今日は案外知らないグエル公園の3つのヒミツについて。
・シンボルのドラゴンの正体と錬金術
・その後ろにある賢者の石
・グエル公園と数字の「5」【あれはドラゴン?トカゲ?】
グエル公園のシンボルは一応、ドラゴンだが、モデルとなったのは Salamanra (サラマンダー) という伝説の生き物。古代ローマ時代あたりから「火に強いトカゲ (サラマンダー)」がいると人々の間で考えられていた。サラマンドラ属のヤモリだ!と言われたり、ラテン語でサンショウウオを意味していた!と言われてる。
中世 (15世紀) に Paracelsus (パラケルスス) というスイス出身の錬金術師・神秘思想家が自身の著書『妖精の書』で「サラマンダーは火の精霊であるゆえに炎の中で自由自在に動くことができるが、炎から脱離して生きることは不可能だ。」と言及したことからそのイメージが後世に残るようになった。「火トカゲ」とも呼ばれたその生物は、いつしか錬金術を象徴する動物となり、錬金術師たちから神のように崇めらるようになる。その存在と神秘さを信じ、大切に思っていたのは言うまでもない。
【ドラゴンの後ろのコレは何?】
公園のど真ん中にあるのにも関わらず着眼する人が少ないこの彫刻。…よく見ると石がのっている。
これは…
知る人ぞ知る賢者の石。
【+α 賢者の石とは…】
古代錬金術師たちは「金属を金 (貴金属) に変える何か特別な物質」の探求に精を出していた。
金を作るのに欠かせない賢者の石…どうやったらそれを作れるだろう…
と日々悩んでいた。
不純物が混じった貴金属の中に鉛を落とせば金や銀を取り出せるのだから…鉛に物質を金に変える力があるのだろうか?
みんな必死に賢者の石を作ろうとした。当時は金の生成には物質的な融合だけでなく、神秘的な霊的な力も必要だと考えられていたから、その神秘的な物質も見つけようと試行錯誤した。(そのため「賢者の石」は「哲学者の石」という別名を持つ。飲めば不老不死になれると伝えられている霊薬でもあった。)
火のシンボルである、サラマンダー
錬金術師が探求し続けた、賢者の石
ここまで読めばなんとなく『なぜドラゴン (サラマンダー) の真後ろにこの石があるか』その関係性がわかるだろう。
【+α サラマンダーを用いた理由】
ガウディ (Antoni Gaudi) も、グエル (Eusebi Güell) も古代ギリシア演劇・神話が大好きで、サラマンダーや100本の柱のアイデアをそこから得たとも言われている。中でも『デルポイ神殿のピュートーン』という話が有力らしい。
*ピュートーンはギリシア神話に出てくる巨大な蛇の怪物。ガイアの子とも言われるが、大洪水の後、地球に残った泥から生まれたとも言われる。
【鍵を握る数字の5】
関係しているキーワードが2つある;
・フリーメイソン
・古代ギリシアの美の精髄だった第五元質 (quinta essentia)
まずはサグラダファミリアでも囁かれているガウディの秘密結社フリーメイソンについて。…公園内にはいたるところに5角の星がある。
公園を囲っている外の塀にも数個の「P (Park Güell の頭文字)」があり、文字の中には必ず『五角形の星』が埋められている。
Q. なぜ五角形か?
A. その結社で「5」は重要な意味を持っている数字とされるから。
…
星を見て何か違和感を覚えた人はいるだろうか?
そう、星が下を向いている。普通なら上のイラストのように底辺に2角が面しているのに。なぜ敢えてバランスを崩しているのか?
それは、これがフリーメイソンでは悪魔のシンボルだから。
左上がフリーメイソンのマーク、右上がサグラダファミリアにある彫刻、そして右下はグエル公園を真っ正面から見た時にフリーメイソンの目が浮かび上がるように設計されているという。
公園の階段は合計33 (11段×3)。段数もガウディコードになっているなんて。…33はフリーメイソン結社の組織が33階層あるからとても大事なんだとか。
これに加えて "Quinta Essentia" (クインタ・エッセンティア: 第五元質) をガウディは重んじていたから「5」にこだわったとされる。第五元質とは、古代ギリシア時代から言われている「この世界の自然を形成する四元素: 地・水・火・空気 (風)」の領域を超える神秘的な「エッセンス」が地上界の事物にも含まれているという考えであった。先ほど触れた賢者の石を作るにはこの第五元質が必要だと信じられていた。
5は人間の両手両足と頭、指の本数、五感などからプラトン主義では美の精髄でもあった。
【おまけ①】
なぜ、グエル公園の正式名称は Park Güell (英語) なのか。これには二説ある。
1. 既存していたイギリスの住宅街の大きな公園をガウディは真似たかったから説。
2. カタルーニャ語で Parc Güell と付けたかったが、政府がカタルーニャ語で名前をつけることを許可しなかったから「だったらスペイン語じゃなくて英語じゃ!」とガウディは英語表記にした説。ちなみにスペイン語では Parque Güell と表記する。
【おまけ②】
ガウディはめちゃくちゃ自分の生まれ故郷カタルーニャが大好きだった。そんな政治的な考えも作品の動物に紛れこませている。しかも公園のよく見える場所に。
もし、今の時代に生きていたらカタルーニャ独立運動に参加していただろう。
【おまけ③】知らない人のために
ガウディコードとは、イエスがはりつけの刑を受けた時の年齢33。で縦・横・対角線・四隅の4つの数字、真ん中の4つの数字、どれを足しても合計は33になる。
サグラダファミリアにも私の筆箱にもついてるコレ。
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