BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活10年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。

【私の好きな哲学書】初心者がハマる5冊+上級者向け5冊

日本の本屋さんに行くと…

『〇〇時間で学べる哲学!』

『哲学入門』

『〇〇分の哲学学教室』

『これ1冊で世界が変わる哲学』

『武器になる哲学』

のように、誰かがまとめてくれている本がたくさんある。数年前は、ハーバード大学の教授が自身の政治哲学の授業を書籍化した『これから「正義」の話をしよう』という本が話題になった。が、これらはどれも伝言ゲーム

偉人の説を著者が理解し、解釈し、噛み砕いて言葉にしている。その人の知っている言葉・知識の範囲内で語られること。

外国人著者であれば、私たちは翻訳者の言葉を読んでいる。つまりもう一歩、哲学の本質的な概念から遠のいてしまっている。《偉人ー著者ー翻訳者ー自分》哲学は既存の形容詞では表せないほど広い。そして、答えがない。だからこそ、哲学者の王道作品をダイレクトに読む方がより楽しめる気がする。

今日は、哲学初心者の人でも読みやすい本を5冊+私の好きな哲学書を5冊 ➡︎ 計10冊、紹介。

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★マークがついている本は、まだ日本語で読んだことがない。

【読みやすい作品TOP5】
TOP1「メノン」
著者: プラトン

メノンという青年が、おじいさんになったソクラテスに様々な質問をしていく対話形式。非常におすすめ。作品全体の核となっているテーマは「徳」について。

善い人間=他人に有益な人間?

徳=有益?知識?

有益=健康、強さ、美しさ、富?

これらは生まれつき?

そもそも「徳」は教えられるものなの? 

青、赤、白は、色の種類であって「色」ではない。直線、円形、正方形は、形の種類であって「形」ではない。これと同様に「徳」について考えてみようよ。

と、ハテナにハテナを被していく流れ。色、形、美しさ、善いもの、悪いもの、魂、有益、知識など、小テーマが複数ある。これを読むと、かの有名な「無知の知」にたどり着く。いかに、私たちは無知であるか。いかに、知っているという思い込みで日々生きているのかを思い知らされる。

読後に最も驚くこと…

それは…

これが『紀元前388年〜385年』に書かれた作品であるということ。まだプラトンの哲学者としてのピークが来ていない頃。

メノン (岩波文庫) [ プラトン ]

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感想(2件)

TOP2「読書について」
著者: ショーペンハウアー

ショーペンハウアー哲学の入門書としても有名な薄めの本 (150ページ弱)。この作品のメインとなる主張は「つまらない本を読んでも、ものすごく為になる本を読んでも、同じ時間を消費する。人間の命は短く、時間と力には限りがある。それならば、良書のみを読みなさい。」

そこから、良い本を読むための条件、何のために本を読むのか、価値のある知識とは…と、様々なテーマに枝分かれしていく。

「本を読むとは、自分の頭ではなく、他人の頭で考えることだ。絶えず本を読んでいると、他人の考えがどんどん流れ込んでくる。自分の頭で考える人にとって、マイナスにしかならない。」と書いてあるため、読書という行為を批判しているように見えるが、実はそうではない。「ただ、有名な本を読めば良いというものではない。自分で考えずにただ読んでいても、何も得られない。自分の頭で考えながら問題意識を持ち、内容を自分のこととして捉えることが大切だ。」と、文字を読んで考える大切さを強調している。 

読書について改版 他2篇 (岩波文庫) [ アルトゥル・ショーペンハウアー ]

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感想(9件)

TOP3「幸福について」
著者: ショーペンハウアー

日本語で「幸福とは」なんて文字を見ると、宗教ちっくに思えるが、哲学は「信仰」ではない。お医者さんが医学を学ぶように、アスリートがトレーニングをするように、哲学者は人間の「智」を追求する。この本は『人生』について頭に浮かんだアイデアを走り書きしたような感じ。ショーペンハウアー名言がしっかり詰まっている。悩みがある人におすすめ。

青年期の立場から見ると、人生は無限に長い未来である。老年期の立場から見ると、極めて短かった過去である。一日一日が小さな一生なのだ…。

「あ〜」となる思考が多く、すんなりと理解出来る。よくある『自己啓発本』とは全然、深さが違う。

「人生は厳しいが、その厳しさを克服し続けること、成長し続けることこそが人間の幸福である。」

「教養がある人は、孤独を愛し、より幸福な人生を送ることが出来る。孤独は、教養を、幸せを得られる最高の環境である。」

今のこのコロナのご時世にぴったりな一文を抜き出すなら「人は不幸になると、急に過去の平凡な日々を憧れる。しかし何事もなく終わった、普通の、当たり前の1日をなかなか幸せと思えない…。」かな。 

幸福について 人生論 (新潮文庫) [ アルトゥル・ショーペンハウアー ]

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感想(5件)

TOP4「生の短さについて」★
著者: セネカ

人生は、決して短くない。使い方次第で、短くなったり長くなったりする。だから有効に時間を使うことが大切だ。いつ死ぬかわからないのに「老後にしよう」と後回しにするな!仕事 (他人) のために時間を使いすぎるな!自分のためにたっぷり使いなさい!と、セネカは『多忙』を批判する。

過去、現在、未来

あまりにも忙しい日々を送っている人は「今」を振り返る時間を持っていないだけでなく、価値がある「過去」を持っていない。「現在」だけを生きている。線ではなく、点で生きている。そもそも、振り返ったとしても「その時」を思うように生きられなかった後悔しか残っていないから、振り返らないだろう。「良かった」と思える過去が多ければ多いほど、人生に厚みが出てくる。

というような、道徳書。

生の短さについて 他二篇 (岩波文庫 青607-1) [ セネカ ]

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感想(3件)

TOP5「幸福論」★
著者: ラッセル

1930年に出版されたこの、ラッセルの作品の良いところは、幸せに生きるには「どうやったら幸せになれるだろう?」ではなく、まずは「不幸の原因」と「不幸を克服するための方法」から論じてくれるところ。そのベースが出来上がった状態で『幸福をもたらすものは何か』に入っていく。

世界三大幸福論の1つ。

『幸せになるには、自分の興味を可能な限り広げ、好奇心旺盛に世界を見なさい。様々なモノや人に興味を持ちなさい。』

・幸せを感じよう
・夢を持って生きよう
・誰かを幸せにしよう
・自分の能力を高めていこう
・何事も良い経験として捉えよう 

幸福論(ラッセル) (岩波文庫 青649-3) [ ラッセル,B.(バートランド) ]

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感想(7件)

⬇︎ このNHKの番組、為になる。母が録画してくれていて、帰国した時に見て気に入った。YouTubeに数本上がっているのを見つけた。

  

 

【私の好きな哲学書TOP5】
TOP1「論理哲学論考」
著者: ウィトゲンシュタイン
通称: トラクタトゥース

論理学、分析哲学、言語哲学を知らない人が読むと、何を言っているのかさっぱり分からない。でも、分かる人には分かる。最高に面白い名著。哲学を始めて3年目の時に出会った本で、ページをめくる度、ものすごく感動したのを覚えている。初めて教科書以外で線を引いてしまった本。それくらい、脳裏にあった思考が綺麗に並べて順を追って整理されていた。1番好きな哲学の作品。

論理哲学論考 (岩波文庫) [ ルードヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン ]

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感想(9件)

TOP2「善の研究」
著者: 西田幾多郎

西田哲学の代名詞「善の研究」を、オリジナル言語で読める君は相当ラッキーだと、教授から言われ、帰国時に読んでみた。その意味がわかった。これは、西洋哲学から入っている人間が読めば、数倍楽しめる。和の思想要素を客観的にも汲み取れるから。とは言え…、日本語と言えど…、読み進めるのがすごく難しかった。「超難解」「途中で読むのをやめる人が後を絶たない」と言われているだけある。想像のはるか上を来た。ページを行ったり来たり行ったり来たり…。読み応えと真新しさがあった。前半部分は、スペイン語で読んだカントの『純粋理性批判』よりも難しかった。しかし、カントとヘーゲルの思考を理解できていれば、西田のアイデアは入ってきやすいと思う。次、日本に帰国したら、もう一度手に取り、ゆっくりじっくり、もっと深いところまで読みたいと思う。愛、純粋経験、主体と対象、自我、自覚、生、他者、そして善。

善の研究改版 (岩波文庫) [ 西田幾多郎 ]

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感想(5件)

TOP3「色彩について」★
著者: ウィトゲンシュタイン

言語ゲームと色彩学がまさかここまで深く交わるなんて。この色彩論理学の展開は、ウィトゲンシュタインにしかできなかった。ゲーテを批判し始めたあたりは、感心した。この作品の中で、最初に挙がったアプリオリの命題は『透明な白はあり得ない』だった。私はこの箇所を読んで、透明な白は存在すると思った。それから更に『灰色が輝くことはない』と、定義したが、またしても「そうかな?」と。論理哲学論考に比べると、反論ポイントが複数あったように感じたが、色と論理のアイデア自体は面白かった。濁色、中間色、輝度、灰色の概念。このテーマに関して、カントも深く論じていたとは。

色盲の人の色の概念と通常の人の色の概念が異なっているが、その「異なっている」と判断するベースが通常の人にあるのはいかなものか。通常の人と異なることが全て欠陥となるとは限らないだろう?

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赤+黄 = オレンジ
紫+オレンジ ≠ 赤

赤と緑の「中間色」は、黄

しかし、黄色を「赤っぽい緑」とは言えない。
= 赤と緑は補色同士だから混ざると打ち消しあって、灰色になってしまう。つまり、中間色 ≠ 混合色。混合色 (例: オレンジ) は、2つの色 (例: 赤と黄) を混ぜれば生まれる。しかし、中間色はそうではない。= 妥当性がないんじゃないか? = 色の関係を円環に当てはめるのは間違っている。色という存在を、量や空間的な尺度に当てはめられない。= 中間色が理解できない。

TOP4「人間本性論」★
著者: ヒューム

これも日本語では読んだことがない。スペイン語で Investigación sobre el entendimiento humano という本。きっと「人間本性論」で合っている。

小さい子供に「色」や「味」のアイデアを与える時、私たちは実物を通して教える。「これ食べてみて!甘いよ〜」とか「これ綺麗な色だね、オレンジ色って言うのよ」と。反対に、アイデアから印象を生じさせることはしない。つまり、印象 (刺激) によってアイデア (イメージ) が生まれる。

夜明けに鳴く鳥と太陽は関係があるのか?多くの場合「太陽が昇るから鳥は鳴く」と解釈をするが、逆に「鳥が鳴いたから太陽が昇ってくる」とは言えないのだろうか。

こういった因果関係について説いている作品。 

TOP5「ニコマコス倫理学」★
著者: アリストテレス

この本のテーマを一言で表すと『中庸の徳』。最も惹かれた箇所は、ギリシア時代に考えられていた「真」を認識する方法についてのところ。

- Physis
- Téchne
- Episteme
- Frónesis
- Nous

…ちょっともう6000字近いから、今日はこの辺りで終わる。長くなりすぎた。

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