多くの日本人から「似ている」と思われているスペイン語とイタリア語だが、実際にこの二言語で生活をしていると明らかな違いを度々感じる。今日はその中でも、言語のダイレクトさに焦点を当てる。
【どちらがよりストレートな言語か】
お礼を言う時、何かを祈る時、頼みごとをする時など、場面によって異なるが、スペイン語の方がストレート。文法的に見ても、日常生活でそれぞれのネイティブ話者が用いる表現を見ても、自分が話していてもそう思う。
お礼を言う時
スペイン語のお礼はあっさりしていて個人的に好き。「迅速な返事をありがとう!」「教えてくれてありがとう!」「今日はどうもありがとう!」と、スペイン人はストレート且つシンプルに感謝の気持ちを相手に伝える。
Gracias por ayer!
(昨日はありがとう!)
Gracias por invitarme!
(招待してくれてありがとう!)
Gracias por el regalo!
(プレゼントありがとう!)
一方で、イタリア語は文の始めと終わりをお礼で挟むことがある。終わりの方は Grazie lo stesso. か Grazie ancora. だが、これらはスペイン語にはない表現。1番近い訳は "Gracias otra vez." になると思う。でも、ニュアンスが違う。Grazie lo stesso! は、相手に何か質問やお願いをしたけど、良い返事が貰えなかった時に使う。例えば、
A「テスト範囲わかる?」
B『ちょっと待って!見てみる!』
A「ありがとう!」
B『…ごめん、学校に紙を忘れた。』
A「あ、大丈夫だよ!」
この時、Aは最後のセリフのあとに Grazie lo stesso! (わざわざ見てくれてありがとね!) と言う。解決しなかったとしても、自分のために時間を割いてくれてありがとうと感謝を述べる。Grazie ancora. は、既にお礼を述べたけど、最後にもう一度感謝の気持ちを伝えたい!という時に言って、会話を締める。どちらもイタリア人らしい表現。
何かを祈る時
相手の健康、成功、無事、幸せを祈る表現「〜ですように」は、スペイン語が圧勝。「早く良くなりますように」「上手く行くといいな」「早く解決するといいね」「今日が良い日になりますように」「もっともっと歳を重ねれますように」「神からのお恵みがありますように」など、スペイン語圏の人が普段の会話で使う祈りや願いの表現の数は限りない。会話の締めは大体、相手の何かを願って終わる。
Que tengas un buen día!
(良い日にしてね!)
Que te vaya bien!
(楽しんでね!)
Que tengas mucha suerte en tu examen!
(テスト頑張って!)
あまりにも口語でよく使うため、一般的に Espero que の Espero (私は〜を願う) は省略され、Que から言い始める。
スペイン語の Que tengas un buen día! (君が良い日を過ごしますように!) をイタリア人は、普段シンプルに一言で Buona giornata! (良い日を!) と言う。「頑張って!」も一言 In bocca al lupo! だけ。
頼みごとをする時
スペイン人は挨拶後いきなり本題に入るため、用件がすぐに分かる。とても良い好き。対するイタリア人は「忙しいところごめんね。ちょっと質問して良い?」と前置きからスタートする。テスト期間中は仲の良い友達間でも必ずと言って良いほどこの『遠慮 (気遣い)』が見られる。「お忙しいところすみません」が飛び交う日本社会に近い何かがある。
文法の話
スペイン語はイタリア語よりも命令形を使う頻度が高い。それに加え、いつも文の主語、間接目的語、目的語がはっきりしている。
🇪🇸 Se lo diré al profesor.
🇮🇹 Lo dirò al professore.
イタリア語は私にとって物足りない。
スペイン語の接続法はとても便利。
Supongo que ella venga a la fiesta.
接続法 (たぶん彼女はパーティーに来る)
Supongo que ella viene a la fiesta.
直説法 (たぶん彼女はパーティーに来る)
接続法を使うと、彼女が来る可能性が低いことが伝わる。しかし、イタリア語は Immagino や Credo を使って同じように可能性や疑いの度合いを間接的に相手に伝えることが出来ない。この場合、間接的であれど、動詞の活用一つでその度合いを伝えれるスペイン語の方がストレートだと感じる。
丁寧な話し方
ストレートな言語=敬語がない言語という概念は間違い。スペイン語にもイタリア語にも敬語は存在する。知らない人や目上の人と話す時は動詞の活用を「君」ではなくて、丁寧な「あなた」に変える。ストレートとは、そう言った敬意の有無、ベクトルの向きではなく、相手との距離+話の核に迫るまでのスピード。
【まとめ】
それぞれに「秀でている表現」が存在するため、一概に〇〇語の方がストレートな言語とは言い難い。しかし、スペイン語の方が多くの場合、イタリア語よりダイレクト。
【おまけ】
相手の注意をこちらに向けてもらう時に言う「ねえ」や「ほら」は、スペイン語では Mira! (見て!) で、イタリア語では Senti! (聞いて!)。イタリア語は「聞く」を大切にしている。別れ際によく使う「チ・センティアーモ!」が良い例だ。直訳すると『お互いに聞き合おう!』だが、意味は『連絡し合おうね!』で、日本人の言う「またね!」と似ている。
イタリア人
Ciao, ci sentiamo!
(ばいばい!またチャット (電話) で!)
スペイン人
Ciao, nos vemos!
(ばいばい!またすぐに会おう!)
こんな当たり前の会話からもそれぞれの「国」と「文化」が垣間見える。言語は面白い。
*ちなみにスペイン語の Oye! (オジェ!) は、イタリア語の Senti! (センティ!) より Ehi! (エイ!) に近い。
おすすめ記事: