BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活10年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。

【言わなきゃ伝わらない】気持ちを汲み取る文化が無い世界。

日本とスペインとイタリアにおけるハイコンテクスト文化ローコンテクスト文化について。(「言わなくても察してくれる文化」と「言わないと何も伝わらない文化」のこと。)

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【前書き】
異文化コミュニケーション学の先駆者と呼ばれるアメリカ人の文化人類学者、エドワード氏 (Edward Twitchell Hall) が1970年代に提唱した2つの概念;

① ハイコンテクスト文化
➡︎ 察する / 曖昧な表現

② ローコンテクスト文化
➡︎ 言葉で伝える / 直接的な表現

日本人は、ハイコンテクスト文化の代表である。日本語には、直接的な表現が少なく、互いに相手の気持ちを察そうとする。「言わなくても伝わるよね」「なんとなく言いたいことは分かるよ」私たちからすればフツウなこの2フレーズを、西洋人は理解し難いようだ。

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ローコンテクスト文化代表は、ドイツ・アメリカ・スイスの3ヶ国。主な特徴は2つ;

・ネイティブ間に共通の価値観・感覚が少ない
・相手が言語で表現した内容のみを理解する傾向

意外にも、南ヨーロッパの国々は、世界的に見ると『ダイレクトに言葉を発しない文化』に入るらしく、スペインとイタリアは日本と同じ、ハイコンテクスト文化に分類されている。

が、実際に生活をしていてそうとは思えない。 

 

【スペインとイタリア】
両国とも『言わなきゃ伝わらない』文化を確実に有している。中には、空気が読める・気持ちを察してくれる人もいるが、やはり日本人特有の『言わなくても分かってくれる』アレには到底、敵わない。

海外生活5年半が経過し、だいぶストレートに物事を言う習慣が身についてきた。自分の時間が欲しい時には、カフェのお誘いを正直に断れるようになったし、全く興味がないジャンルの映画に誘われた時には「あんまり興味がない」とそのまま言えるようになった。「こう言ったら失礼かな?」と、変に相手を気遣うことが無くなった。

スペインもイタリアも『本音を伝えること』に重点を置いている。そこから信頼関係が生まれる。

例えば、友達の家に招待されたとする。その子のお母さんは自分をとても歓迎してくれ、張り切って夕食を作ってくれた。食卓に並ぶ数種類の料理。どれも美味しそうだが、特に自信作だと言うメニューには自分の大嫌いな食材が入っている。

この場面、

日本人の多くは『黙って食べる』だろう。嫌いということがバレないように、気を遣って、美味しくなくても美味しいと言いながら。

スペイン人とイタリア人ならどうするか。

まず、その食材が「あまり好きではない」ことを正直に伝える。「苦手なんだ、ごめんね」と言い、全く手をつけない子もいれば「嫌いなんだけど、ちょっと試してみるよ」と、味見する子もいる。

特に、イタリア人は『偽善』を嫌う。何よりも失礼だと考える。確かに、ここで嫌いな食材を言わなければ、またご馳走になる機会があった時にも「ウソ」をつかなければならなくなる。2回目で「実は…」と口を開くと、お母さんは前回騙されていた気持ちになってしまうだろう。もし、私が後からこっそり「実は嫌いだったんだよね」と友達に言うと、その子は必ず「なんで?嫌いなら嫌いって言うべきだよ!」と非難する。「お母さんにバレなくて良かった」と返す子は誰一人いない。

【男女のやり取り】
日本人同士だと「絶対あの子オレのこと好きだ」とか「脈なしかも」と、なんとなく分かる。それ故、好意を寄せる相手にストレートな気持ちを伝える必要がない時もある。逆に、相手のチャットの文面が明らかに素っ気ない時には「あれ?何かしたかな?」と心当たりを探したり「連絡しすぎかな…」と反省してみたり。だから、

・「好き」と言わなくても好意は伝わる
・しつこい相手は無視をしておけば次第に止む

一方、スペイン&イタリアは、真逆。どちらの気持ちも言葉にちゃんと乗せないと…。

【仕事の場面】
大事な契約や給料に関して曖昧な内容があれば自分から言い出そう。「お金の話をダイレクトにするのはいやらしいかな」と、自分の判断で (日本の常識で) 言葉を省いてしまうと、誤解が生じ、問題が起こってしまう。だから「ここまで言わなくても分かるだろう」という考えは、捨てるべき。

シフト: 入りたいのか入りたくないのか
能力や技術: 出来るのか出来ないのか
自信とやる気: あるのかないのか
前提条件: 納得か不服か

辞める時も、文頭で「辞める」と断言し、それから理由を述べる。最初に感謝の気持ちを述べたり、エピソードを入れたりすると上司は『…で、結局何?』状態になりかねない。

【役所等オフィシャルな場面】
朝の8時からビザの手続きで警察署に行っていたとする。待てど暮らせど、呼ばれる気配がない。もうすぐ15時。事務の人とは何度も目が合っているし、午前に会話も交わしている。忘れられていることはない…はず。

➡︎ このシチュエーション、日本人は「朝から待っていることは認知されている」と思い込み、待ち続ける。或いは、周りもみんな待っているし、自分も待っていよう、と我慢するだろう。そもそも日本なら、こんなに待たされないが、数時間待っていれば、警察署の人が「すみません、だいぶ待たれていますよね?」と話しかけてくれるだろう。「用件を伺ってもよろしいでしょうか」と。…だからその時を待つ。しかし、海外では自分から言い出さないと、向こうから聞きになど来てくれない。お客様をあそこまで大切に、丁重に扱う国は日本だけ。

【まとめ】
スペインやイタリアで、現地の人と対等な関係を築いていくのに大切な3点は、

① SÍ / NO をハッキリと
② 自分の本心を述べる
③ 気遣う一言を添える

日本人の相手の心情を推察する力は、生かし続けて良い。が、相手に「読む力」を期待してはいけない。もっと自分を知ってもらいたい、もっと相手を知りたい、と思うのであればたくさん会話をしよう。言葉で伝えよう。この意識の元、生活を送っていれば、自然とコミュニケーション能力が身につき、グローバルの波の中でも、良い人付き合い・仕事が出来るようになる。翻訳者や通訳者だけでなく、海外で生活をする人たちは皆、ハイコンテクスト文化ローコンテクスト文化について正しい認識を持っておく必要があると思う。

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