BARCELONANDO :)

1995年香川生まれ岡山育ち。現在ヨーロッパ生活6年目。スペインとイタリアの大学生活・旅行・言語学 (5ヶ国語)・哲学・バルセロナおすすめ情報など、幅広いジャンルの記事を執筆中。2019年6月より、バルセロナにある大学入試専門のアカデミアGUIUのアンバサダーに就任。スペインへの留学・大学進学に興味がある方は、お気軽にご相談ください 😊🇪🇸 barcelonandoo@gmail.com

【ふとした疑問】スペイン語で無発音のHはなぜあるのか

スペイン語では「H」を発音しない。

でも書く。

Hijo (イホ): 息子
Humanidad (ウマニダッ): 人類
Almohada (アルモアーダ): 枕
Hay (アイ): ある、いる
Hasta (アスタ): 〜まで

(Hから始まる単語はなんと2000以上)

なぜだろう?

今日はそんな疑問を解決する記事。

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【なくならないワケ①】歴史があるから〜
実はスペイン語にはアラビア語からきている単語が4000以上存在する。普段使っている単語の起源がアラビア語というのには少し違和感を覚えるが、身近な単語に多い。

(例)
Andalucía: アンダルシア
Aceite: 油
Baño: トイレ
Barrio: 地区、エリア
Alcohol: アルコール
Ojalá: 〜だといいな
Limón: レモン
Zanahoria: 人参
Nácar: 真珠
Noria: 観覧車

"almohada" (アルモアーダ: 枕) はアラビア語の "al-mukhádda" から出来た単語。…この「枕」という単語で思い出したけど、イタリアで翻訳・言語学を学んでいるとたまに、エジプト人の子が、イタリア人よりもスペイン語の単語をわかることがある。その理由は下の比較を見れば一目瞭然。

イタリア語で枕 "cuscino"
アラビア語で枕 "al-mukhádda"
スペイン語で枕 "almohada" 

ラテン語の歴史も深く関係しているのがスペイン語で、先ほども例にあげた H (アチェ) から始まる単語、"Hijo" (イホ: 息子) はもともと Filius という単語からきている。だから昔は「イホ」じゃなくて「フィホ (Fijo)」と発音されていたらしい。

【なくならないワケ②】〜混乱しないため

¡ay! (うわ!) と hay (ある)
asta (ツノ) と hasta (〜まで)
ala (翼) と ¡hala! (ふーっ!)
oh (オゥ!) と o (または)
ola (波) と ¡hola! (こんにちは)
aprehender (捕らえる) と aprender (学ぶ)
¡eh! (間投詞) と he (haberの活用)

これは納得する人が少ない理由。

「ハシある?」

「カミを信じる?」

日本語にも同音異義語がたくさんあるが、会話している上でどっちの単語だろう?って混乱することは滅多にない。スペイン語でも同様。"Nadie confunde estas palabras ni al escribir ni al hablar!" (書くにせよ話すにせよ別に誰も混乱しないでしょ!) ってのがスペイン人の意見。

【無くそうという議論はあったのか】
外国人の私たちでさえ「なんであるんだろう?」と思うのにスペイン人が黙っているはずがない。調べてみると最近では1997年に h を無くせばいいじゃん!って議論が行われたらしい。その声をあげたのは、かの有名なあの人だった…!

Zacatecas (サカテカス) という街で行われた第一回スペイン語国際会議Gabriel García Márquez (ガブリエル・ガルシーア・マルケス) 氏が "simplifiquemos la gramática antes de que la gramática termine por simplificarnos a nosotros." (文法が我々を単純化する前に、私たちが文法をシンプルにしていきましょう。) とディベートを行った。その時の討論の一部が見たい人は次のリンクから!I Congreso Internacional de la Lengua Española. Inauguración. Gabriel García Márquez (スペイン語)

ガルシアマルケスは「百年の孤独」や「コレラの時代の愛」で有名なコロンビアの小説家。

彼の前にも何人もの言語学者・文献学者が同じ提案をしていたが、Hを無くす案が通ることはなかった。(例: ポーランド生まれベネズエラの文献学者 Ángel Rosenblat氏)

【いつからHは発音されなくなった?】
スペイン語の長い歴史の中でHはずっと発音されなかったわけではないということがわかった。フェニキア人 (紀元前2500年頃) は初めて"H"というアルファベットを使用したとされる。そして「H」を今のスペイン語の「J」のように発音した。でも息をはかず、吸いながら「ホッ」と言った。それから、ギリシア人はその発音を少し柔い発音にして採用し、ギリシア語からラテン語へ伝わった。その過程の中で"H"の発音はだんだん弱く…、ほぼ聞こえなくなった。ラテン語からスペイン語になった時、まだその発音は残っていて、息を吸いながら発音されていた。その音は現代の英語のHの発音ととても似ているらしい。

【14世紀以降の変化】
ラテン語から引き継がれた単語のうちFから始まるものがHに置き換えられるようになった。harina (アリーナ: 小麦粉) はもともと farina (ファリーナ) だったし、hacer (アセール: する) は facer (ファセール) であった。その他にも…

・中世までは felecho  → helecho (シダの葉)
・ferir → herir
・furto → hurto
・fumo → humo
・figo → higo 

最後の変化の例 figo → higo は、スペイン文学を勉強中に見かけたことがある。有名な "El Cantar del Mío Cid” (1200年) を読んでる時に、figo って書かれていて調べたら今のhigoだった。 

【2019年はスペイン語の年?】
昨年、2018年の始め Mariano Rajoy (ラホイ首相) は "el 2019 será el año del español global." (2019年はスペイン語が国際言語になる年だ。) と発表した。が、多くの言語学者はその言葉にこう反論する「現在、南米にはスペインよりもはるかに多いスペイン語話者がいるため、スペイン語のバランスがとれていない。大西洋の2つの岸の間には均衡が保たれていなければならない。それがない状況下でスペイン語はグローバル言語になり得るのだろうか。」

 

"Espero que no sea ora de undir la ache. Es ora de que el idioma sea no solamente bonito sino coerente."

「H」がないスペイン語は見栄えが悪いしなんだか気持ちが悪い。私は無くならないで欲しいと思う派。

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