バルセロナの道を歩いていると、1度はこの模様のタイルを見たことがあるはず。このタイルには RUTA DEL MODERNISME と書かれている。日本語で「モデルニスモ (近代主義) のルート」という意味で、モデルニスモ建築* を巡るルートとなっている。
*モデルニスモ建築: 19世紀末から20世紀はじめにかけてカタルーニャ地方で盛んだった芸術様式。サグラダファミリアやグエル公園で有名な Antoni Gaudí (アントニ ガウディ) や、カタルーニャ音楽堂とサンパウ病院を手がけた Lluís Domènech i Montaner (リュイス ドメナク イ ムンタネー) がその代表である。
このタイルは El panot de la flor barcelonés と呼ばれる。panot はカタルーニャ語で「タイル」を意味するが、現在「パノット」と言えば Josep Puig i Cadafalch (ジュセップ プッジ カダファウ) という建築家によってデザインされたこのタイルを指すことが多い。
彼は1867年にバルセロナで生まれ、建築や芸術のみならず政治や歴史の業界でも活躍した人物で、カタルーニャのモデルニスモ運動の重要人物の1人でもある。ガウディの作ったカサバトリョの横にある可愛い家、カサアマトリェール (casa Amatller) は Puig i Cadafalch の作品。バルセロナにあるスペイン広場も実は彼が手がけた作品の1つ。
本題のタイルの話に戻るが、あの花の模様のタイルはもともとカサアマトリェールのために設計されたものだったが、のちに Eixample (エシャンプラ) 地区の多くの道の舗装を施すために使われるようになった。バルセロナの地面には20種類以上のタイルがあって、タイルを見たら道がわかるほどそれぞれ独特で美しい。その中でもこの花のタイルが広範囲で使われているかつ、1番歴史があるものなのだ。4枚の花びらが描かれたこのタイルは本当に可愛いから、Tシャツやチョコレートやキーホルダーなどお土産用商品にもなっていてなおさら見かける機会が多くなった。
このタイルは 20×20 cm で頑丈さと維持のしやすさがなんといっても特徴。20世紀初頭は都市の (特にこのエシャンプラ地区の)「泥」が問題視されていたため作られた。当時はタイルの舗装にあたって経済的問題があり、市にあまりお金がなかった。だから彼はモンジュイックの天然石を用いたり、安く丈夫なタイルができるようにたくさんの資料を作ったり、話を色々なところに持ちかけた。その末にできたこの panot (パノット) の登場でその問題は上手く解決された。1906年に5種類のタイルのモデルが考案された。が、需要が少ないモデルは廃止されていき、1番人気があった花が今もたくさん残っている。
このタイルはビルバオにあるタイルともよく似ていると言われている。もちろんこれも彼によって設計されたもの。ビルバオはバルセロナと違って雨が多い都市で、花だけでは水が溜まってしまうということから線が付け加えられた。ただ似ているというだけでなく、実は「雨が多いという都市」のニーズにも応えている。このビルバオのタイルはギニアやアルゼンチン、その他南米の国にも輸出された。
バルセロナの街を歩くときはその道のタイルに注目してみて違いを楽しんでみては…。
adéu :)
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