日本人に『入試の難易度が高い学部』を聞くと、ほとんどの人は「医学部」を挙げるだろう。確かに、スペインでも高い合格点が求められる学部である。…しかし、私の中に【超】がつくほど難しいイメージはない。なぜか。
【ダブルディグリーの存在】
ダブルディグリーとは、2つの学位を同時に取得するコースのこと。例えば、バルセロナ大学の「数学部」と「物理部」両方に籍を置き、並行して学び、卒業すると…
バルセロナ大学 数学部・物理部卒
両方の学位 (肩書き) が得られる。私は勝手にこれを『ダブル学位』と呼んでいるが、日本語では英語をそのまま「ダブルディグリー」と訳す。
日本の大学は「留学」に絡めて、
・日本の大学に3年、海外の大学に1年
・日本の大学に2年、海外の大学に2年
どちらかのパターンで学べば、日本と海外の2つの学位を取得出来ますよ、というプログラムを設けている。この売り (狙い) は、
・国際社会を先導する人材育成
・留学とは違う国際展開の学位
・国際的な教育
スペインのダブルディグリーは違う。「国際的な人」ではなく「より深い教養を求める人」になるために、ダブル学位は存在する。だから国や大学を跨ぐことはあまりない。1つの大学の2つの学部に籍を置くイメージ。
入学しようものなら、医学部や法学部より高い合格点が必要。それでも『ダブル学位』は、年々人気を増している。
なぜ、人気なのか?
卒業までに何年かかるのか?
なぜ、その期間なのか?
どれくらい難しいのか?
今日は、この4点について。
【① なぜ人気?】
主な理由は「就職の選択肢が広いから」と「極めたい学問を2つ同時に学べるのは一石二鳥だから」だ。基本的にダブル学位は、自分で自由に2つの学部を選ぶのではなく、もう既に決まってある組み合わせの中から選ぶ。
理系の例
・物理+数学部
・生物工学+薬学部
・情報通信エンジニア+数学部
文系の例
・哲学+経営政治学部
・国際研究学+バイリンガル法学部
・法学部+犯罪心理学
・報道+視聴覚情報学部
・翻訳通訳学+観光学部
・行政学+ビジネスマネージメント学部
【② 卒業までに何年かかるの?】
ポピュラーな「物理+数学」を例に説明をする。
普通の学位コースであれば、
物理学部: 4年
数学部: 4年
だから卒業するのに少なくとも 4+4=8年 かかる計算になる。だが、既定のダブル学位コースだと、5年で卒業可能。…どうすれば5年に収まるのか。
【③ なぜ5年?】
上記の組み合わせから、なんとなく想像がついた方もいるだろうが、既定のものは2つの学部間に共通点がある。極端な話、
医学部+文学部
法学部+ワイン学部
音声学+スポーツ学部
だと、5年では済まない。共通点というのは「履修する科目の被り」である。数学部でも物理学部でも学ぶ共通の科目があるがゆえ、3年も削れてしまう。
* ちなみに自分で好きな学部を2つ選んだ場合は、7年〜10年かかる。
【④ どれくらい難しいか?】
最も人気なダブル学位コースは、マドリッドのコンプルテンセ大学の「数学+物理学部」で、その合格点は、なんと14点満点中13.7点。全科目満点を狙うしかない。
ノーマルの学位コースの医学部の中で、最難関と言われているマドリッド自治大学の昨年度の合格点は、13.1点だった。
スペインには、この13.1点よりも高いコースが十数あるから、日本のような「医学部= ものすごく難しい」というイメージがないのかもしれない。医学部より数学部、生体臨床医学部、航空宇宙工学部、物理部の方が難しい大学もあるし…。
【ダブル学位の位置づけ】
ノーマルの学位コースと、ダブル学位は、大学と大学院のように離れていない。だから「どこを第一志望にするの?」『バルセロナ自治大学の物理と数学のダブル学位にしようと思ってる』という会話に驚かない。ごく普通に、進路を選ぶ上での1つの選択肢となっている。
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