通して学生を受け入れているというオープンな大学もあった。ローマ・ラ・サピエンツァ大学とフェラーラ大学がその例だ。
【同じ州内での転学】
前の大学でもう翌年度のコースへの登録料を支払ってしまっている場合、次の大学で払わなくて良くなる。これが唯一の州内転学のメリット。
【編入試験について】
入学試験 (prova di ammissione) を受けなければならないらしい。またあの知識ミックス試験 (conoscenza della lingua italiana parlata e scritta, nozioni e strumenti di base di cultura generale e ragionamento logico, storia, matematica e fisica, disegno e rappresentazione) をやるのかと思うと面倒さを感じた。最初の入学時と同様、点数が足りなかった生徒 (25点以下) へはOFA (Obblighi Formativi Aggiuntivi) が課せられる。
【結果】
今、イタリアの大学のラウレアに交換留学生ではなく正規学生として在籍している人が転学を考えるなら、
① 候補大学を数校決める
② 各大学に編入届け出期限をまずは確認
③ 仮の単位認定書作成を依頼
というステップを踏めば良い。イタリア国外の大学へ変わりたい場合も同じ流れになる。勉強が好きな人は、私のように国も学部も全く異なる2つの大学の学位コースを始めるのも1つの選択肢。
Universitaà della Calabria
(Laurea in Lingue e culture moderne )
Universitat de Barcelona
(Grado en Filosofía)
日本の大学からイタリアの大学への編入は更に単位認定が難しいんだろうな。
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