BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活10年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。

【心理学と哲学の違い】バルセロナ大学哲学部生が分かりやすく説明してみた

おとといの夜、国語が大のニガテな弟 (21歳) から電話がかかってきた。

心理学って何?哲学って何?辞書引いたけど分からんかった。 

『弟が分かる説明 = 全員が100%分かる説明』…(笑) 出来るだけ日常的な言葉を使いながら、頭に浮かぶ限りの違いをどんどん書き出してみる。

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⚠︎ 個人的な見解。

【10の違いをピックアップ】f:id:kaedetaniyoshi:20210318185434j:plain【一言で言うと…】
心理学 ➡︎ 人間の心の動きを理解したい
哲学 ➡︎ 世界の在り方を理解したい

【心理学】
語源は、ギリシア語の、

Psyché+logos = 魂の研究

人間の心 (精神) と行動を研究する学問であると言える。私たちが生活の中で受ける刺激 (音、記号、感覚、痛み、熱い、冷たい、光など) を分類し、これが『行動にどのような影響を与えるか』を説明しようとする。哲学より、具体的。人間はどのように感覚を通して情報を受け取り、解釈をするのか。

〜心理学的問題例〜
・過去の約束の中で最も大切だったものは?
・自分の人生に影響を与えた人物を3人挙げるなら?
・冒険をするならどこへ行きたい?なぜ?
・どういう人を「真面目」だと感じる?
・自分の性格の中に嫌いな部分はある?

【哲学】
語源は、ギリシア語の、

Philo+sophia = 智への愛

哲学にはゴールがないが…。強いて言うなら、現実を理解し、上手く説明すること。扱う範囲が非常に広く、モノの存在、知識、真実、道徳、美、心、言語、宗教、宇宙、医学、論理など、超越的な (人間が考えられる域を超えた) 問題にフォーカスを当てている。心理学と違い、道具や研究施設を必要としない。概念の分析や思考実験、カテゴリーの区別など、生まれた時から持っている能力 (考える力) を通して研究を行う。

カテゴリーの区別の例は、

「良いこと・悪いこと」

「生・死」

「人間・ロボット」

この『分類の区別の基準』をきちんと筋道を立てて説明していけるのが哲学者。

〜哲学的問題例〜
・「本物」を見極める方法は?
・誰も見ていなかったら悪いことをしても良い?
・運は存在する?
・命の重さは人によって変わる?
・「愛する・愛される」...簡単なのは?

 

【もう少し区別をしたい人へ】
心理学も哲学も両方『人間の行動』を分析するが、違いは…

・アプローチ
・目的 (= 目指すゴール)
・道徳や倫理の概念
・言語

である。心理学は、経験と統計をベースとする。実験と仮説と実験。人間の行動を理解し、そこから心の治療法や人間関係の分析、コミュニケーション能力の向上を検証する。

哲学は、『人間の正しい行い』についても研究をするが、心理学はしない。

哲学: 人が守るべきルールとは?
➡︎ 大切な根本 (原理)

心理学: 国によって良いことと悪いことが違う場合がある。それぞれどのようにルールが存在しているのだろう?
➡︎ 尺度 (基準)

言語に関しては、

哲学: オリジナルの言い回しや、表現を自由に使って自分が最も理解しやすい書き方をしよう!まだ誰も使ったことがない単語を生み出しちゃおう!

心理学: 世界中の研究者が理解出来るように、協力して研究が行えるように、言葉の意味を揃えよう!

哲学は、言葉の意味を理解するより前に、各哲学者の本を読みあさり、その『哲学者』を知ることに多くの時間を費やす。まずは、その人の思考回路を把握しなければならない。そして、書き残された言葉の意味を出来るだけ本意 (本当の考え) に近い状態で拾い上げ、更に磨きをかける。

解剖用語が世界のどこの国でも共通のラテン語で書かれてある理由と、心理学の『言葉の分かりやすさ』は似ている。

【豆知識】
哲学者が辿り着いた答えと、心理学者が導き出した答えが一致しないことが頻繁にある。

以上。

 

ここから下は、専門用語や偉人の名前など加わり、小難しい内容となる。心理学と哲学の歴史をざっくり知りたい人用。

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【心理学の歴史】
個人的に重要だと思う10の要点を挙げると…

① 紀元前4世紀頃にソクラテスとプラトンが心理学の基盤となる考えを作った。それに影響を受けたアリストテレスが、感覚や記憶について筋道を立てながら論じ始めた。 

② 中世 (476年-1492年) のヨーロッパは、キリスト教が強い権力を持っていた。

③ デカルトが身体と魂の『二元論』について、スピノザが『心は環境の影響を受ける』と述べた数十年後に出版された、ヴォルフ (Christian Wolf) の本から「心理学」という言葉が流行り始める。

④ 18世紀後半にフランス・ヨーセブ・ガルが『骨相学』を生み出す。動物磁気にも注目が集まる。

⑤ 19世紀に『科学心理学』というジャンルが誕生。生物学が発展する。この時代に重要な人物は、PIERRE PAUL BROCAと、GUSTAV THEODOR FECHENERと、CARL WERNICKEの3人。脳のブローカ野とウェルニッケ野は、BROCAとWERNICKEの名前から来ている。ダーウィンの進化論も同時期に大きな影響を与えている。興味がある人は、遺伝学者として有名&ダーウィンの従兄であるFRANCIS GALTONと、名精神医学のBENEDICT MORELも合わせてチェック。

⑥ 1879年に実験心理学の父と呼ばれているドイツのWILHELM WUNDT (ヴィルヘルム・ヴント)が、世界初の心理学実験室を作った。HALLもアメリカに似た実験室を作った。

⑦ 19世紀後半から20世紀前半にかけて、原理主義の代表とも言えるWILLIAM JAMES (ウィリアム・ジェームズ) が、非常に面白い『意識の流れの理論』を提唱した。一方で、構造主義代表のEDWARD TITCHENER (エドワード・ティチェナ=) が、心の構造を展開した。

⑧ ロシアに『反射療法』が出来た。重要人物は、IVAN PAVLOV (イワン・パブロフ)と、ロシア反射学の創始者VLADIMIR BEKHTEREV (ウラジーミル・ベヒテレフ) の2人。ここから『精神分析学』と『行動主義心理学』が生まれる。

⑨ 20世紀になると、超有名なフロイトが精神分析学を発展させ、現代の心理学の基盤が作られた。心理学の起源はココだと考える学説が多い。生物学、医学、薬学が一気に発展し、行動神経科学、神経心理学、精神薬理学が生まれた。人間の行動や心理にフォーカスが当たり始める。

⑩ 1960年代から『認知心理学』が登場。アメリカのAARON BECK (アーロン・ベック)、ALBERT ELLIS (アルバート・エリス)、そして認知臨床心理学の父と言われるGORGE KELLY (ジョージ・ケリー) が、この時代の鍵となる。『人間性心理学』もこの頃に生まれた領域である。深く学びたい人は、CARL ROGERS (カール・ロジャーズ)と、ABRAHAM MASLOW (アブラハム・マズロー) も。

【哲学の歴史】
6つにまとめてみた。

① 西洋哲学の起源は、紀元前7世紀の古代ギリシア時代。最初の哲学者と言われているのは、ギリシア七賢人の1人とされるTALES DE MILETO (タレス・デ・ミレート)。彼は、哲学者・天文学者・数学者だった。

② プラトンやアリストテレスが登場するのは、紀元前4世紀頃。神話や宗教に依存することなく、合理的な分析と議論を通して全ての宇宙的かつ人間的現象を説明しようとしたギリシア哲学は、紀元前7世紀から紀元前3世紀に興った。

③ 1世紀から15世紀のルネサンスまで、西洋を支配していたのは、キリスト教思想。キリスト教やカトリックの思想に大きな影響を与えたのは、AGUSTÍN DE HIPONA (アウグスティヌス) と、TOMÁS DE AQUINO (トマス・アクィナス) だった。この時代の特徴は、哲学的思考をカトリック神学へ従属させること。そして、全ての人間文化もカトリック教会へ奉仕すること。

④ 16世紀になると、デカルトが登場し、知識と人間の反省 (目の前に現れることについての思想や意識を自分の内面に向け、真の知識を得ようとする行為) にフォーカスが当たる。

⑤ 15世紀から17世紀にかけての科学革命は、西洋だけでなく、世界の文化史を変えた。

⑥ 17世紀から18世紀にかけては、啓蒙主義と呼ばれる知的運動が起こる。中世的な (古くさい) 社会や思想を打ち破り、新しい時代の思想を人々に教えて行こう!という運動。重要人物は、経験論のヒュームと、合理主義のカント。

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