BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活10年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。

【どんな勉強をするの?】スペインの大学の哲学部

スペインの大学の哲学部について色々プレゼン。 

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⚠️ この記事は、バルセロナ大学 (Universitat de Barcelona)哲学部 (Filosofía) バージョン。

【必須受講科目】
・哲学諸問題 I-III
・言語哲学 I-III
・倫理I-III
・数理論理学
・論理学
・人類哲学
・科学哲学
・古代哲学史
・一般哲学史
・天文学
・宗教学
・自然神学
・認識論 I-II
・現代哲学
・政治哲学 I-II
・形而上学 I-II
・美学 I-II

*ローマ数字は「美学I-II→美学①と②がある」ってこと。

【何が学べるのか】
私はスペインで丸々3年哲学にどっぷり浸かり「知恵を探求する」ことにハマった。自分の世界を広げるというよりは、根本を掘り下げ、どんどん核心に迫っていくイメージ。

そんな哲学部では、一見難しそうでないテーマについて深く深く考えていく。

・自分が思う「赤」は隣の人の「赤」と本当に同じか
・「人生」「自由」「正義」とは
・「時間」「宇宙」「幸せ」とは
・魂と肉体の関係性
・自己=アイデンティティなのか
・自然は何からできているか
・世界共通の「美」は存在し得るのか

・理性と主観性の関係性
・世界はなぜこのように存在しているのか
・命に重さはあるのか、本当にどの命も等しいのか

・今、体験しているこの世界、実は存在しないのではないか
・意識と無意識の差はどこか
・ロボットにとっての道徳とは何か
・いかに今の自分の存在を証明するか
・真理は独立した存在なのか、何かルールを持っているのか
・世界規模で最低生活保障を設けることは可能か

・「痛み」は主観か客観か (手をぶつけた時、本当に「痛い」のは脳か指先か)
・日本語の知識が全くない外国人が、マニュアルを見ながら日本人と話をしたとする、これは本当に「会話」と言えるのか

など、非常〜に幅広い勉強をするのが特徴。

ある時はギリシアの古代天文学・占い・埋葬方法を学び、…またある時は人工知能ロボットが心を持てない理由をあらゆる面から討論する。

ビーチにある砂山を見て「砂山だ」と思うのが一般人、「砂1粒では山と言えない、100粒でもだめだ、じゃあ何粒目から山なのか」と考えるのが哲学者…。

【選択教科は3年次以降】
1,2年次は全員が同じ教科を勉強する。

【授業時間と男女比】
・授業は1コマ2時間で、休み時間をとらない場合が多い
・1年次の授業は8割がカタルーニャ語
・2年次からはスペイン語を話す先生も増えてくる
・午前コースと午後コースに一応分かれている (前年度の成績順に希望が通る)
・1つの科目に2,3人の教授がいて選べる
・男女比は「男子4:女子6」くらい
・年齢は開きがあって18歳〜60歳以上がいる (でも1年次は8割が22歳未満)

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【教授】
カリキュラムは一緒だからどの教授を選んでも内容に大差はないが、クラスの言語がスペイン語かカタルーニャ語か分かれる。やはり歴史がある大学なだけあって、名だたる教授が揃っている。全クラス、本当に為になる。

 

【授業】
いつも哲学者の説・著書をベースに、思考を発展させたり考えを言い合ったりする。1年次は基礎をしっかりおさえる。日本でこれまでに習ったことがない人でも、大学入試 (PAUかEBAU) レベルの知識があれば問題なくついていける。文学部のように…めちゃくちゃ本を読む。ラテン語で書かれた本も平気で使う。スペイン人は高校までにラテン語を履修している人が多いため、私たち日本人は自分でそれをどうにかする必要がある。

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あとは、文系なのに数理論理学も習う。これは思考をまとめる際、びっくりするくらい役に立つ。テストは筆記 (1回) だけでなく、レポート提出やプレゼンも1年次からしっかりある。大勢の前で話す力・相手を説得させる話力も鍛えられる。最初のレポート提出は政治哲学で、マキャベロの君主論 (El príncipe de Maquiavelo) を読んでその内容をまとめたり、今までに読んだ彼の本と比較したりするものだった。プレゼンはパワーポイントを作成して50人くらいの前で発表する。

【Avaluació continua: テスト】
一教科につき半期に2度テストがある。開始5分前、配られるのは小さな紙切れの問題用紙とA4の白紙が2,3枚 ⬇︎

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上のは入学して1ヶ月半後に受けた初の「倫理哲学」テスト。書いてある指示は…

下の2つの文章を読み、それぞれの作品を書いた哲学者をはっきりとさせ、比較し、1つの論文を書きなさい。…だけ。

制限時間は、120分。

言い回し、出てくる単語、内容から哲学者を判断し、A4用紙に2枚以上の小論文を書くスタイル。もし本のタイトルと作者を間違えて解釈してしまえばその時点でゼロ点。試験範囲は一応あるけれど、一教科あたり半期で哲学者10人〜20人以上学び、読む本は15〜20冊。とてもじゃないけど絞れる量じゃない。かと言って、難しいわけでもない。日頃からきっちり理解して勉強して読んでおけば余裕。

(問題用紙を回収する教授がほとんどだが、中には家に持って帰ってもっと悩みなさいという教授もいる)

コツは、ポイントとなる単語に線を引いて、まず哲学者を当てる。それからその人が唱えた他の説とこの文章を関連づける。比喩表現が多いので、それは全て何を指しているのか明記する。とにかく速くメモを取る。日本語が先に浮かべば日本語で、スペイン語が先ならスペイン語で走り書き。2つ目の文章は1つ目とどこが比較できるか意識して読み進める。使われている単語の特徴から哲学者を当て、分析。

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「違い・共通点・概念」を箇条書きし、それをベースに小論文を書き始める。メモを取らずにいきなり書き始めると、途中で一貫性がなくなったり、繰り返し同じ表現をしてしまいがち。なんせ120分間に1500〜2000単語書かなければならないから。

【要するに】
哲学は、知らなくても生きていける、仕事に就ける、家族がもてる、でも学んでおいた方が人間らしい人間になれる学問。外の世界だけじゃなく、意識を自分の内面にも向けれる人になる。日本は義務教育期間に「哲学」という答えのない科目を学ぶ機会ないから自己よりも周りとの協調を重んじる国民性が今も続いているのだろう。。。

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