イタリア人はスプーンを使ってスパゲッティーを食べることがあるのか。やはりフォークだけの方が上品なマナーなのか。
【私のイタリア歴】
通い始めて3年目になる大学があるのは、南イタリアのカラブリア州 (国をブーツの形に例えるとつま先部分) だが、旅行や生活をしたことがある都市の数が多いのは断然、北。だから割と偏りのない『本場の食べ方』を見てきたつもりだ。
【みんなの食べ方】
スパゲッティーを食べる時にスプーンを使っているイタリア人を一度も見たことがない。目の前で食べている相手だけでなく、周りのお客さんたちも。
スープとデザートを頼んだ時以外、スプーンが出てくることはない。いつもナイフとフォークのみ机上に用意されている。
私は海鮮パスタで28ユーロ以下を目安としてお店を選んでいるから、高級なレストランはどうなのか分からない。イタリア人の友人と行くお店の平均は南15ユーロ、北22ユーロ。
ファーストプレートとセカンドプレート用に、フォークが2本ずつ置かれていることはある。
【一般家庭ではどうなのか】
北イタリアでは、ヴェローナ、ヴェネツィア、パドヴァ、ヴィチェンツァ、トリノ、ミラノ、モデナ。南は、カラブリアの家庭でご馳走してもらったことがある。家族が集まるクリスマスの食事も、普段のご飯も、フォークしか出てこない。
【使う説】
「スプーンを使ったら行儀悪いんでしょ?」と、過去に二回聞いたことがある。数年前に北イタリアで二十代後半の子に聞いた時には『まあね、でも高級レストランではスプーンとフォークでスパゲッティーを食べる方が良しとされているんだよ』と教えてもらった。去年、南イタリアで二十代前半の女の子たちと食事マナーの話題になった時は、ほぼ全員が『スプーンを使って食べるのは行儀が悪い』と答えた。1人だけ『使っても別に良い、マナー違反だとは思われないよ』と。
私は、フォークだけ派なので現地で指摘された経験はない。
日本に帰ると若い女性が当たり前のようにスプーンを使って長いパスタを食べている光景をよく目にする。正直、違和感を感じる。
だが、行儀が悪いとは思わない。
ラーメンの麺を一度、レンゲに乗せて食べるかどうか。お寿司は箸か手か。結局は、食べる国の文化、その場の雰囲気、そして個人の好み。
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イタリア語で検索エンジンのトップに出てきた6記事を読み、まとめてみた。
【正しい食べ方】
長いパスタであっても、ナイフで切ったり、スプーンを使って食べるのはNG。時計回りに巻く時、お皿とフォークが垂直になってもいけない。斜めに傾けるのが本場イタリアの正しい食べ方。フォークをグサッとパスタに突き刺すのもNGで、先端部分のみを使ってクルクルすべき。
① 大きすぎず、小さすぎない、このサイズ (下の写真) のフォークを用意。
② 少量のパスタ (2-4本) を先端部分に絡め、静かに素早くサッと時計回りに巻く。この時、必ず一口サイズになるように本数は調節する。
③ お皿の少し端の平らな部分に持って行き、再度クルクル。(取ったパスタを残りの部分から離すため。)
④ よく回す。口へ運ぶ際、フォークにパスタが綺麗に絡まるように。もし、余分な長いパスタがついてきた場合は、上下に軽く振って落とす。
⑤ 一口で食べる。巻きが大きかった場合はもう一度、本数を減らしてチャレンジ。
【結果】
この他にも色んなワードで調べてみたが、スプーンはNGと書かれてある記事数が圧倒的に多かった。だから『使わない方が良いマナー』と言えそうだ。しかし、少数派であれど、イタリア人の中にもスプーンを用いる人はいる。
➡︎ 絶対的な『正しい食べ方』は無い。
ちなみに、行儀が悪いのは満場一致で、
① すする
② 切る
③ 一口で食べきれないサイズに巻く
【動画で見たい人へ】
正しい食べ方というタイトルのものではなく、イタリア人が何気なく食べている様子が分かる動画を2本載せておく。
1本目
ナポリのグルメを紹介するビデオの一場面。
長いパスタは ⬇︎ 10:30から15秒。
2本目
続いて、カルボナーラの作り方 (5分) の動画の最後の食べるシーン。4:45あたりから一瞬だけ、私がイメージするイタリア人のおじいちゃん風スパゲッティーの食べ方がうつる。
見惚れる上手さ ⬇︎ そして美味しそう…。
【おまけ①】
もし、イタリア人の前で作ってもらったスパゲッティーをナイフで切るとどうなるか…(笑) おばあちゃんvs外国人 ⬇︎
1分20秒のところで、男の子が「スプーンを使った方が (パスタは) 簡単に食べれるよね」と言うと、イタリア人女性はショックを受ける。
このシーンからも、スプーンを使ってパスタを食べることは、外国人が犯してしまう『典型的な間違い』であると分かる。
【おまけ②】
2015年に上映された『ブルックリン (Brooklyn)』という映画の中には、イタリア系アメリカ人の男の子がスパゲッティーをフォークとスプーンを使って食べるシーンがあり、それを見た多くのNY在住イタリア人らは「a fork "is all you need". (1本のフォークこそが全て。)」と批判したらしい(笑)
そのワンシーンは、こちら (Youtube)。
舞台は1950年代。イタリア系アメリカ人の誠実な男の子トニーに恋をしたエイリスというアイルランド人の若い女の子が、彼の家の夕食に招待された場面。トニーの家族に良い印象を与えるために、彼女は事前にイタリア人の友人からパスタを正しく食べるレッスンを受けていたようで…それがスプーンとフォークで食べる方法だった。行儀よく食べているつもりの彼女を見たトニーの両親と兄弟は違和感を覚え、お父さんはお母さんに目で合図をする。我慢出来ないお母さんは直接エイリスに『その食べ方は誰に教わったの?』と問う。
この2分弱の映像の中で最も上手く「イタリア系アメリカ人」を表現していると思った箇所は ⬇︎ ココ。
弟役の小さい男の子がお父さんに反論する時の手(笑) 言葉は英語なのに監督の細かいこだわりが垣間見える。
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